スタチン以外でコレステロールを下げる薬 ニコチン酸製剤という選択肢
コレステロールを下げる薬として、まず使われることが多いのはスタチンというタイプの薬です。一方で、筋肉痛や肝機能障害などの副作用が出てしまい、スタチンを続けられない方も少なくありません。そのようなときに検討される選択肢の一つが「ニコチン酸製剤」です。ここでは、スタチン以外のコレステロール薬の中でも、ニコチン酸製剤を中心に、効果や副作用、どんな方に向いているのかをわかりやすく説明します。
ニコチン酸製剤とは何か
ニコチン酸はビタミンB群の一種で、古くから脂質異常症の治療に用いられてきました。現在、日本ではニコチン酸そのものではなく、ニコチン酸誘導体と呼ばれるお薬が使われています。
代表的なものとして、ニセリトロール、ニコモール、トコフェロールニコチン酸エステルなどがあり、商品名としてはユベラNなどが知られています。
これらの薬は、肝臓で作られる VLDL という脂質の産生を抑えることで、血液中の中性脂肪やコレステロールを下げる働きを持っています。スタチンとは作用する場所や仕組みが異なるため、スタチンが使えない場合の「別ルートの治療」として利用されます。
どのような脂質異常症に使われるか
ニコチン酸製剤は、特に次のようなタイプの脂質異常症に用いられます。
- LDLコレステロールと中性脂肪の両方が高いタイプ
- スタチンを使っても LDLコレステロールが目標値まで下がりきらない場合の追加治療
- Lp(a) という特殊な脂質が高い場合
コレステロールを下げる力そのものは、スタチンほど強くはありません。しかし、ニコチン酸製剤には、動脈硬化のリスク因子とされる Lp(a) を下げるという、他の薬では得られにくい特徴があります。そのため、血液検査で Lp(a) が高いと分かった方では、選択肢として検討されることがあります。
また、中性脂肪を下げたり、善玉コレステロール(HDL)を増やしたりする作用もあるため、中性脂肪の高値を伴う脂質異常症で使われることもあります。
スタチンとの併用について
スタチンをある程度使えるものの、単独では目標値に届かないケースでは、スタチンにニコチン酸製剤を追加するという治療が行われることがあります。スタチンで LDLコレステロールをしっかり下げつつ、ニコチン酸で中性脂肪や Lp(a)、HDLコレステロールを改善することで、より広い範囲で脂質を整えることができるためです。
ただし、薬を増やすと副作用のリスクも増えるため、併用の可否や用量の調整は、主治医とよく相談しながら慎重に決める必要があります。
ニコチン酸製剤の主な副作用
ニコチン酸製剤には、いくつか特有の副作用があります。主なものを挙げます。
顔面紅潮(ほてり)
もっともよくみられる副作用が、顔のほてりや赤みです。ニコチン酸が末梢の血管を広げるために起こるもので、服用後しばらくして顔や上半身が熱くなる、赤くなるといった症状が出ることがあります。多くは一過性で、時間がたつと自然におさまります。
通常は、少量から始めて徐々に増量していくことで、紅潮の程度を軽くすることができます。症状が強い場合には、アスピリンを併用して血管拡張による反応を抑える方法がとられることもあります。
耐糖能の悪化
ニコチン酸製剤は、血糖値をやや上げやすいという性質があります。糖尿病や境界型の耐糖能異常がある方では、服用後に血糖コントロールが悪化する可能性があるため、慎重なフォローが必要です。場合によっては、他の薬を優先したり、用量を控えめにしたりすることもあります。
消化性潰瘍の悪化
過去に胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療歴がある方では、ニコチン酸製剤によって症状が悪化するおそれがあります。潰瘍の既往がある場合は、事前に必ず医師に相談し、慎重に使用するか、別の種類の薬を検討することになります。
尿酸値の上昇
ニコチン酸製剤は、尿酸値を上げる方向に働くことがあります。もともと尿酸値が高い方や痛風の既往がある方では、痛風発作を起こすリスクが上がるため注意が必要です。その場合、尿酸値を定期的にチェックしながら使うか、別の治療法を検討します。
その他の注意点
まれに肝機能障害などがみられることもあるため、定期的な血液検査で肝機能や脂質の変化を確認しながら治療を進めます。自己判断で薬を中断・再開すると、副作用の評価や効果判定が難しくなりますので、気になる症状があれば早めに医師へ相談してください。
スタチン以外の薬を考えるときのポイント
スタチン以外にも、エゼチミブ、フィブラート系薬、PCSK9阻害薬、胆汁酸吸着薬など、いくつかのタイプのコレステロール薬があります。それぞれ、下げやすい脂質の種類や、副作用の出方、注射か飲み薬かなど、特徴が大きく異なります。
「スタチンは怖いから、とにかく他の薬を」という考えだけで薬を選ぶと、本来必要な治療が十分に行えないことがあります。大切なのは、
- 現在のコレステロールや中性脂肪、Lp(a) などの値
- 糖尿病や高血圧など、ほかの病気の有無
- すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こしているかどうか
- これまで使った薬で、副作用が出たかどうか
といった情報を整理したうえで、ご自分にとってのメリットとデメリットを一緒に考えることです。
当院での考え方
当院では、スタチンが使えない、あるいは十分な効果が得られない方に対して、ニコチン酸製剤を含めた「スタチン以外の薬」の選択肢を検討します。血液検査や全身状態を確認し、他の薬との飲み合わせや、糖尿病・高尿酸血症・潰瘍歴などのリスクを十分に評価したうえで、必要と判断される場合に処方します。
薬だけでなく、食事や運動、体重管理などの生活習慣の見直しも、コレステロールを下げるうえで非常に重要です。薬の種類を変えるかどうかにかかわらず、生活習慣の改善とあわせて治療を続けていくことが、将来の心筋梗塞や脳梗塞の予防につながります。
まとめ
ニコチン酸製剤は、スタチン以外のコレステロール薬として、特に中性脂肪や Lp(a) の改善に特徴を持つ薬です。一方で、顔のほてり、血糖値や尿酸値の上昇、消化性潰瘍の悪化など、注意すべき点も少なくありません。「スタチン以外の薬が知りたい」「今の薬で副作用が心配」という場合は、自己判断で薬をやめたり変えたりする前に、まずはかかりつけ医にご相談ください。あなたの検査結果や持病、これまでの経過を踏まえたうえで、より安全で適切な治療方法を一緒に考えていきます。