🔊 このページの要点
インスリンポンプ療法(CSII)は、細いカニューレをお腹に留置して24時間少量ずつインスリンを送り続ける治療法です。CGMと連携したSAP・ハイブリッド閉ループ(MiniMed 780Gなど)では、AIが自動でベーサル調整や自動補正ボーラスを行い、より精密な血糖コントロールが可能になりました。本ページでは、2026年最新のインスリンポンプ情報として、パッチ型(メディセーフウィズ)とチューブ型(MiniMed 780G)の比較、CSIIとSAPの違い、費用・導入条件まで網羅的に解説します。
「インスリンを何回も打つのがつらい」「学校や仕事中に注射しづらい」「血糖の上下がどうしても大きくなる」「最新のポンプ技術を知りたい」──そんな方にとって、インスリンポンプ療法(CSII)は有力な選択肢です。
このページは、インスリンというホルモンの基礎を解説した
「インスリンとは?(基礎編)」、
インスリン注射全体の考え方をまとめた
「インスリン治療について(総論)」
の次のステップとして、ポンプ療法(CSII)・SAP・ハイブリッド閉ループについて整理したハブページです。

インスリンポンプ療法(CSII)とは?
インスリンポンプ療法(CSII:Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)は、腹部の皮下に柔らかいカニューレを留置し、ポンプ本体から24時間少量ずつインスリンを注入し続ける治療です。
- ベーサル(基礎)インスリン:時間帯ごとに流量を細かく設定できる
- ボーラス(追加)インスリン:食事の量や血糖に応じて、ボタン操作で追加注入
ペンでの多回注射(MDI)に比べ、血糖の変動が小さくなりやすく、HbA1cの改善や低血糖リスクの低減が期待できます。特に血糖パターンが安定しない方には、CSIIは有効な治療選択肢です。
SAP・ハイブリッド閉ループとは?
- SAP(Sensor-Augmented Pump):CGM(連続血糖測定)とポンプを連携させ、リアルタイムの血糖値をもとに調整を行うシステムです。
- ハイブリッド閉ループ(MiniMed 780Gなど):AIが自動でベーサル(基礎)インスリンを調整し、目標血糖範囲を維持しようとします。
現在の最新機種では、自動補正ボーラス(血糖が高い時に少量のインスリンを自動で追加)や目標血糖値の柔軟な設定も可能になっています。2026年現在、日本で利用可能なハイブリッド閉ループシステムはMiniMed 780Gが代表的です。
CSIIとSAPの違い
| 比較項目 | CSII(従来型ポンプ) | SAP(センサー付きポンプ) |
|---|---|---|
| 血糖モニタリング | SMBG(指先穿刺)のみ | CGM連携(リアルタイム) |
| 低血糖予防 | 設定による予防 | 自動インスリン中断(低予測) |
| 自動調整 | なし(手動設定) | MiniMed 780Gは自動ベーサル調整+補正ボーラス |
| データ可視化 | ログ機能のみ | スマートフォンで24時間確認・傾向分析 |
| 月額費用目安(3割負担) | 約17,800円 | 約29,700円 |
インスリンポンプ vs 頻回注射(MDI)の比較
| 比較項目 | インスリンポンプ(CSII) | 頻回注射(MDI) |
|---|---|---|
| 注射回数 | 3〜7日に1回(カニューレ交換時) | 1日4〜6回 |
| 血糖変動 | 小さい(時間単位で微調整可能) | やや大きい |
| 夜間低血糖リスク | 低い(ベーサル調整・自動停止機能) | 中程度 |
| 食事の柔軟性 | 高い(食べたい時にボーラス) | 中程度(食事時間に合わせて注射) |
| 導入ハードル | 機器操作習得・保険申請が必要 | 低い(医師の指導で開始) |
| 月額費用目安 | 約17,800〜29,700円(3割負担) | 約5,000〜15,000円(インスリン代含む) |
どちらが適しているかは、患者さんのライフスタイル、血糖パターン、治療への意向によって異なります。しもやま内科では両方の治療法に対応し、一人ひとりに最適な選択を提案します。
どんな方にインスリンポンプ療法が向いている?
