手のしびれは整形外科だけでなく、糖尿病や甲状腺疾患が背景となる場合があります。まずは内科での評価をご検討ください。
「手のしびれ、これって手の病気?」
そう思って整形外科の受診を考える方は少なくありません。
でもちょっと待ってください。
手のしびれや「手根管症候群」の背景に、糖尿病や甲状腺の病気が隠れていることがあります。
✅ 要点まとめ
- 手根管症候群は整形外科だけでなく、内科疾患(糖尿病・甲状腺疾患)とも関連。
- 糖尿病では末梢神経障害や浮腫により発症リスクが上昇。
- 甲状腺機能低下症でもむくみが原因で手根管症候群が生じやすい。
- しもやま内科では内科的背景を含めた評価と治療方針を提案。

受診の目安・簡易セルフチェック
次の項目に当てはまるものにチェックしてください(はい=✔)
- 夜間や明け方、しびれで目が覚めることがある(週2回以上が2週間以上続く)。
- 親指〜中指、あるいは薬指の親指側にしびれが集中する(正中神経の領域)。
- 手を軽く振るとしびれが楽になる(Flick sign)。
- 薬指の親指側と小指側でしびれ方が違うと感じる(Ring finger splitting sign)。
- 細かい作業がしづらい/物を落としやすい(巧緻運動の低下、握力低下)。
- 糖尿病や甲状腺の病気(特に甲状腺機能低下症)の既往がある、または治療中。
- 妊娠中・産後、更年期、透析中、手の使い過ぎ(PC作業・家事・工具・楽器など)がある。
- 首の痛みや肩〜腕への強い放散痛が同時にある(頚椎の影響の可能性も)。
判定の目安
- ✔が2〜3個以上:内科での評価をおすすめします(背景疾患の有無を確認)。
- ✔が4個以上:早めの受診を推奨します(手根管症候群の可能性が高め)。
※このチェックはスクリーニング(目安)です。確定診断ではありません。症状が強い/進行している場合は早めにご相談ください。
受診前にメモいただくとスムーズです
- 症状の出る時間帯(夜間・明け方・日中の作業中など)、持続時間、楽になる動作。
- 左右どちらの手か、どの指に強いか(分布)。
- 既往歴:糖尿病(直近のHbA1c)、甲状腺疾患(TSH/FT4の結果があれば)。
- 日常の手の使用状況(キーボード、家事、育児、工具・楽器など)。
手根管症候群と内科疾患の関係
手根管症候群(Carpal Tunnel Syndrome)は、手首の神経が圧迫されて起こる病気です。
典型的には「夜間や明け方の手のしびれ」「細かいものがつまみにくい」といった症状で気づかれます。
整形外科での手術やリハビリが注目されますが、実は内科的な背景疾患が原因で起こるケースも多くあります。
糖尿病が関係する場合
糖尿病患者さんでは、慢性的な高血糖による末梢神経障害や組織の浮腫が原因で、手根管症候群が発症しやすくなります。
特に長期罹患例やコントロール不良の方では注意が必要です。
[1] Palumbo CF et al. Diabetes Care. 2000;23(4):562-567.
甲状腺疾患が関係する場合
甲状腺機能低下症では、全身のむくみ(粘液水腫)が手根管にも及び、正中神経を圧迫して症状を引き起こします。
甲状腺治療を行うことで改善するケースもあります。
[2] Atkins D. et al. Lancet. 1985;1(8431):99-101.
「手のしびれ=整形外科」ではないことも
もちろん、整形外科での診断・治療が必要な場合もありますが、
糖尿病や甲状腺疾患など全身疾患の一部症状としての手根管症候群もあるため、まずは内科での評価が安心です。
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よくあるご質問
- 手のしびれは必ず整形外科へ行くべきですか?
- 手根管症候群は整形外科での評価も重要ですが、糖尿病や甲状腺疾患など内科疾患が背景で起こることがあります。全身疾患の可能性を考える場合は、まず内科での評価も有用です。
- 糖尿病と手根管症候群にはどんな関係がありますか?
- 慢性的な高血糖により末梢神経障害や組織浮腫が起こり、正中神経の圧迫リスクが高まります。糖尿病罹病期間が長い方やコントロール不良の方では発症率が上がると報告されています。
- 甲状腺機能低下症でも手根管症候群になりますか?
- 全身の粘液水腫により手根管内圧が上がり、正中神経を圧迫してしびれを生じることがあります。適切な甲状腺治療で改善するケースもあります。
- 受診の目安は?
- 夜間や明け方のしびれ、親指〜薬指のしびれ、手を振ると楽になる(Flick sign)などがあれば受診をおすすめします。
- しもやま内科ではどのように対応しますか?
- 問診・診察に加え、糖尿病や甲状腺疾患などの内科的背景の有無を確認します。必要に応じて専門医療機関と連携し、検査・治療につなげます。
📞 ご相談ください
しもやま内科では、糖尿病・甲状腺疾患に精通した内科医が、手根管症候群の背景にある全身疾患も含めて診療を行います。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
- Palumbo CF, Szabo RM, Olmsted SL. The effects of diabetes mellitus on the results of carpal tunnel release. Diabetes Care. 2000;23(4):562–567.
- Atkins D, et al. Carpal tunnel syndrome in hypothyroidism: clinical and electrophysiological improvement with thyroid replacement therapy. Lancet. 1985;1(8431):99–101.
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。