🔊 このページの要約
妊娠を希望される方が不妊治療中のことについて、甲状腺のホルモンバランスは非常に重要です。TSH(甲状腺刺激ホルモン)の値が適正でないと、妊娠しにくくなることがあります。このページでは、妊活中や不妊治療中に知っておきたい甲状腺の検査・治療のポイントを詳しく解説します。
妊娠を希望される方が不妊治療中のことについて、甲状腺のホルモンバランスは非常に重要です。TSH(甲状腺刺激ホルモン)の値が適正でないと、妊娠しにくくなることがあります。このページでは、妊活中や不妊治療中に知っておきたい甲状腺の検査・治療のポイントを詳しく解説します。

🔍 要点まとめ
- 甲状腺機能は妊娠率や胚発育に影響するため、不妊治療中はTSHやFT4の管理が重要です。
- TSHは2.5未満を目指すことが推奨されており、甲状腺機能低下症がある場合は適切な治療が必要です。
- 橋本病やバセドウ病の既往がある方は特に専門的なフォローアップが推奨されます。
📝 不妊治療と甲状腺の関係
不妊治療を受けている方にとって、甲状腺ホルモンのバランスは見過ごせない要素です。甲状腺機能が低下していると、排卵障害、着床率の低下、流産のリスク上昇などが報告されています※1。特にTSH(甲状腺刺激ホルモン)の値は、妊娠率と深く関係しており、妊娠希望の段階でのスクリーニングが望まれます。
TSHが高めと言われたら(妊娠前〜初期)
妊娠前〜初期は、TSHを適正範囲へ早めに整えることが大切です。まずは受診のうえ、TSH・FT4・抗体の再評価を行いましょう。
まず最初に(受診・採血)
- 内科(甲状腺)へ受診
- 採血:TSH、FT4、抗TPO抗体、抗Tg抗体(必要に応じFT3・鉄・フェリチンなど)
フロー(数値・状況別の基本方針)
- TSH ≧ 4.0
→ レボチロキシン(LT4)開始を基本に検討(目標TSH < 2.5)。
→ 4週ごとにTSH/FT4再評価(妊娠成立後も4〜6週ごと)。 - TSH 2.5〜3.9
→ 抗体陽性 または ART(体外受精等)予定あり:LT4開始を検討(共有意思決定)。
→ 抗体陰性・ART予定なし:生活指導+4〜6週で再評価。 - TSH < 2.5
→ 維持+定期確認(妊娠成立後は間隔短縮・用量微調整)。
チェックポイント
- 鉄欠乏・ヨウ素過不足・サプリ併用(マルチビタミンのヨウ素量)を確認
- 服薬タイミング・アドヒアランス(起床時の内服など)を整える
注意:本内容は患者向けの一般的な目安です。実際の治療は妊娠週数、症状、既往、検査結果等を踏まえ、担当医と個別に決定します。
当院でのご相談はお電話で承ります:047-467-5500
🔬 TSH目標値と治療の目安
日本内分泌学会やATA(米国甲状腺学会)によると、妊娠を希望する女性ではTSH 2.5 μIU/mL未満を目標とすることが望ましいとされています※2。TSHが基準値内でも高め(2.5~4.0)の場合は、潜在性甲状腺機能低下症の可能性があり、症状や抗体の有無により治療を検討します。
🧪 甲状腺抗体(TPO抗体・Tg抗体)の意義
不妊治療において、甲状腺自己抗体の存在は重要な指標です。抗体陽性で甲状腺機能が正常でも、将来的な機能低下リスクや着床率の低下に関連するとの報告があります。抗体陽性例ではTSH管理をより厳密に行う必要があります。
❓ よくある質問(FAQ)
Q. 不妊治療中に甲状腺検査は必要ですか?
はい、推奨されます。甲状腺ホルモンは妊娠率に影響を及ぼすため、特にTSHとFT4のチェックは重要です。
Q. TSHが2.8でも治療すべきですか?
妊娠希望や不妊治療中の方では、TSHが2.5を超える場合、抗体の有無や症状により治療を検討します。
Q. 抗TPO抗体が陽性ですが、甲状腺ホルモンは正常です。問題ありますか?
将来的な甲状腺機能低下のリスクがあるため、TSHを低めに保つなど専門的な管理が必要です。
Q. バセドウ病の既往があります。不妊治療に影響しますか?
現在の甲状腺機能と抗体の状態により判断します。専門医での管理が推奨されます。
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👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
妊娠希望の方や不妊治療中の甲状腺管理において、多くの患者さんの診療に携わってきました。地域のかかりつけ医として丁寧なサポートを心がけています。
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
妊娠希望の方や不妊治療中の甲状腺管理において、多くの患者さんの診療に携わってきました。地域のかかりつけ医として丁寧なサポートを心がけています。
参考文献
- Glinoer D, et al. The importance of thyroid function in fertility and pregnancy. Endocrine Reviews. 2002.
- 日本内分泌学会 妊娠と甲状腺機能に関するガイドライン 2024.