「先生、夜になると足の奥がじんじんして、全然眠れないんです」——先日、65代の男性患者さんが、疲れ切った表情で相談されました。糖尿病歴15年で、最近足のしびれと痛みがひどくなってきたそうです。実はこれは「糖尿病性神経障害」の典型症状で、放置すると夜間痛が慢性化して生活の質が著しく下がります。でも、適切な薬物療法を開始すれば、多くの方が症状をかなり軽減できます。
「先生、夜中に足が針で刺すように痛くて、全然眠れないんです」
60代の男性患者さんが、初診の時にそう言われたのを覚えています。糖尿病を患って15年、これまでは特に症状がなかったのに、ここ数か月で足の裏がじんじんして、夜になると火傷したような痛みが走るようになったそうです。朝起きると、布団の中で足がこすり合わせてしまうほど。
この方のように、糖尿病性神経障害(いわゆるDPN)で悩む患者さんは、当院でも少なくありません。糖尿病の合併症の中で、痛みを伴うものとしては最も身近な病気かもしれません。でも、痛みがあるからこそ「我慢せずに相談してほしい」と思っています。
糖尿病性神経障害の痛みって、どんな感じ?
診察室で患者さんから聞く症状は、人によってさまざまです。「熱い炭の上を歩いているような感じ」「電気が走るようなしびれ」「靴下を履いているのに、裸足で歩いているような違和感」など、表現の仕方はそれぞれ違います。
共通しているのは、最初は軽いしびれや違和感から始まり、だんだん痛みが強くなっていくということです。そして、夜間に悪化するのが特徴です。昼間は仕事や家事で気を紛らわせているうちに我慢できても、夜になると痛みが目立ってしまうんですね。
当院で使っている薬と、実際の患者さんの反応
薬の選択は、症状の強さや患者さんの生活状況に合わせて決めています。ここでは、私が実際に処方している薬と、患者さんから聞いたリアクションをご紹介します。
プレガバリン:「最初の1週間で痛みが半減した」
プレガバリンは、神経の過剰な興奮を抑える薬で、糖尿病性神経障害の痛みに対してよく効きます。夜の痛みで眠れない方には特に向いています。
先日の患者さんは「1日75mgから始めて、1週間後には夜中に目が覚める回数が明らかに減りました」と言っていました。ただ、初期は多少の眠気やめまいを感じることがあるので、運転をする方には慎重に説明しています。
デュロキセチン:「痛みだけじゃなく、気分も楽になった」
デュロキセチンは、痛みを伝える神経伝達物質を調整する薬です。痛みだけでなく、合併する不安やうつ気分にも効果があるのが特徴です。
長年の痛みで「もう治らないんじゃないか」と諦めかけていた患者さんが、デュロキセチンを開始して2週間後に「痛みはまだ残りますが、気分的にずっと楽になりました」と言われたのを覚えています。痛みがあるとどうしても気分が落ち込みますから、心の面もケアするのは大切だと思います。
ただ、胃腸の調子が少し乱れたり、初期に眠気を感じることがあるので、お仕事中の方は夕食後に服用するタイミングを調整しています。
ガバペンチン:「値段が安いのに効くから続けやすい」
ガバペンチンは、プレガバリンと似た働きをする薬ですが、ジェネリックが出ているため費用負担が少なく済む方が多いです。私の診察室でも、経済的な負担を気にされている患者さんにはこちらを選ぶことが多いです。
「1日3回飲むのが少し面倒だけど、値段が安いから続けられます」と言っていただける方もいらっしゃいます。副作用としては眠気や浮動性めまいがあることがありますが、徐々に用量を増やしていくことで慣れていきます。
薬だけじゃない。生活習慣の改善も大事
薬は痛みを和らげるために大事ですが、根本的な解決には血糖コントロールが欠かせません。HbA1cが8%以上の方は、神経障害が進行しやすくなります。だからこそ、当院では薬の処方と同時に、食事や運動の相談も行っています。
「糖質を少し減らして、夕食後に15分歩くようにしたら、HbA1cが0.5下がりました」という患者さんもいらっしゃいました。小さな変化でも、神経には確実に効いてきます。
あと、意外と見落としがちなのが「足のケア」です。神経障害があると、靴擦れや小さな傷に気づきにくくなります。毎日の就寝前に足の裏を鏡で確認する、という習慣をおすすめしています。
どの薬が自分に合うか、迷ったら相談して
薬の選択は、痛みの強さ、副作用の出やすさ、生活リズム、経済的な負担などを総合的に考えて決めます。「この薬が絶対」というものはなく、その人に合った薬を一緒に探していくのが、当院の方針です。
痛みがあるのに「我慢しよう」と思わずに、ぜひ一度相談してください。夜眠れない痛みは、生活の質を大きく下げてしまいます。適切な薬と生活指導で、かなり改善できるケースが多いです。
電話予約:047-467-5500
診療時間:月・火・木・金 9:00〜12:00、14:45〜17:30/土曜 9:00〜12:00(水日祝休診)
最終更新日:2026-05-20
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。