糖質制限のやり方とリスク|糖尿病の食事療法で続けるコツ|しもやま内科(船橋市)

「先生、糖質制限って本当に効くんですか?でもご飯食べないのはつらいです…」——先日、50代の男性患者さんがそう言われました。実はこの方、3か月前に「糖質ゼロ」に挑戦して、1週間でイライラして家族とケンカ。糖質制限には「正しいやり方」と「間違ったやり方」があります。この記事では糖尿病の方に向けて、無理なく続けられる糖質制限の方法、リスク、向き不向きを、船橋しもやま内科の専門医がわかりやすく解説します。

「糖質制限って急に始めてもいいの?」「続けられなくてリバウンドしたら意味ないのでは?」——こうした不安はとてもよく聞かれます。実際、糖質制限は血糖コントロールに有効な手段ですが、「やり方」を間違えると続かず、かえって体調を崩すこともあります。このページでは、正しい知識と実践的なコツをお伝えします。

糖質制限とは?

糖質制限(ローカーボダイエット/低炭水化物食)は、炭水化物(ご飯・パン・麺類・砂糖・イモ類など)の摂取量を減らす食事療法です。血糖値は主に糖質の摂取によって上昇するため、糖質を減らせば血糖値の上昇が抑えられます。糖尿病患者さんにとって理にかなった方法であり、国内外のガイドラインでも選択肢の一つとして認められています。

糖質制限の3つのレベル

一口に「糖質制限」といっても、その厳しさには段階があります。自分の生活スタイルや血糖コントロールの状況に合わせて選ぶことが重要です。

レベル 1日の糖質量 対象者 当院の推奨
マイルド糖質制限 130〜200g 糖尿病予防・軽度高血糖の方/糖質制限初心者 ◎ 第一推奨
スタンダード糖質制限 70〜130g 2型糖尿病でHbA1c高めの方/減量が必要な方 ○ 医師指導のもと推奨
スーパー糖質制限 20〜40g 重度の肥満・血糖コントロール不良で医師が厳重管理下に認める場合のみ △ 自己判断禁止・専門医の指導必須

当院で最もおすすめしているのは、マイルド〜スタンダードな糖質制限です。先日お見えになった50代の男性患者さんにも「ご飯は今までの半分にして、その分野菜やタンパク質を増やす」——これだけでも十分効果があるとお伝えしました。1か月後、HbA1cが0.4%低下し、「家族とも仲良く食事ができてます」と笑顔で報告してくださいました。

糖質制限のメリット

  • 食後高血糖の改善:糖質を抑えることで、食後の急激な血糖値上昇を防ぎます
  • 体重減少効果:糖質制限により自然と総摂取カロリーが減りやすくなります
  • 中性脂肪の低下:血中中性脂肪が改善しやすいことが報告されています
  • 食後眠気の軽減:血糖の急上昇・急降下が減るため、食後の眠気が和らぐことも

糖質制限のデメリット・リスク

糖質制限にはメリットだけでなく、以下のようなリスクやデメリットがあることも知っておく必要があります。

特に注意すべきリスク

  • 低血糖:インスリン注射やSU薬(グリメピリドなど)を使用中の方でリスクが高まります。「急に糖質を減らしたら冷や汗と動悸が止まらなくなった」という患者さんもいらっしゃいます。薬を調整せずに糖質だけ減らすと危険です。
  • コレステロール増加:糖質を減らす代わりに脂質(肉の脂身・バターなど)を増やしすぎると、LDLコレステロールが上昇するケースがあります。特に脂質異常症を合併している方は注意が必要です。
  • ケトアシドーシスのリスク:極端な糖質制限(スーパー糖質制限など)を1型糖尿病患者さんが行うと、糖尿病性ケトアシドーシスを起こす危険性があります。1型糖尿病の方の自己判断での糖質制限は絶対に避けてください。
  • イライラ・集中力低下:脳は主にブドウ糖をエネルギー源としているため、糖質が極端に少ないとイライラや集中力低下、頭痛が生じることがあります。「糖質ゼロにしたら1週間で家族とケンカした」という冒頭の患者さんの例も、このメカニズムによるものです。
  • 腎臓への負担:糖質制限ではたんぱく質摂取量が増えがちなため、すでに腎機能が低下している方は腎臓に負担がかかることがあります。
  • リバウンド:厳しすぎる制限は長続きせず、制限をやめたときにリバウンドで体重が急増するリスクがあります。

