腹部片頭痛
小児に多いとされる腹部片頭痛だが、実は年齢の規定はなく、成人にも見られることがある。各種検査で器質的疾患が否定され機能性の腹痛を考えた場合、過敏性腸症候群・機能性ディスペプシア・周期性嘔吐症・急性間欠性ポルフィリン症・腹部てんかんなどに加えて腹部片頭痛も考慮する必要がある。
腹部片頭痛の特徴
1~72時間持続する発作性の痛みを腹部正中部に繰り返す原因不明の疾患であり、発作間欠期には無症状である。腹痛は日常生活を妨げるほどの痛みであり、血管運動症状、悪心、嘔吐を伴う。局在性が乏しく生活に支障が出るほどの痛みがある一方、2~72時間程度で自然頓挫する場合、より腹部片頭痛の可能性が高くなる。
機序
三叉神経血管系、脳幹部の下行性抑制系および各種神経系ペプチドが重要な役割を果たしていると考えられている。特にセロトニンおよびセロトニン受容体が片頭痛発作の痛みに密接に関与している可能性が高い。
治療
トリプタン系薬剤が有効であると考えられている。1)
トビラマート(抗てんかん薬)で予防されたという報告が複数ある。2)3)
ピゾチフェン(抗セロトニン薬)での予防報告もある。4)
1) Journal of Japan Society of Pain Clinicians Vol 23 No1,2016.
2) Ann pharmacother 2013; 47: e27.
3) Headache 2013; 53:984-93.
4) Eur J Neurol 2006; 13: 85-8.
✅ よくある質問(FAQ)
- 腹部片頭痛とはどのような病気ですか?
- 腹部片頭痛は、頭痛の代わりに腹痛が主な症状として現れる特殊な片頭痛の一種で、主に小児に多いですが、大人にも起こることがあります。
- どんな症状が出ますか?
- 突然の強い腹痛、吐き気や嘔吐、顔面蒼白などの症状が見られ、発作的に数時間続くことがあります。発作のないときは元気なことが特徴です。
- 大人でも腹部片頭痛になりますか?
- はい。稀ですが大人でも腹部片頭痛が起こることがあります。特に子どもの頃に片頭痛があった方に見られることがあります。
- 腹部片頭痛は命に関わりますか?
- 腹部片頭痛自体は命に関わる病気ではありませんが、他の重大な疾患との鑑別が大切です。繰り返す腹痛がある場合は医療機関を受診しましょう。
- 検査で異常が出ないのにお腹が痛いのですが?
- 腹部片頭痛では、血液検査や画像検査で異常が出ないことが多く、診断は症状の経過や病歴をもとに行われます。
- どんな人がなりやすいですか?
- 片頭痛の家族歴がある方や、過去に片頭痛の経験がある方がなりやすいとされています。
- 治療法はありますか?
- 症状が出ているときは鎮痛薬や制吐薬で対処し、再発予防のために片頭痛の予防薬を使用することもあります。生活習慣の改善も効果的です。
- 再発しやすいですか?
- 個人差がありますが、周期的に繰り返すことが多いです。発作の間隔や強さを記録しておくことが役立ちます。
- 子どもの腹部片頭痛は成長で治りますか?
- 多くの子どもは思春期以降に腹部片頭痛が軽くなるか、通常の片頭痛に移行する傾向があります。
- しもやま内科では腹部片頭痛の診療は可能ですか?
- はい。当院では腹部片頭痛の診断や、他疾患との鑑別、必要に応じた治療や専門医への紹介を行っています。
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。