顔面に走る痛みには、顔面神経痛と三叉神経痛の二つが存在する。両者は名前が似ているが、痛みの性質も原因も治療方針も異なる。当院を受診される患者さまで、最初に歯科を受診し、「虫歯ではない」と言われて紹介される方が少なくない。顔の痛みがあっても、どの科を受診すればよいか戸惑われる方が多いのは当然だ。
この記事では、顔面神経痛と三叉神経痛の違いを、症状・原因・治療法の三軸で解説する。最終的には専門医の診察が必要になるが、自宅で確認できる見分け方のポイントもお伝えする。

顔面神経痛とは
顔面神経痛は、第七脳神経(顔面神経)の障害による疼痛である。耳の奥や側頭部から顔面にかけて、電気が走るような痛みや違和感が特徴だ。痛みだけでなく、顔の動きに異常が出ることもある。
当院で顔面神経痛と診断される方の多くは、帯状疱疹の発疹が出た後に痛みが残るケースである。帯状疱疹ウイルスが顔面神経を冒し、神経炎を起こすためだ。発疹が出る前に痛みが始まることもあり、この場合は診断が遅れがちになる。
主な症状は以下の通りだ。
- 耳の奥や耳の周囲の痛み
- 顔面のしびれ感や違和感
- 味覚の変化(舌の前3分の2)
- 涙や唾液の分泌異常
- 顔の片側だけが動きにくくなる(顔面神経麻痺)
治療は、帯状疱疹によるものでは抗ウイルス薬と抗炎症薬(ステロイド)を組み合わせる。早期に治療を開始することで、後遺症(帯状疱疹後神経痛)のリスクを下げられる。当院では発症から72時間以内の方には即座に投薬を開始し、必要に応じて神経ブロックも実施する。
三叉神経痛とは
三叉神経痛は、第五脳神経(三叉神経)の異常による激痛である。顔の片側に、雷が落ちたような、針で刺すような鋭い痛みが何秒から数分間続くのが特徴だ。
三叉神経は眼窩上神経・上顎神経・下顎神経の三枝に分かれており、それぞれ額・頬・顎に分布している。どの枝が障害されているかで、痛みの部位が異なる。当院で三叉神経痛と診断される方の多くは、頬や顎の痛みを訴える。
痛みの特徴を具体例でお伝えすると、頬を触るだけで激痛が走るため、洗顔や剃髪が困難になる。食事をする際に顎が痛み出す。歯磨き中に電気ショックのような痛みが起きる。話している途中で突然痛みが襲ってくる。
原因として最も多いのは、血管が三叉神経を圧迫している場合(血管圧迫)である。脳腫瘍や多発性硬化症などが原因となることもあるため、MRI検査で確実に除外する必要がある。当院ではMRI検査を依頼し、血管や脳の状態を確認して原因を特定する。
治療は、抗てんかん薬(カルバマゼピンなど)による薬物療法が第一選択となる。薬物療法で効果が不十分な場合、脳神経外科での微血管減圧術(MVD)やガンマナイフ治療が検討される。当院では薬物療法を開始し、効き目や副作用を見ながら調整する。難治例は脳神経外科と連携して治療方針を決定する。
顔面神経痛と三叉神経痛の違い
二つの病気を比較すると以下の通りだ。
| 項目 | 顔面神経痛 | 三叉神経痛 |
|---|---|---|
| 障害する神経 | 第七脳神経(顔面神経) | 第五脳神経(三叉神経) |
| 痛みの部位 | 耳周囲・側頭部・顔全体 | 顔の片側(額・頬・顎のいずれか) |
| 痛みの性質 | 鈍痛・違和感・電気走る感じ | 激しい痛み・針で刺すような鋭痛 |
| 誘発因子 | 特定なし・常時痛むことが多い | 触れる・食事・表情筋の動き |
| 代表的な原因 | 帯状疱疹・中耳炎 | 血管圧迫・腫瘍 |
| 治療の核心 | 抗ウイルス治療・神経ブロック | 薬物療法・微血管減圧術 |
重要な違いは、三叉神経痛は触れるだけで痛みが誘発される点だ。一方、顔面神経痛は帯状疱疹などの感染症に続発することが多く、耳の症状を伴うことが特徴である。
見分け方のポイント
診察室で患者さんにお聞きする決め手となる質問は二つある。
一つ目は「触れると痛みますか」という質問だ。三叉神経痛の場合、頬に軽く触れただけで激痛が走る。顔面神経痛では、このような触覚による誘発はほとんどない。
二つ目は「耳に違和感はありますか」という質問だ。顔面神経痛は耳の周囲の痛みを伴い、帯状疱疹の場合は耳の中や耳の後ろに水疱ができることがある。三叉神経痛では耳の症状は基本的に出ない。
また、痛みの持続時間も参考になる。三叉神経痛は数秒から数分の発作的な痛みだが、顔面神経痛は持続性の痛みや違和感が多い。
セルフチェック:あなたの顔の痛みはどっち?
