腹部片頭痛は、小児に多い一方で大人にも起こり得る機能性の腹痛です。検査で異常が乏しくても、繰り返す強い腹痛・吐き気があれば専門的評価が必要です。症状と治療の考え方を専門医がやさしく解説します(ご相談は 047-467-5500)。
腹部片頭痛とは?
腹部片頭痛は、頭痛の代わりに腹痛が主症状として現れる片頭痛スペクトラムの一型です。小児に多いとされますが、年齢の規定はなく成人にも起こり得ます。各種検査で器質的疾患が否定され、機能性の腹痛を考えるときに鑑別に挙げます。
腹部片頭痛の特徴(患者さん向け要約)
- 発作性の強い腹痛が1〜72時間程度つづき、間欠期は元気である
- 部位は腹部正中付近のことが多く、悪心・嘔吐・顔面蒼白などを伴い日常生活に支障が出る
- 2〜72時間で自然に軽快・消失することがあり、これも診断のヒントになる
どんな検査・病気と見分ける?(鑑別)
器質的疾患がないかを丁寧に除外したうえで、機能性腹痛の枠組みで評価します。
例:過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア、周期性嘔吐症、(まれに)急性間欠性ポルフィリン症、腹部てんかん など
起こる仕組み(イメージ)
三叉神経血管系や脳幹の下行性抑制系、神経ペプチド(とくにセロトニンと受容体)の関与が示唆されています。片頭痛のメカニズムと共通する部分が多いと考えられています。
治療(当院の基本方針)
急性期(発作時)
- 休息・こまめな水分補給、光・音など刺激の軽減
- 症状に応じて鎮痛薬・制吐薬を使用
- 片頭痛関連薬(トリプタン系など)を検討する場合があります
再発予防(間欠期)
- 生活リズムの調整(睡眠・朝食・ストレス対策・運動習慣)
- 再発が頻回・重症の場合は予防薬(例:トピラマート/抗セロトニン薬など)を検討
- 発作日誌で誘因・周期・強度を可視化し、薬の効き方を評価
すぐ受診をおすすめするサイン
- 持続的な高熱・血便・体重減少がある
- 夜間眠れないほどの痛み、持続的な局在痛(同じ場所のみが続く)
- 反復する激しい嘔吐で水分摂取ができない/ぐったりしている
- 新しく出現した神経症状(脱力・けいれん・意識障害など)
腹部片頭痛が疑われる場合でも、これらの症状があるときは器質的疾患を優先して評価します。
✅ よくある質問(FAQ)
- 腹部片頭痛とはどのような病気ですか?
- 頭痛の代わりに腹痛を主症状とする片頭痛スペクトラムの一型です。小児に多い一方で大人にも起こり得ます。
- どんな症状が出ますか?
- 突然の強い腹痛、吐き気や嘔吐、顔面蒼白など。発作は数時間〜数十時間持続し、間欠期は元気であることが特徴です。
- 大人でも腹部片頭痛になりますか?
- はい。頻度は高くありませんが、成人にも生じます。子どもの頃の片頭痛歴・家族歴が手がかりになることがあります。
- 命に関わりますか?
- 腹部片頭痛そのものは命に関わる病気ではありませんが、他の疾患との鑑別が大切です。気になる症状が続く場合は医療機関へ。
- 検査で異常が出ないのにお腹が痛いのですが?
- 腹部片頭痛では血液検査や画像で異常が出ないことが多く、症状経過や病歴から総合的に診断します。
- 治療法はありますか?
- 急性期は鎮痛薬・制吐薬、場合により片頭痛薬(トリプタン等)。再発予防として生活調整や予防薬を検討します。
- 再発しやすいですか?
- 個人差はありますが、周期的に繰り返すことがあります。発作日誌で誘因や周期を把握すると治療に役立ちます。
- しもやま内科で診療可能ですか?
- はい。腹痛の鑑別評価、治療方針の相談、必要時は専門診療科と連携します(まずはお電話でご相談ください)。
参考(主要報告)
- Journal of Japan Society of Pain Clinicians. 2016;23(1).
- Ann Pharmacother. 2013;47:e27.
- Headache. 2013;53:984–993.
- Eur J Neurol. 2006;13:85–88.
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患を中心に、地域密着型の総合内科診療を行っています。