糖尿病シックデイ対処法|風邪・発熱時のインスリン調整と受診タイミング|しもやま内科(船橋市)

「風邪を引いたら、糖尿病の薬はどうすればいいの?」「食欲がないけど、インスリンは打ったほうがいい?」——シックデイ(体調不良時の対応)は、糖尿病治療の中で最も戸惑う場面のひとつです。私のところに来る患者さんからも毎年のように質問があります。今回は、シックデイの基本ルールをおさらいします。

シックデイってどんな状態?

「シックデイ」とは、風邪・インフルエンザ・胃腸炎・発熱・下痢・嘔吐など、体調が悪いときのことを指します。糖尿病の方が体調を崩すと、普段よりも血糖値が乱高下しやすくなります。

なぜかというと、体が感染症と闘うためにストレスホルモン(コルチゾールやアドレナリン)が分泌され、それが血糖値を上げるからです。一方で、食欲がなくて食事が摂れないと低血糖のリスクもあります。つまり、「上がるリスク」と「下がるリスク」の両方に注意が必要——これがシックデイ対応の難しいところです。

糖尿病患者さんがシックデイになると、血糖コントロールが大きく乱れるだけでなく、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)や高血糖高浸透圧状態(HHS)といった、命に関わる緊急事態に進行するリスクがあります。特にインスリン治療中の方や高齢の方は、そのリスクが高くなるため、事前の知識と準備が欠かせません。

シックデイの3つの基本ルール

ルール1:絶対に自己判断で薬やインスリンを中止しない

「食べてないから薬はやめておこう」——これが一番危険です。体調不良時はむしろ血糖値が上がる傾向にあるので、自己判断で中止すると高血糖やケトアシドーシスのリスクがあります。必ず医師の指示に従ってください。

特に基礎インスリン(ランタス・トレシーバ・レベミルなど)は、食事が取れていなくても絶対に中止してはいけません。体内で常に必要なインスリンを供給しているためです。中止すると数時間〜半日でケトアシドーシスに陥る危険があります。

ルール2:こまめに水分を摂る

発熱や下痢で脱水になりやすいです。スポーツドリンクは糖分が多いので、経口補水液(OS-1など)か、水か麦茶を少しずつこまめに摂りましょう。どうしても食欲がない場合でも、水分だけは摂ってください。

具体的な目安としては、1時間にコップ1杯(150〜200ml)、1日で1.5〜2リットルを目標にします。嘔吐がある場合は一度に大量に飲まず、スプーン1杯(10〜15ml)ずつ5分おきに口にする方法が効果的です。

ルール3:血糖値をいつもより頻繁に測る

普段1日2回の方でも、シックデイは4〜6時間ごとに測るのが理想です。可能であれば2〜4時間ごとの測定をおすすめします。低血糖と高血糖、どちらに傾いているかの把握が治療の判断に欠かせません。

測定値は必ずノートやアプリに記録し、医療機関に連絡する際に伝えられるようにしておいてください。また、ケトン体測定用の試験紙を持っている方は、尿ケトン体も同時にチェックするとより安全です。

インスリン調整の詳細|増やす?減らす?

シックデイにおけるインスリン調整の原則は、「高血糖なら増やす、低血糖なら減らす」です。しかし実際には両方のリスクが行ったり来たりするため、画一的な対応はできません。以下に、インスリンの種類ごとの考え方をまとめます。

基礎インスリン(持続型)

ランタス・トレシーバ・レベミルなど、1日1〜2回注射するタイプのインスリンです。食事の有無にかかわらず継続します。むしろ、高血糖傾向のシックデイでは10〜20%の増量が必要になることもあります。中止は原則として禁忌です。

追加インスリン(超速効型・速効型)

ヒューマログ・ノボラピッド・アピドラなど、食事の前に打つインスリンです。食事が摂れない場合は通常はスキップしますが、血糖値が250mg/dL以上ある場合は、補正として少量の追加インスリンを打つことがあります(医師の指示のもとで)。

混合型インスリン

ノボラップ30ミックス・ヒューマログミックスなど、基礎と追加が一体になったタイプです。食事量が変わると調整が難しいため、できれば主治医と事前に「シックデイ用の対応プラン」を決めておくことをおすすめします。

⚠️ インスリンポンプ・CGM(持続血糖測定器)を使用中の方

ポンプの設定変更やセンサーの校正は、あらかじめ主治医と決めた手順に従ってください。シックデイ中はポンプのカニューレが外れやすいため、ケトン体測定と併せて状態を確認しましょう。

内服薬は継続?休薬?——薬剤ごとの判断基準

経口血糖降下薬は、薬の種類によってシックデイ時の対応が異なります。以下の表を参考にしてください。

メトホルミン

基本的には継続します。ただし、強い下痢や嘔吐による脱水がある場合、または腎機能が低下している場合は乳酸アシドーシスのリスクがあるため、医師の判断で一時休薬することもあります。

