🔊 このページの要点
インスリンは膵臓から出るホルモンで、血液中のブドウ糖を肝臓や筋肉、脂肪細胞に取り込ませて血糖値を下げる働きがあります。インスリンが足りなくなったり効きにくくなると、血糖値が高い状態が続き糖尿病になります。このページでは、インスリンの基本的な役割と、血糖値を保つしくみをやさしく解説します。
「インスリン」という言葉はよく耳にするものの、ホルモンとして体の中でどんな役割をしているのかは案外知られていません。インスリンの働きを理解すると、なぜ血糖値が上がるといけないのか、なぜ食事療法や運動療法が大事なのかも見えてきます。
このページでは、インスリンそのものの働きに焦点を当てた基礎編として、糖尿病の詳しい治療内容に入る前の「土台」をわかりやすくまとめました。

インスリンとは?
インスリンは膵臓β細胞から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を主に肝臓、骨格筋、脂肪細胞内に取り込ませることによって血糖値を下げる作用があります。インスリンの欠乏や分泌不足、作用が低下すると、持続的に血糖値の上昇が起こり糖尿病を発症します。
人体が血糖値を正常範囲内に維持しているしくみは、摂食によるエネルギー摂取とこれに対応するインスリン分泌とその作用、インスリン拮抗ホルモン(=グルカゴンなど、血糖を上昇させるホルモン)の増減によって精密に調整されています。
インスリンはどこから・どのように分泌される?
膵臓の中には「ランゲルハンス島」と呼ばれる小さな細胞の集まりがあり、そのうちβ(ベータ)細胞がインスリンを分泌しています。血糖値が上がると、膵臓はそれを感知してインスリン分泌を増やし、血糖値が下がってくると分泌を減らします。
- 血糖値が高くなるとインスリン分泌が増える
- 血糖値が下がるとインスリン分泌が減る
- このバランスが崩れると、血糖値のコントロールがうまくいかなくなる
健康な状態では、膵臓がこの調節を自動的に行っており、私たちは意識しなくても血糖値が一定の範囲に保たれています。
インスリンの働き
インスリンのより詳しい働きについては、
「インスリンの働きがわかると糖尿病がわかる」
で図を使って解説しています。ここでは概要だけ押さえておきましょう。
食後のインスリン分泌
食事をとると血糖値が上がり、それに反応してインスリン分泌が増加します。インスリンは次のような働きをします。
- 肝臓では糖の放出を抑え、糖をグリコーゲンとして貯蔵する
- 筋肉や脂肪組織ではブドウ糖の取り込みを増やし、エネルギー源として利用・貯蔵する
- グルカゴンなどのインスリン拮抗ホルモンの分泌を抑えて、インスリンの効果を高める
空腹時・運動時のインスリン分泌
飢餓、運動時など生体におけるエネルギー需要が増大する場面では、インスリン分泌は減少し、エネルギーの貯蔵は弱まります。その一方でインスリン拮抗ホルモンの分泌が亢進し、
- 肝臓でのグリコーゲン分解・糖新生が亢進し、ブドウ糖を全身へ供給する
- 筋肉や脂肪組織の分解により、糖新生の材料(アミノ酸・脂肪酸など)を肝臓へ送る
といった変化によって、血糖を維持するように働いています。
インスリンが不足・効きにくくなるとどうなる?
インスリンの分泌がほとんどなくなってしまう状態が1型糖尿病、分泌は残っているものの効きが悪くなる状態が2型糖尿病の代表的なパターンです。
- 1型糖尿病:自己免疫などにより膵β細胞が破壊され、インスリンがほとんど出なくなる
- 2型糖尿病:遺伝素因や肥満、運動不足などによりインスリン抵抗性(効きにくさ)が進み、相対的なインスリン不足になる
どちらのタイプでも、結果として血糖値が高い状態が続くと、網膜症・腎症・神経障害などの合併症につながっていきます。
インスリンと低血糖の関係
インスリンは血糖値を下げる方向に働くホルモンなので、量が多すぎると低血糖を起こすことがあります。
- 健康な状態では、膵臓が自動的に分泌量を調整するため、通常は低血糖になりにくい
- 糖尿病治療でインスリン注射や一部の経口薬を使っている場合は、飲み過ぎ・打ち過ぎ、食事量の不足、激しい運動などで低血糖が起こり得る
低血糖症状や対処法については、別ページで詳しく解説していますが、インスリンは「足りないと困る」だけでなく「多すぎても困る」ホルモンであることを覚えておくと理解しやすくなります。
船橋市で糖尿病やインスリン治療について学びたい方へ
しもやま内科は、東葉高速線「飯山満駅」徒歩圏内にある内科・糖尿病内科・甲状腺内科のクリニックです。船橋市を中心に、習志野市・八千代市・鎌ケ谷市など近隣エリアから、多くの糖尿病患者さんが通院されています。
- 日本糖尿病学会専門医による1型・2型糖尿病の診療
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- インスリン治療、経口薬治療、生活習慣の見直しを組み合わせた個別化治療
「インスリンが必要と言われて不安」「どんな治療になるのか事前に知っておきたい」といったご相談も、お気軽にお寄せください。
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👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会 専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺疾患、循環器疾患、老年期疾患などの診療に長年携わり、地域のかかりつけ医として多数の診療実績があります。