糖質制限が向いている人・向いていない人

向いている人

  • 食後高血糖が強い方(空腹時血糖はそこまで高くないが、食後だけ急上昇するタイプ)
  • 肥満を伴う2型糖尿病の方
  • 「食べる量そのものは減らしたくない」という方(糖質を減らして野菜やタンパク質で満足感を得たい方)
  • 医師の指導のもとで計画的に取り組める方

向いていない人

  • 低血糖傾向のある方、インスリンやSU薬を服用中の方(医師の調整があれば可能)
  • 重度の腎機能障害がある方(eGFR 30未満など)
  • 1型糖尿病の方(自己判断での糖質制限は危険)
  • 妊娠中・授乳中の方
  • 摂食障害の既往がある方
  • 極端な制限を自分に課してしまい、挫折とリバウンドを繰り返す傾向がある方

「向いている」か「向いていない」かは、血液検査や普段の食事内容、ライフスタイルによって変わります。当院では初診時に詳しくお話を伺い、あなたに合った方法をご提案します。

スーパー糖質制限食について

糖質制限の中でも最も厳しい「スーパー糖質制限食(1日20〜40g)」は、一般の方が自己判断で取り組むべきではありません。糖質を極端に減らすことで、体内でケトン体が生成される「ケトーシス」状態になります。短期間で大きな体重減少や血糖改善が期待できる一方、前述したように低血糖・ケトアシドーシス・脂質異常・腎臓への負担などのリスクも大きくなります。

スーパー糖質制限はあくまで医師が必要と判断し、定期的な血液検査と薬剤調整ができる環境で行うべきものです。雑誌やインターネットで「劇的に痩せた」という情報を見ても、自己判断で真似するのは危険です。

食事療法(カロリー制限)との住み分け

当院では糖質制限のほかに、従来の「カロリー制限を主体とした食事療法」も両方提供しています。どちらが合うかは以下の観点で判断します。

  • 糖質制限が向くケース:食後高血糖が主体、満腹感を重視したい、減量が必要
  • カロリー制限が向くケース:脂質異常症が主体(LDL高値など)、バランス重視、糖尿病以外の生活習慣病もまとめて改善したい
  • 併用も可能:両方を組み合わせることでより効果的なケースもあります

「どちらがいいかわからない」という方は、一度ご相談ください。検査データと生活習慣をもとに、最適な方法をご提案します。

糖質制限を無理なく続けるコツ

  1. いきなりゼロを目指さない:まずは「ご飯を半分」から。これだけで糖質量は約40g減ります。
  2. タンパク質と野菜で満腹感を:肉・魚・卵・豆腐をしっかり摂り、野菜はたっぷり。食物繊維が血糖の吸収を緩やかにします。
  3. 計画的チートデイを作る:週に1〜2回は好きなものを普通に食べてOK。完全に禁止すると挫折しやすくなります。
  4. 血糖値をこまめに測る:自己血糖測定器を使って食前・食後の血糖を把握すると、自分に合った糖質量が見えてきます。
  5. 外食時のコツを覚える:定食屋なら「ご飯半分、野菜多め」、ラーメン屋は「麺半分、野菜増量」、ファストフードはなるべく避ける。

糖質制限とリバウンド

「糖質制限をやめたら元の体重以上に戻った」というリバウンドの報告は少なくありません。原因は、極端な制限で長続きしなかったことと、制限中に筋肉量が減って基礎代謝が低下したことです。リバウンドを防ぐには、ゆるやかに糖質を戻す(いきなり通常食に戻さない)ことと、適度な運動で筋肉を維持することが大切です。当院では開始前から「卒業後のプラン」も一緒に考えます。

緊急性の高い症状がある方へ

以下の症状がある方はすぐに医療機関を受診してください

  • 冷や汗・動悸・めまいが治まらない(低血糖の可能性)
  • 吐き気・腹痛・意識がもうろうとする(ケトアシドーシスの可能性)
  • 急激な体重減少と倦怠感が続く