SU薬(グリメピリド・グリクラジドなど)

食事が全く摂れない場合は低血糖リスクが高まるため、減量または休薬を検討します。血糖値を頻繁に測定しながら判断してください。

SGLT2阻害薬(フォシーガ・ジャディアンス・カナグルなど)

シックデイの際はケトアシドーシスのリスクが高まることが知られています。体調不良時は医師の指示がない限り休薬するのが原則です。特に発熱や下痢のある方は、確実に休薬しましょう。

DPP-4阻害薬(ジャヌビア・グラクティブ・エクアなど)

比較的安全であり、低血糖リスクも低いため、多くの場合は継続可能です。ただし、食事が全く摂れない状況では医師に相談してください。

チアゾリジン薬(アクトスなど)

低血糖リスクが低く、継続しても問題ないケースが多いです。ただし、浮腫がある場合は注意が必要です。

水分補給の具体量と種類

シックデイでは脱水防止が最も重要な治療の一つです。具体的な補給方法をまとめます。

推奨量

  • 軽度の体調不良(微熱・鼻水程度):1日1.5リットル以上
  • 中度(38度以上の発熱・軽い下痢):1日2リットル以上
  • 重度(嘔吐・強い下痢):医療機関への受診が必要。経口補水液を少量ずつ

適切な飲み物

  • 経口補水液(OS-1・アクアソリタなど):最も推奨。糖質と電解質のバランスが適切
  • 麦茶・水:糖分がないため飲みやすい
  • スポーツドリンク:糖質が多い(100mlあたり6〜8g)ため、血糖値が高い場合は避ける。低血糖傾向の場合は少量なら可
  • 野菜スープ・味噌汁:塩分と水分を同時に補給でき、食欲がない時にも摂りやすい

注意点

嘔吐がある場合、一度に大量に飲むとさらに嘔吐を誘発します。スプーン1杯(10〜15ml)を5分おきに口にする「スプーン飲み」を実践してください。また、冷たすぎる飲み物は胃に負担がかかるため、常温か少し温かいくらいが適切です。

受診すべきタイミングの明確な基準

以下の項目に一つでも当てはまる場合は、すぐに医療機関に連絡してください。放置すると重篤な状態に進行する可能性があります。

すぐに電話すべき目安(Aグループ)

  • 血糖値が250mg/dL以上が24時間続く
  • 尿ケトン体が陽性(ケトン体試験紙がある場合)
  • 38度以上の発熱が2日以上続く
  • 嘔吐や下痢が6時間以上続いて水分が摂れない
  • 普段より血糖値の変動が激しい(測定のたびに100mg/dL以上違う)

救急受診が必要な目安(Bグループ)

  • 意識がもうろうとしてきた、呼びかけに反応が鈍い
  • 息から甘いアセトン臭がする(ケトアシドーシスのサイン)
  • 呼吸が速く・深くなっている(クスマウル呼吸)
  • 自分で水分が摂れない状態が続く
  • 血糖値が測れないほど高く(測定器でHi表示)、かつケトン体が強い陽性

電話相談と救急受診の使い分け

Aグループの症状がある場合は、まずかかりつけ医に電話で相談してください。診療時間内であればすぐに対応し、時間外であれば対応方法を指示します。

Bグループの症状がある場合は、電話で相談している時間的余裕がない可能性があります。119番へご連絡いただくか、救急医療機関を受診してください。

夜間・休日に症状が出たら

糖尿病のシックデイは夜間や休日に悪化することが少なくありません。以下の備えを普段からしておきましょう。

  • かかりつけ医の時間外連絡先を手帳やスマホに保存しておく
  • 最寄りの救急外来(二次救急医療機関)を事前に調べておく
  • 家族や同居者に、自分の糖尿病治療薬とシックデイ対応を共有しておく

家族向けの注意点

シックデイは患者さん本人が判断できない状態になることもあります。家族の方は以下の点を覚えておいてください。

  • 低血糖の症状を覚えておく:冷や汗・動悸・手の震え・異常な空腹感・意識障害・異常行動。高血糖と症状が似ていることもあるため、血糖測定器の使い方も確認しておくとよい。
  • 病院へ連絡できる準備:かかりつけ医の電話番号(047-467-5500)をスマホに登録しておく。本人が話せない場合に代わりに状況を伝えられるように、薬の名前や服用量を把握しておく。
  • グルカゴン注射:重症低血糖用のグルカゴン注射が処方されている場合、その使い方を家族も一度は説明を受けておく。
  • 救急隊への伝達:119番する際は「糖尿病の患者でシックデイの状態」「血糖値(わかれば)」「意識レベル」「服用中の薬」を伝える。

❗ シックデイで迷ったら——まず電話、すぐ行動

☎ 診療時間内にすぐ連絡

月火木金 9:00-12:00 / 14:45-17:30
土 9:00-12:00

047-467-5500

🌙 夜間・休日の対応

まずは047-467-5500へ
応答メッセージで対応方法を案内します
症状が重い場合は救急外来へ

⚠️ 119番(救急車)