以下の項目でチェックしてみましょう。該当する数が多い方が、その病気の可能性が高い目安になります。※確定診断ではありません。受診の参考にしてください。
【チェックA】三叉神経痛の可能性
- □ 顔の片側だけに、電気が走るような激痛が突然起こる
- □ 痛みは数秒〜数分で治まるが、繰り返す
- □ 頬を触る・洗顔・ひげ剃り・歯磨き・食事で痛みが出る
- □ 歯科で「虫歯ではなさそう」と言われた
- □ 痛くないときはまったく普通に過ごせる
【チェックB】顔面神経痛の可能性
- □ 耳の奥や耳の周囲がずっと痛い・違和感がある
- □ 痛みは持続的で、電気が走る感じが続くこともある
- □ 帯状疱疹(みずぼうそう)にかかった後に痛みが出た
- □ 耳の中や耳の後ろに水ぶくれ(発疹)ができたことがある
- □ 顔の動きが悪い(片方のまぶたが閉じにくい、口がゆがむ)
チェック結果の目安
- チェックAが3つ以上該当 → 三叉神経痛の可能性が高いです。神経内科を受診しましょう。
- チェックBが3つ以上該当 → 顔面神経痛の可能性が高いです。発症から72時間以内が特に重要です。早めに受診してください。
- 両方とも該当する項目が少ない → 他の原因(歯性疾患・副鼻腔炎・顎関節症など)も考えられます。一般内科・歯科で相談を。
治療法の違い
顔面神経痛の治療は、原因に応じて抗ウイルス薬や抗炎症薬・ステロイド薬を使用する。帯状疱疹によるものは72時間以内の治療開始が重要で、当院ではその場合即座に投薬を開始する。神経ブロック療法も有効で、早期に行うことで後遺症リスクを下げられる。
三叉神経痛の治療は、まず抗てんかん薬(カルバマゼピンなど)による薬物療法が第一選択だ。薬物療法で効果が不十分な場合、脳神経外科での微血管減圧術(MVD)やガンマナイフ治療が検討される。当院では薬物療法を開始し、効き目や副作用を見ながら調整し、難治例は脳神経外科と連携して治療方針を決定する。
受診の目安
顔の痛みが続く場合、以下の症状があれば早めの受診をおすすめする。
- 顔の片側だけに激痛が走る
- 洗顔や食事で痛みが誘発される
- 耳の周囲の痛みとともに顔の動きが鈍くなってきた
- 歯科治療を受けても痛みが取れない
特に三叉神経痛は自然に治ることが少なく、放置すると痛みが強くなったり薬が効きにくくなったりする。早期に適切な治療を開始することで、日常生活の質を大きく改善できる。
❓ よくある質問
顔面神経痛と三叉神経痛はどう違うのですか?
どちらの病気かはどう判断しますか?
自然に治りますか?
しもやま内科ではどう対応しますか?
受診時に持参すべきものはありますか?
最終更新日:2026-06-01
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。