「先生、インスリンを打つお腹に、コリコリしたしこりができちゃったんですけど…これって大丈夫ですか?」——先日、インスリン治療を3年続けている70代の女性患者さんが、不安そうな顔でそう言われました。お腹を見せていただくと、へその周りに小さな硬い塊が2〜3個触れました。これは「脂肪肥厚(リポディストロフィー)」と呼ばれるもので、適切なケアで予防できます。
インスリン注射でできるしこりの正体
① 脂肪肥厚(しぼうひこう)——最も多いタイプ。同じ場所に繰り返し注射をすることで、皮下脂肪が盛り上がって硬くなる。触るとコリコリ・ゴツゴツした感触。先日の患者さんは「痛みはないんですけど、気になって…」と言っていました。
② 脂肪萎縮(いしゅく)——脂肪が萎縮して皮膚が凹む。最近のインスリンでは稀。
これらの問題は、見た目だけでなく、インスリンの吸収にも影響します。しこりの部分に打つとインスリンの吸収が悪くなって、血糖コントロールが乱れる原因になります。「最近血糖が高いな」と思ったら、しこりに打っていないか確認してみてください。
予防のためのローテーション(注射部位の順番)
予防策はただひとつ——毎回同じ場所に打たないこと。
おすすめのローテーション方法:
- お腹を「4つのエリア」に分けて、順番に使う
- 同じエリアでも、前回打った場所から少なくとも2〜3cm離す
- 左右交互に打つ
- お腹だけでなく、腕や太ももも使う(医師や看護師に相談してから)
先日の患者さんには、「お腹の地図を書いて、どこに打ったか印をつけると良いですよ」とお伝えしました。2週間後に「しこりが小さくなってきた気がします」と報告してくれました。
しこりができてしまったら
- そのしこりには注射をしない
- しこりから離れた場所に打つ
- しこりのほとんどは、時間とともに自然に消えていきます
- 気になる場合は医師に相談を
❓ よくある質問
しこりがある場所に打ち続けるとどうなる?
吸収が不安定になり、血糖値のコントロールが乱れます。「最近血糖値が高いな」と思ったら、しこりに打っていないか確認してみてください。先日の患者さんも、しこりを避けて打つようにしたら、血糖が安定し始めました。
お腹以外に打ってもいいの?
インスリンはお腹・太もも・腕・お尻に打てます。吸収スピードはお腹>腕>太もも>お尻の順。部位によって吸収が違うので、基本的には同じ部位の中でローテーションするのが無難です。「腕に打つと痛い」と言われる方もいますが、慣れると大丈夫です。
しこりは自分で消せますか?
マッサージや湿布で消すことはできません。しこりに注射を避けて、自然に委ねるのが基本です。数か月〜半年で小さくなることがあります。大きくなったり痛みが出たりする場合は、必ず医師に相談してください。