糖尿病内科

糖尿病の飲酒で低血糖が長引く理由|寝酒・翌朝のふらつき対策と受診目安

20/02/2016

🔎 要点まとめ

  • 飲酒後は低血糖が遷延しやすく、特に空腹の飲酒・寝酒・翌朝に起こりがち。
  • 理由は、アルコール分解で生じるNADH増加により糖新生が抑制され、肝グリコーゲンも枯渇しやすいから。
  • インスリン・SU薬(グリメピリド等)使用中、高齢・肝疾患・低栄養ではリスク増。
  • 症状:手のふるえ、冷汗、動悸、強い空腹感、集中できない、言動がぼんやり等(酩酊と紛らう)。
  • 対処:ブドウ糖10–20g→15分様子→改善なければ繰り返し。飲み込めない/意識障害は119番
  • 予防:食べながら飲む・寝酒は避ける・就寝前に点検。心配な方は当院へご相談を。

結論:飲酒後は低血糖が長引きやすい。軽食+早めの相談を

飲酒後の低血糖が長引くのは、肝臓がブドウ糖を作って放出する働きが抑えられやすいからです。特に空腹の飲酒・寝酒・翌朝は要注意です。

アルコールは血糖を上げるどころか、条件によって低血糖を引き起こしやすくします。特に「空腹での飲酒」「寝酒」「翌朝の活動前」は要注意です。繰り返す場合や強い症状があれば、自己判断せず受診してください。

なぜ起こる?──肝の糖新生が止まり、グリコーゲンも尽きる

  • アルコールは肝臓で分解される際にNADHが増加します。NADHが増えると、乳酸やアラニン等からブドウ糖を作る糖新生が抑制されます。
  • さらに飲酒と断食が重なると、肝グリコーゲン(貯蔵糖)が不足。血糖を保つ力が落ちます。
  • その結果、血糖が下がりやすく、しかも回復に時間がかかる(遷延)ことがあります。

起きやすい状況(リスク因子)

  • 空腹の飲酒/寝酒・翌朝(就寝中は気づきにくい)
  • 高齢・低体重・低栄養肝疾患、発熱・疲労・運動後
  • 糖尿病治療中:インスリン、SU薬(グリメピリド等)は特に注意。グリニドでも起こり得ます。DPP-4・GLP-1・SGLT2・メトホルミン単剤は低血糖は起こしにくい薬ですが、アルコール多飲や併用状況でリスクが上がることがあります。
  • β遮断薬内服中は動悸などの自律神経症状が出にくく、気づくのが遅れることがあります。

酩酊との見分け:低血糖のサイン

共通点も多いのですが、次のような「低血糖らしさ」に注意してください。

  • 手のふるえ、冷汗、動悸、強い空腹感、口数が減る・反応が遅い
  • 頭痛、集中力低下、ことばが出にくい、ふらつき
  • 家庭用血糖測定器があれば、すぐ測定(70 mg/dL未満は低血糖)

応急処置(ご本人・ご家族向け)

意識がはっきりしていて飲み込める場合

  1. ブドウ糖10–20g(市販のブドウ糖3–4錠、または砂糖大さじ1強)を摂取。飲料ならオレンジジュース等を150–200mL。
  2. 15分休んで症状の改善を確認。改善が乏しければ同量をもう一度
  3. 回復後は、吸収のゆるやかな糖質(おにぎり・パン・ビスケット等)を少量追加。

飲み込めない/意識障害がある場合

  • 119番。無理に口から入れない(誤嚥の危険)。回復体位(横向き)で見守る。
  • インスリン治療でグルカゴン注射キットがある場合は、説明書に沿って使用。

その後の注意

  • SU薬内服中は再低血糖(遅れて再燃)に注意し、数時間は近くで見守る。
  • 当日は車の運転・入浴・飲酒の継続は避ける

予防:今日からできる工夫

  • 食べながら飲む/空腹で飲まない/寝酒は避ける
  • 就寝前に低血糖症状の点検と、枕元にブドウ糖を準備
  • 連日の多量飲酒を避け、量は控えめに(下表の純アルコール20gが目安)
  • 薬の調整が必要な方は、自己判断で増減せず主治医へ相談

純アルコール換算(目安)

種類 純アルコール
ビール(5%) 中瓶500mL 約20g
ワイン(12%) グラス180mL 約17g
日本酒(15%) 1合180mL 約22g
焼酎(25%) 110mL 約22g

※体格や持病・薬によって許容量は変わります。控えめを基本に。

受診の目安

  • 意識障害・けいれん・強い吐き気がある、または飲み込めない → 救急要請
  • 低血糖症状が繰り返す/翌朝に頻発する
  • 糖尿病治療中で飲酒と低血糖の両立が不安・自己調整が難しい

しもやま内科でできること

  • 低血糖の発生状況の整理・原因同定(生活・薬・肝機能など)
  • 血糖自己測定/CGMの導入と使い方指導
  • 薬剤の安全な見直し(インスリン・SU薬の用量調整等)
  • 栄養相談・減酒支援、ご家族向け応急手順の共有

飲酒後のふらつき・冷汗が続くときは早めにご相談ください。

よくある質問(FAQ)

  • 糖尿病の人はお酒を飲んでもいいですか?
    量と飲み方次第です。空腹で飲まない/寝酒を避ける/飲酒日は低血糖に備えるのが基本です。インスリンやSU薬を使用中の方は、主治医と方針を決めておくと安全です。
  • なぜ飲酒で低血糖が「長引く」ことがあるのですか?
    アルコール分解の影響で、肝臓がブドウ糖を作って放出する働き(糖新生)が抑えられ、さらに空腹が重なると肝グリコーゲンが枯渇しやすいためです。
  • 寝酒の翌朝にフラつきます。低血糖でしょうか?
    可能性があります。冷汗・手のふるえ・強い空腹感があれば低血糖を疑います。血糖測定が可能なら測定し、難しければブドウ糖やジュースで対処し、改善が乏しければ受診してください。
  • インスリンやSU薬(グリメピリドなど)使用中の飲酒で特に注意することは?
    再低血糖(遅れて再燃)が起こり得ます。飲酒日は「枕元にブドウ糖」「就寝前の確認」「単独で寝ない」など、見守りを含めた安全策が重要です。
  • 低血糖のとき、家にあるもので何を摂ればいいですか?
    まずブドウ糖10–20gが基本です。代替としてオレンジジュース等の糖分を含む飲料150–200mL、砂糖大さじ1強などを目安にします(飲み込める場合)。
  • 救急車を呼ぶ目安はありますか?
    飲み込めない/意識がもうろう/けいれんなどがあれば119番です。無理に口から入れないでください(誤嚥の危険)。
  • どのくらい飲むと危ないですか?
    個人差がありますが、純アルコール20g(ビール中瓶1本)でも条件次第で低血糖は起こり得ます。空腹・寝酒・運動後・肝機能低下・高齢ではより注意が必要です。

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執筆・監修

下山 立志(しもやま たつし)/しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医|日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医|日本循環器学会 循環器専門医|日本老年医学会 老年病専門医・指導医|日本甲状腺学会 甲状腺専門医

臨床経験(要旨)

  • 糖尿病・甲状腺を中心とする内科外来での血糖管理、低血糖対応、CGM 指導、薬剤調整
  • 生活習慣・飲酒に関する安全な指導と再発予防支援

参考文献(抜粋)

  1. American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes(最新版)
  2. 日本糖尿病学会 編『糖尿病診療ガイドライン』
  3. 内科学書(低血糖・アルコール代謝の章)ほか総説

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