夜間や休日でも、我慢せずに救急相談(#7119)または救急要請(119)をしてください。

❓ よくある質問

糖質制限は1日どのくらいの糖質を目安にすればいい?
当院ではマイルド〜スタンダード(1日130g未満〜70〜130g)を推奨しています。まずは「ご飯を半分」から始めて、血糖値の変化を見ながら調整してください。自己血糖測定器をお持ちの方は食後2時間値が140mg/dL未満を目標に調整すると良いでしょう。
糖質制限をすると低血糖になるリスクは?
インスリン注射やSU薬(アマリールなど)を使っている方は、糖質を減らした分だけ低血糖のリスクが高まります。自己判断で薬を減らしたりせず、必ず医師に相談しながら進めてください。当院では糖質制限開始時に薬の調整も行います。
糖質制限でコレステロールが上がるって本当?
はい、糖質の代わりに脂質(特に飽和脂肪酸:肉の脂身・バター・ラードなど)を増やしすぎると、LDLコレステロールが上昇することがあります。脂質異常症の方は、魚の油(EPA・DHA)やオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を選ぶようにしましょう。気になる方は定期的な血液検査をおすすめします。
糖質制限中にイライラするのはなぜ?
脳のエネルギー源はブドウ糖です。糖質を極端に減らすと脳に十分なエネルギーが届かず、イライラ・集中力低下・頭痛が起こることがあります。これは「糖質ゼロ」に挑戦した方に多く見られる症状です。マイルドな糖質制限では起こりにくいため、極端な制限は避けましょう。
糖質制限でリバウンドしない方法は?
大きく2つのポイントがあります。①目標達成後もゆるやかに糖質を戻す(いきなり通常食に戻さない)、②制限中も適度な運動で筋肉量を維持する。当院では「ゴール後の食事プラン」も事前に準備して、リバウンドを防ぐ指導を行っています。
糖質制限は長く続けても安全?
長期的な安全性については大規模なエビデンスがまだ十分ではありません。当院では「ずっと続ける」より「目標体重やHbA1cに達したら、ゆるやかに糖質を戻す」方法をおすすめしています。
スーパー糖質制限と普通の糖質制限の違いは?
スーパー糖質制限は1日20〜40gと極端に糖質を減らす方法で、ケトーシス状態を利用します。体重減少効果は高いものの、低血糖・ケトアシドーシス・脂質異常などのリスクが大きいため、自己判断では行わないでください。当院で推奨するのはマイルド〜スタンダードな糖質制限です。
糖質制限中に食べていいもの・ダメなものは?
OK:肉・魚・卵・豆腐・納豆・チーズ・野菜(緑黄色野菜多め)・キノコ・海藻・オリーブオイル
控えめに:ご飯・パン・麺類・砂糖・イモ類・果物(特にバナナ・ぶどう)・清涼飲料水・アルコール(ビール・日本酒は糖質多め)
「糖質オフ」表示の加工品も糖質ゼロではないことがあるので、成分表示をチェックしましょう。
糖尿病じゃない人にも糖質制限は効果がある?
健康な方でも減量目的で糖質制限を行うことはありますが、極端な制限は必要な栄養素が不足するリスクがあります。糖尿病の予防として行う場合は、マイルドな糖質制限(1日130〜200g)にとどめ、バランスの良い食事を心がけてください。
糖質制限を始める前に何を準備すればいい?
まずはかかりつけ医に相談し、血液検査(HbA1c・脂質・腎機能など)を確認しましょう。糖尿病の薬を服用中の方は、医師の指示なく糖質を減らすと低血糖になる危険があります。自己血糖測定器があれば、開始前後の血糖値の変化を把握するのに役立ちます。

「糖質制限ってやったほうがいい?」——正しく知って、自分に合った方法を選びましょう。

まずは一度ご相談ください。検査データとお話をもとに、あなたに合った食事療法をご提案します。

月・火・木・金 9:00〜12:00 / 14:45〜17:30 土 9:00〜12:00

☎ 047-467-5500

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最終更新日:2026-08-26

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

06/03/2026