意識障害・アセトン臭・呼吸異常
自分で水分が摂れない
→ ためらわず119番

❓ よくある質問

シックデイとは何ですか?
シックデイとは、風邪・インフルエンザ・発熱・嘔吐・下痢など、体調が悪い日のことを指します。糖尿病の方は、シックデイに血糖値が乱高下しやすく、適切な対応をしないとケトアシドーシスや低血糖などの緊急事態に陥るリスクがあります。
風邪を引いたら糖尿病の薬は止めてもいい?
基本的に止めてはいけません。食事が取れなくても、ストレスホルモンの影響で血糖は上がりやすいため、薬は原則継続します。ただし嘔吐が続く場合や食事が全く摂れない場合は、特にSU薬やSGLT2阻害薬について医師に相談してください。
インスリンは減らす?増やす?どっち?
「高血糖なら増やす、低血糖なら減らす」が原則です。ただしシックデイは両方のリスクが行ったり来たりするため、一律の答えはありません。基礎インスリンは食事の有無にかかわらず継続し、追加インスリンは血糖値を測定してから判断します。あらかじめ主治医とシックデイ用の対応プランを決めておくことを強くおすすめします。
SGLT2阻害薬を飲んでいる場合の注意点は?
SGLT2阻害薬(フォシーガ、ジャディアンス、カナグルなど)はシックデイの際にケトアシドーシスのリスクが高まることが知られています。体調不良時は医師の指示がない限り休薬するのが原則です。特に発熱や下痢のある方は、確実に休薬しましょう。
食事が全く取れない時はどうすればいい?
まずは経口補水液やスープなどの水分を少量ずつ摂ることから始めます。それも難しい場合は医療機関に連絡してください。経口での補給が不可能な場合、輸液治療が必要になることがあります。また、食事が摂れないのにSU薬やインスリンを通常通り使うと低血糖のリスクがあるため、必ず医師の指示を仰いでください。
シックデイ中に水分補給はどのくらい必要?
体調不良の程度によりますが、1日1.5〜2リットルを目標にしてください。発熱や下痢がある場合はさらに多めが必要です。経口補水液(OS-1)が理想的ですが、なければ麦茶や水でも構いません。スポーツドリンクは糖質が多いため、血糖が高い場合は控えめにしましょう。
血糖値がいくつになったら受診すべき?
血糖値250mg/dL以上が24時間続く場合や、測定器でHi表示(測定不能な高値)が出た場合は、早めに医療機関に連絡してください。また、300mg/dLを超えているのにケトン体も陽性の場合は、より緊急性が高いため、すぐに受診を検討してください。
救急車が必要なタイミングは?
意識障害(呼びかけに反応が鈍い・もうろうとしている)、甘いアセトン臭がする、呼吸が速く深くなっている、自分で水分を全く摂れない状態が続く——これらの症状がある場合は、ためらわずに119番ご連絡をおすすめします。糖尿病のシックデイは命に関わる緊急事態に急速に進行することがあります。
夜間や休日に症状が悪化したら?
まずは047-467-5500に電話してください。応答メッセージで夜間・休日の対応方法を案内します。症状が重い(意識障害・アセトン臭・呼吸異常など)場合は、直接119番または最寄りの救急外来を受診してください。日頃からかかりつけ医の時間外連絡先と最寄りの救急医療機関を確認しておくことをおすすめします。
シックデイの時に食べられるものは?
お粥・うどん・ゼリー飲料・スープ・ヨーグルトなど、消化が良くて糖質が含まれているものを少量ずつ摂るのがポイントです。まったく食べないと低血糖のリスクがあるので、無理のない範囲で口にしてください。どうしても食べられない場合は、経口補水液や果汁などで糖質と水分を補給します。
嘔吐や下痢が続く時の対処法は?
嘔吐がある場合は、一度に大量に飲まずスプーン1杯(10〜15ml)の経口補水液を5分おきに口にする「スプーン飲み」を実践してください。嘔吐や下痢が6時間以上続いて水分がまったく摂れない場合は、すぐに医療機関に連絡してください。経口補水が不可能な場合は点滴による輸液が必要です。
家族ができることは?
患者さんが自分で判断できない状態になった時のために、以下の準備をしておきましょう。①かかりつけ医の電話番号(047-467-5500)を登録しておく、②服用中の薬の名前と量を把握しておく、③低血糖の症状(冷や汗・意識障害・異常行動)を覚えておく、④糖尿病用のグルカゴン注射が処方されている場合は使い方を知っておく。119番の際は「糖尿病でシックデイ」と伝えることも重要です。

ℹ️ この記事の監修情報

最終確認日:2026年8月24日。医療情報は定期的に見直しています。症状には個人差がありますので、実際の対応は必ず主治医の指示に従ってください。

最終更新日:2026-08-25

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

01/05/2026