- 1型糖尿病の方(インスリン治療が必須な方)
- 多回注射(MDI)で血糖コントロールが不安定な方
- 低血糖(特に夜間や無自覚低血糖)が頻繁にある方
- 生活リズムが不規則で、食事時間がばらつきやすい方
- スポーツや運動を活発に行う方
- 妊娠を計画している、または妊娠中の1型糖尿病の方
- 就寝中も含めた24時間の血糖管理を希望する方
しもやま内科で使用する主なポンプ・機種
日本で利用可能なインスリンポンプ一覧
| 項目 | メディセーフウィズ | MiniMed 780G |
|---|---|---|
| タイプ | パッチ型 | チューブ型 |
| 装着場所 | 腹部に貼り付け | 腹部・大腿部など |
| 操作方法 | スマートフォンアプリ | 本体ボタン+アプリ |
| 交換頻度 | 3日ごと(一体型) | カニューレ3日、リザーバー3日 |
| CGM連携 | 別途CGMと併用可能 | Guardian 4と一体運用 |
| 自動調整 | なし(手動ベーサル) | ハイブリッド閉ループ(AI自動調整) |
| 防水 | IPX8(水深3mまで30分) | IPX8(水深3.6mまで24時間) |
| 特徴 | チューブなし・超軽量 | 高度な自動化・豊富なデータ |
メディセーフウィズ(メディセーフ)— パッチ型ポンプ
- 日本初のパッチ型ポンプ(2023年発売)
- 本体をパッチ状に腹部に貼り付け、スマートフォンで操作
- 本体・カニューレ一体型で、3日ごとに交換
- 軽量・コンパクトで、衣服の下でも目立ちにくい
- 防水機能付きで、日常生活に支障が少ない
MiniMed 780G(メドトロニック)— チューブ型ポンプ
- 世界で最も普及しているチューブ型ポンプの最新モデル
- CGM(Guardian 4)と連携し、ハイブリッド閉ループを実現
- AIが自動でベーサル調整・自動補正ボーラスを実行
- 目標血糖値を100mg/dLに設定可能
- 食事のカウントや運動の記録もアプリで管理可能
どう選べばいい?
メディセーフウィズが向いている方:
- コンパクトで目立ちにくいものがいい方
- スマートフォン操作に慣れている方
- 費用を抑えたい方(本体価格が比較的安価)
MiniMed 780Gが向いている方:
- 自動化を最大限に活かしたい方
- 血糖コントロールが特に不安定な方
- 長期的な血糖データ管理を重視する方
インスリンポンプ療法のメリット・デメリット
メリット
- 血糖変動が小さくなり、HbA1cが改善しやすい
- 食事時間が不規則でも柔軟に対応できる
- 夜間低血糖リスクが低減できる(ベーサルの一時停止機能)
- スポーツや運動前後の調整が細かくできる
- ハイブリッド閉ループでは、AIが自動で血糖を管理
- QOL(生活の質)の向上:注射のわずらわしさから解放
デメリット・注意点
- ポンプ本体・消耗品に費用がかかる
- カニューレの留置部の皮膚トラブル(かぶれ・感染)に注意
- 機器の操作を習得する必要がある
- ポンプ故障時のバックアップ(ペン型インスリンの携帯)が必要
- ハイブリッド閉ループでも、完全な自動化ではなく食事ボーラスは手動
インスリンポンプの費用と保険適用
インスリンポンプ療法(CSII)は保険診療が適用されます。しもやま内科において月1回定期受診(再診)される場合の、診療報酬点数および自己負担額の目安は以下の通りです。
定期受診1回あたりの費用目安(自己負担3割の場合)
| 区分 | 間欠型インスリンポンプ (CSII) |
SAP (CGM連動インスリンポンプ) |
|---|---|---|
| 主な算定内容の例 | 在宅自己注射指導管理料 間歇注入シリンジポンプ加算 血糖自己測定器加算(120回以上)など |
在宅自己注射指導管理料 持続血糖測定器加算 血糖自己測定器加算(120回以上)など |
| 総診療報酬点数 | 5,932 点 | 9,902 点 |
| 窓口自己負担額(3割) | 17,796 円 | 29,706 円 |
※上記の総点数には、再診料、外来管理加算、電子的診療情報連携体制整備加算、各種検査(尿一般・末梢血液一般・生化学的検査など)および各判断料、処方箋料、一般名処方加算、外来・在宅ベースアップ評価料など、当日の診療にかかるすべての費用が含まれています(院外処方のため、調剤薬局で支払う薬剤費等は別途発生します)。
※実際の費用は、当日の検査内容や指導管理・加算の種類、自己測定の回数などによって多少前後する場合があります。また、高額療養費制度の適用により、月額の自己負担上限額が設定され、実際の負担がさらに軽減されることがあります。
しもやま内科でのインスリンポンプ導入の流れ
- 適応評価(初回診療):血糖ログ・HbA1c・生活リズムを確認し、ポンプ療法が適しているか判断します。
- 機種選定:メディセーフウィズかMiniMed 780Gか、生活スタイルに合わせて提案します。
- 保険申請・事前手続き:専門医が保険申請書類を作成し、承認を待ちます。
- 導入前教育:ポンプの操作、低血糖対応、緊急時のバックアップ(ペン型インスリン)について学びます。
- 導入・初期調整:装着後、血糖パターンを見ながらベーサル・ボーラス量を微調整します。
- フォローアップ:導入後も定期的に受診いただき、データを確認しながら調整を続けます。
緊急時の対応について
⚠️ ポンプ療法中の緊急リスクについて
- DKA(糖尿病性ケトアシドーシス):ポンプのインスリン注入が停止すると、数時間でケトン体が上昇しDKAに至る可能性があります。ポンプのアラーム無視やカニューレの閉塞・脱離に注意してください。
- 重症低血糖:SAPではCGMの低血糖予測アラートで予防できますが、完全ではありません。常にブドウ糖やブドウ糖含有飲料を携帯しましょう。
- トラブル時の備え:必ずペン型インスリンとケトン体測定試薬を携帯してください。ポンプが正常に動作しているか、こまめに血糖値(またはCGM値)で確認することが重要です。
緊急時は当院(047-467-5500)または救急医療機関にご連絡ください。
インスリンポンプ療法に関するよくある質問
Q1. CSII(持続皮下インスリン注入療法)とは?
