SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の併用|合剤の種類・効果・注意点を比較

このページの要点(SGLT2阻害薬 × DPP-4阻害薬 併用)
DPP-4+SGLT2の併用は「低血糖が起こりにくい」組み合わせで、食後高血糖と空腹時高血糖を分担できます。
一方で脱水・尿路/性器感染・(特に1型では)ケトアシドーシスに注意が必要です。
発熱・嘔吐・下痢・絶食・手術前後は一時休薬が必要になることがあります(自己判断せず主治医へ)。
日本では3種類の配合剤(合剤)が使用可能です。このページでは、併用療法の効果・注意点・休薬目安をまとめます。

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このページでは、DPP-4阻害薬+SGLT2阻害薬の併用が向くケースと、注意すべき副作用・休薬(シックデイ)目安、さらに日本で使える合剤の一覧比較を、実践的にまとめます。


SGLT2阻害薬+DPP-4阻害薬は「何を改善する併用」?

この2系統は、作用メカニズムがまったく異なります。そのため、併用することで血糖コントロールの「穴」を互いに補い合えるのが最大の利点です。

併用の狙い(ざっくり)※薬剤名は例。実際は年齢・腎機能・合併症などで個別に判断します。

食後高血糖 DPP-4阻害薬が得意(インクレチンを介して食後の血糖上昇を抑える)
空腹時高血糖 SGLT2阻害薬が得意(尿中へ糖を排泄し、24時間の血糖を底上げしやすい)
低血糖リスク どちらも単独では起こりにくい(ただしSU薬・インスリン併用では低血糖に注意)
体重 SGLT2阻害薬は体重減少方向に働きやすい(過食の“言い訳”にならないよう注意)
血圧・心腎保護 SGLT2阻害薬に血圧低下・心不全リスク軽減・腎機能保護のエビデンスがある

日本で使える「合剤(1錠にまとまった薬)」の一覧比較

SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬を1錠に配合した薬(配合剤)は、2024年時点で以下の3種類が使用可能です。いずれも1日1回の服用で、2種類の成分を同時に摂取できます。

DPP-4阻害薬+SGLT2阻害薬 配合剤 比較表

商品名 配合成分(DPP-4 / SGLT2) 含有量 1日服用回数
カナリア配合錠
カナリア配合OD錠
テネリグリプチン(テネリア)

カナグリフロジン(カナグル)
20mg / 100mg 1日1回 朝食後
トラディアンス配合錠AP
トラディアンス配合錠BP
リナグリプチン(トラゼンタ)

エンパグリフロジン(ジャディアンス)
5mg / 10mg(AP)
5mg / 25mg(BP)
1日1回 朝食後
スージャヌ配合錠 シタグリプチン(ジャヌビア)

イプラグリフロジン(スーグラ)
50mg / 50mg 1日1回 朝食後
合剤のメリット
①飲み忘れが減る ②処方が整理しやすい ③通院負担が減ることがある
合剤の注意
片方だけ中止したいときに調整しづらい(副作用・脱水時などは特に)。最初から合剤で始めるよりも、まずは別々で各薬剤の効果・副作用を確認してから切り替えるのが一般的です。

併用が「向く」ケース(目安)

  • 食後高血糖が残り、DPP-4単剤では物足りない
  • 空腹時高血糖が高めで、日内変動をならしたい
  • 体重・血圧・心腎リスクも含めて総合的に管理したい(個別評価が前提)
  • 低血糖をできるだけ避けたい(ただし他剤併用次第)
  • HbA1c 7〜8%台で、追加薬を検討している

併用で注意するポイント(ここが一番大事)

1)脱水(夏・発熱・下痢・嘔吐・食事が取れない時)

SGLT2阻害薬は尿量が増えやすく、脱水・血圧低下・ふらつきにつながることがあります。
特に高齢・利尿薬内服・暑い環境・水分摂取が少ない方は要注意です。夏場や体調不良時のリスクが高まるため、事前に対策を相談しておきましょう。

2)尿路感染・性器感染(かゆみ・痛み・頻尿・発熱)

尿中の糖が増えるため、膀胱炎・外陰部の症状が出やすいことがあります。女性に多いですが男性にも起こります。症状があれば早めに相談してください。

3)ケトアシドーシス(DKA)—— 緊急対応が必要な副作用

SGLT2阻害薬は、血糖値が高くなくてもケトアシドーシス(DKA)を起こすことがあります(euglycemic DKA)。
以下の症状が出たら、休日・夜間を問わず早めに受診または救急要請を検討してください。

