インスリンの働きがわかると糖尿病がわかる
糖尿病は、インスリンの「血糖値を下げる働き」が落ちるために起こります。インスリンの分泌が落ちている場合(1型糖尿病など)、インスリンが分泌されているけれども効いていない場合(2型糖尿病:インスリン抵抗性がメイン)の2つに分けることができます。
インスリンって何?
インスリンは膵臓から出されるホルモンです。血糖を下げることができる唯一のホルモンです。
食事を摂ると血糖が上がりますがすぐにインスリンも出され血糖値は下がります。普通の人は、空腹時血糖は100mg/dl未満です。食後でも140mg/dlを超えません。この狭い範囲に血糖がうまくコントロールされているのはインスリンのおかげと言って良いでしょう。
人類の歴史は、その大半が飢餓との戦いでした。狩猟・採集の時代を思い出してください。獲物が取れれば食事にありつくことができますが、食料が得られなければ空腹の状態が続きます。空腹だからといって血糖値が下がってしまえば動けなくなり、そのまま死んでしまいます。何日も食べない状態でも狩りをせねばなりませんし、敵に襲われれば逃げねばなりません。そのためには、飢餓状態でも血糖を上げる機構が必要です。そんなわけで、ヒトを含む動物には血糖値を上げるホルモン(インスリン拮抗ホルモンと言います)が複数備わっています。低血糖を防ぐためです。
一方で、血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。3食しっかり食べられて、しかも美味しくてカロリーが高い食べ物がいくらでも手にはいる、そんな状況はこれまで想定されていなかったに違いありません。膵臓のインスリン1系統だけでは血糖値を下げられない人が続出する飽食の時代の到来です。
皮肉なことですが、腹いっぱい食べられる時代になって、この病気が増えてきたのです。
食後の血糖とインスリンの流れ
正常なヒトがご飯を食べて、食後に血糖が上がらないワケ
図をご覧下さい。
ご飯に含まれるデンプン(黄色い○)はブドウ糖が多数連なったものです。
ご飯は咀嚼され、胃を経て小腸に運ばれます。
唾液、膵液、腸液の消化酵素(アミラーゼ)によりブドウ糖まで分解されます(緑の△)。
ブドウ糖は小腸に達し、毛細血管から体内に取り込まれます。これから血糖が上がろうとするところです。
インスリンが正常に分泌されると、食後の血糖上昇はわずかです。
ご飯を食べて、小腸で吸収され、血糖が上がり始めると、たちまち膵臓からインスリンが分泌されます(赤いダイヤモンド)。
インスリンは血流に乗って体内の各組織に行き渡り、ブドウ糖を各組織に取り込ませます。そのため、血糖上昇はわずかです。
ブドウ糖の取り込みとは?
インスリンは肝臓・骨格筋・脂肪細胞で作用する
ブドウ糖が取り込まれる先は、肝臓、筋肉(骨格筋)、脂肪(脂肪細胞)です。
血液中のブドウ糖は、インスリンによって肝臓、骨格筋、脂肪細胞に取り込まれます。
肝臓に取り込まれたブドウ糖はグリコーゲンに変えられ、貯蔵されます。そのようにしてインスリンは血糖を下げています。絶食時にブドウ糖に戻されて体内に放出され、低血糖にならないようになっています。
骨格筋に取り込まれたブドウ糖はエネルギー源として利用されます。
脂肪細胞に取り込まれたブドウ糖は脂肪として蓄えられます。
インスリンはこうやって血糖を下げています。
インスリンが足りていない、効果が不十分な場合にはどうなる?
インスリンが足りない(インスリン分泌不足)、あるいはインスリンが効いていない(インスリン抵抗性)の場合には、上記のようになりません。
血液中から肝臓、筋肉、脂肪細胞にブドウ糖が行ってくれないため、いつまでも血液中にブドウ糖が残る(=血糖値が下がらない)のです。これが、糖尿病患者さんの血糖が下がらない理由です。
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