CSIIはインスリンポンプを用いて24時間持続的にインスリンを注入する治療法です。時間帯ごとに基礎インスリン量を細かく設定でき、食前にはボタン操作で追加インスリンを注入します。多回注射に比べ血糖変動が小さくなりやすいのが特徴です。
Q2. SAP(センサー増強ポンプ療法)とは?
SAPはCGMセンサーとインスリンポンプを連携させた治療法です。CGMのリアルタイム血糖値を基に、MiniMed 780GではAIが自動でベーサル調整や自動補正ボーラスを行います。
Q3. CSIIとSAPの違いは?
CSIIは指先穿刺での血糖測定と手動設定、SAPはCGM連携によるリアルタイム調整が最大の違いです。SAPの方が月額費用は高いものの、Time in Rangeの向上や夜間低血糖予防で優れています。
Q4. インスリンポンプと頻回注射(MDI)の比較は?
ポンプは注射回数が大幅に減り血糖変動が小さい一方、MDIは導入が簡単でコストが低いという違いがあります。どちらが適しているかは患者さんの状況に応じて判断します。
Q5. インスリンポンプは誰に適応されますか?
主に1型糖尿病患者さんが対象です。特にMDIでコントロール不良な方、夜間低血糖が多い方、生活リズムが不規則な方、運動量の多い方に適しています。
Q6. インスリンポンプのメリット・デメリットは?
メリットは血糖変動の改善、低血糖リスク低減、QOL向上です。デメリットは費用、皮膚トラブルリスク、機器操作の習得が必要な点です。
Q7. ポンプ療法は痛みますか?
カニューレ挿入時に一瞬の痛みがありますが、挿入後はほとんど痛みを感じません。メディセーフウィズは自動挿入器で針が見えにくく、不安を軽減できます。
Q8. 寝返りを打っても大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。ポンプ本体やパッチは柔軟な素材で作られており、日常生活や就寝中の動きに耐えられる設計になっています。
Q9. お風呂やプールは入れますか?
多くの機種は防水仕様ですが、長時間の水浴や温泉、サウナでは外す必要がある場合があります。機種ごとに注意点が異なるため、導入時に詳しく指導します。
Q10. ポンプで夜間低血糖を予防できますか?
予防できます。深夜のベーサルレートを時間帯ごとに細かく設定でき、SAPではCGMの低血糖予測アラートで自動的にインスリン注入を一時停止します。
Q11. 旅行や出張中も使えますか?
使えます。予備の消耗品を十分に持参してください。時差のある場合はベーサル設定の調整が必要です。飛行機ではポンプをX線検査に通す際の申告が必要な場合があり、診断書も発行できます。
Q12. インスリンポンプ導入の条件は?
医師による適応評価と保険申請が必要です。導入前には操作教育や低血糖対応のトレーニングを受けていただき、導入後も定期的なフォローアップ受診が必須です。
監修・執筆
【監修】しもやま内科 院長 下山立志
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・研修指導医。内科専門医。船橋市で地域密着の糖尿病診療を提供し、1型糖尿病のインスリンポンプ療法・SAP療法の導入からフォローアップまで一貫して対応。患者さんのライフスタイルや価値観を尊重した治療選択を大切にしています。
最終更新日:2026年8月23日
当院では、メディセーフウィズ・MiniMed 780Gの両方に対応し、1型糖尿病・2型糖尿病の方に最適なポンプ療法を提案しています。保険申請や導入教育も一貫してサポートします。対面診療とオンライン診療(保険適用)を組み合わせて、遠方の方もフォローしています。まずはお気軽にご相談ください。
お電話でのご相談(047-467-5500)
※Web予約は行っておりません。お手数ですが診療時間内にお電話ください。
対面診療とオンライン診療(保険適用)を組み合わせて、遠方の方もフォローしています。
最終更新日:2026-08-23
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。