⚠ 以下の症状がある場合は早めに医療機関へ

  • 強い倦怠感・意識がぼんやりする
  • 吐き気・嘔吐・腹痛が続く
  • 息苦しさ・深く速い呼吸
  • ※血糖値が高くなくてもDKAの可能性があります

当院受付時間外の場合は、お近くの救急外来を受診するか、#7119(救急安心センター)へ電話で相談してください。

シックデイ(体調不良時)の基本
発熱・嘔吐・下痢・食事が取れない・脱水が疑われる・手術/検査で絶食…
自己判断で続けず、まず主治医に連絡(夜間/休日は救急受診が必要なこともあります)

よくある質問(FAQ)

Q. SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の併用は安全ですか?

多くのケースで安全に併用できる組み合わせです。低血糖は起こりにくい一方、脱水・尿路感染・(状況によっては)ケトアシドーシスなどの注意点があります。年齢、腎機能、他剤併用で安全性が変わるため、主治医と一緒に判断します。

Q. SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の合剤にはどんな種類がありますか?

日本では2024年時点で3種類の配合剤が使用可能です。カナリア配合錠(テネリグリプチン+カナグリフロジン)、トラディアンス配合錠AP/BP(リナグリプチン+エンパグリフロジン)、スージャヌ配合錠(シタグリプチン+イプラグリフロジン)です。いずれも1日1回朝食後の服用です。

Q. SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の併用の注意点は?

主な注意点は3つ:①SGLT2阻害薬による脱水リスク(高齢・利尿薬併用・夏場は特に注意)、②尿路感染・性器感染、③ケトアシドーシス(血糖値が高くなくても起こりうる)。体調不良時(発熱・嘔吐・下痢)は一時休薬の判断が必要です。

Q. SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬はどちらが先に使うべきですか?

一般的にはメトホルミンを第一選択とし、その後に患者さんの背景に応じて選択します。HbA1cの高さ、食後高血糖と空腹時高血糖のどちらが主体か、体重・血圧・心腎リスクの有無で決まります。DPP-4阻害薬は食後高血糖が主体の場合に優先しやすい一方、SGLT2阻害薬は心不全・慢性腎臓病(CKD)を合併する場合に優先されます。

Q. SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の効果の違いは?

DPP-4阻害薬はインクレリン(GLP-1)を介して食後血糖を抑える作用が主体で、体重への影響はほぼ中性です。SGLT2阻害薬は尿中に糖を排泄することで空腹時血糖・HbA1cを下げ、体重減少・血圧低下・心腎保護といった多彩な効果があります。併用すると「食後高血糖(DPP-4)+空腹時高血糖(SGLT2)」を補完できます。

Q. フォシーガとトラゼンタの併用はできますか?

フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン、SGLT2阻害薬)とトラゼンタ(一般名:リナグリプチン、DPP-4阻害薬)の併用は可能な組み合わせです。ただし、フォシーガとリナグリプチンを1錠にまとめた合剤は現時点ではありません(トラディアンスはリナグリプチン+エンパグリフロジン=ジャディアンスの合剤です)。フォシーガ+トラゼンタの場合は別々の錠剤での服用となります。

Q. SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の副作用は?

DPP-4阻害薬の主な副作用:上気道感染・関節痛・便秘など(重篤なものはまれ)。SGLT2阻害薬の主な副作用:脱水・尿路感染・性器感染・ケトアシドーシス(まれだが要注意)。併用時は両方の副作用に注意し、特に体調不良時の脱水とDKAに気をつけましょう。

Q. SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の併用で休薬するタイミングは?

以下の状況では一時休薬が必要になることがあります。①発熱・嘔吐・下痢など食事が十分に取れないとき、②手術前後(特にSGLT2阻害薬は術前24〜48時間の休薬が推奨される)、③造影CT検査前(SGLT2阻害薬は48時間休薬)。また、ケトアシドーシスのリスクがある場合は、自己判断せず主治医に相談してください。

Q. 合剤と別々の錠剤、どちらが良いですか?

飲み忘れ対策なら合剤が有利です。一方で、片方だけ中止・減量したい場面(副作用、脱水時など)では別錠のほうが調整しやすいことがあります。最初は別々で各成分の効果・副作用を確認し、安定してから合剤に切り替える方法が一般的です。


👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病の薬物療法(SGLT2阻害薬・DPP-4阻害薬を含む)を、年齢・腎機能・合併症まで踏まえて個別に最適化しています。

最終更新日:2026年8月23日
記事の目的:当院で糖尿病治療を受けている患者さん・ご家族に、治療選択肢の理解を促すための情報提供です。診断・治療は必ず医師の対面診療を受けてください。

服薬の組み合わせに不安がある方、体調不良時の対応(休薬の目安)を整理したい方はご相談ください。


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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

01/05/2017