「塩分を減らせって言われたんですが、味が薄くて食べられないんです…」
なぜ糖尿病・高血圧の人は減塩が必要なのか
塩分(食塩)を取りすぎると、体内にナトリウムが溜まり、血液の水分量が増えて血圧が上昇します。糖尿病の方は、すでに血管が傷つきやすい状態にあるため、高血圧が加わると心筋梗塞や脳卒中のリスクが大幅に増加します。
また、糖尿病性腎臓病(DKD)がある方は、腎臓がナトリウムをうまく排出できないため、塩分の影響を受けやすくなります。減塩は、血圧コントロール・腎臓保護・合併症予防のために不可欠です。
減塩の目標値
| 対象 | 1日の塩分目標 | 目安(大さじ) |
|---|---|---|
| 一般成人 | 6g以下 | 小さじ2杯程度 |
| 高血圧・糖尿病患者 | 6g以下(理想は5g) | 小さじ1.5〜2杯程度 |
| 糖尿病性腎臓病(DKD)の方 | 医師の指示に従う(3〜5gの場合も) | 医師・管理栄養士に相談 |
日本人の平均塩分摂取量は約10g/日と言われており、目標の6gに達するには意識的な工夫が必要です。
減塩のコツ① 調味料を知る〜塩分の隠れ家〜
塩分は「塩」だけでなく、醤油・味噌・めんつゆ・コンソメ・ケチャップなど、さまざまな調味料に含まれています。使っているつもりのない調味料が、実は塩分の主な供給源になっていることもあります。
主要調味料の塩分量(1杯あたり)
| 調味料 | 塩分量 | 減塩のポイント |
|---|---|---|
| 塩(小さじ1杯) | 約5.5g | 最初に塩を減らす |
| 醤油(大さじ1杯) | 約2.5g | 減塩醤油に変更、量を半分に |
| 味噌(大さじ1杯) | 約2.0g | 味噌汁は1杯に抑える、味噌の量を減らす |
| めんつゆ(3倍濃縮・大さじ1杯) | 約1.5g | 薄めすぎ注意、減塩めんつゆを使用 |
| コンソメ顆粒(小さじ1杯) | 約1.5g | 無塩・減塩タイプを使用 |
| ケチャップ(大さじ1杯) | 約0.8g | ハンバーグ・卵焼きでの使いすぎ注意 |
| マヨネーズ(大さじ1杯) | 約0.3g | 塩分は低いがカロリー注意 |
意外と塩分が多い食品
- パン:1枚(6枚切り)で塩分約0.8g。朝食で3枚食べると2.4gも摂取。
- うどん・そばのつゆ:1杯で塩分約2g。汁ごと飲むと塩分オーバー。
- 漬物:たくあん1切れで塩分約1g。
- 加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ):ハム3枚で塩分約2g。
- カップ麺・レトルト食品:1食で塩分4〜6g。減塩とは程遠い。
- チーズ:プロセスチーズ1枚で塩分約0.6g。
減塩のコツ② 味が薄くならない工夫
塩分を減らすと「味が薄い」と感じる方が多いですが、塩分以外の「うま味」を活用することで、満足感のある食事が作れます。
塩分の代わりに使える調味料・食材
| 代用食材・調味料 | 効果 | 具体的な使い方 |
|---|---|---|
| 酢・レモン汁 | 酸味で味に引き締まりを出す | 炒め物の仕上げに数滴、サラダドレッシングに活用 |
| ごま油・オリーブオイル | 香りで満足感アップ | 仕上げに少量回しかける、和え物に |
| 生姜・にんにく | 辛味成分で味にアクセント | 炒め物・煮物の香り付け、おろして添える |
| 柚子胡椒・山椒 | ピリッとした刺激で塩分を感じさせない | 鍋物・煮物・焼き魚に少量 |
| かつお節・昆布・しいたけ | うま味成分(グルタミン酸)でコクを出す | だしの取り方を工夫、トッピングとして活用 |
| 香草(パセリ・バジル等) | 香りで味わい深く | 仕上げに散らす、ソースに混ぜる |
| ネギ・みょうが・大葉 | 薬味の香りと食感で満足感 | たっぷりトッピング、薬味として添える |
| 炒りごま・刻みのり | 食感と風味でアクセント | ご飯・サラダ・スープに散らす |
実践例:減塩味噌汁
味噌汁は日本人の食卓に欠かせませんが、味噌の塩分が気になる方は以下の工夫を試してみてください。
- 味噌の量を半分にし、かわりにかつお節や干ししいたけでうま味を補う
- 昆布だしを使うと、塩分を抑えてもコクのある味噌汁に
- 具材をたっぷり入れる(豆腐、わかめ、大根、ほうれん草など)→ 具材自体の味で満足感アップ
- 仕上げに小ねぎや三つ葉を添えると香りで塩分を感じにくくなる
減塩のコツ③ 外食での工夫
外食は自炊より塩分が多くなりがちです。レストランの料理は平均で1食あたり塩分4〜6g含まれることもあります。
外食で減塩するポイント
- 汁物・スープは残す:つゆやスープの半分〜全部を残すだけで、塩分1〜2g減らせる
- 麺類はつゆを半分:うどん・そば・ラーメンは、つゆを半分残すか、スープ割りで調整
- 漬物・お新香は控えめ:小鉢の漬物は塩分が濃い。一口だけにする、または辞退する
- 定食ならご飯を少なめ:おかずの塩分をご飯で流し込む量を減らす
- 味の濃い料理と淡白な料理を組み合わせる:例えば、焼き魚(塩分控えめ)+おひたし(無塩)のバランス
- コンビニ弁当は「減塩」表示の商品を選ぶ:塩分30%カット商品も増えている
注意が必要な外食メニュー
| メニュー | 推定塩分量 | 代替案 |
|---|---|---|
| ラーメン(汁ごと) | 5〜7g | つけ麺(つゆ半分)または塩分控えめの店を選択 |
| カレーライス | 3〜5g | ライス少なめ、ルー半分、野菜を追加 |
| チャーハン | 3〜4g | 半分にする、または塩分控えめの店で |
| ハンバーグ定食 | 3〜4g(デミグラスソース含む) | ソースを半分、漬物を辞退 |
| お好み焼き・たこ焼き | 3〜5g(ソース・マヨネーズ含む) | ソース控えめ、マヨネーズなし |
減塩の効果〜どれくらいで変化が出る?〜
減塩を始めても、「すぐに効果が出るわけではない」と諦めてしまう方がいます。しかし、正しく減塩を続ければ、数週間で変化を実感できる方が多いです。
減塩の効果と目安
| 期間 | 期待できる効果 |
|---|---|
| 1〜2週間 | 味覚が慣れてきて、塩分の少ない食事でも満足感が出てくる |
| 2〜4週間 | 血圧が5〜10mmHg低下する方が多い(個人差あり) |
| 1〜3か月 | 朝の顔のむくみが軽減、体重が1〜2kg減少(水分による体重変動) |
| 3〜6か月 | 降圧薬が減量できる可能性(医師の判断が必要) |
| 長期(1年以上) | 心不全・脳卒中・心筋梗塞のリスク低減 |
減塩は継続が重要です。最初は味が薄く感じても、2週間ほどで舌の感覚が変わってきます。「減塩=まずい」は一時的なものです。
減塩でお悩みの方へ〜当院でのサポート〜
しもやま内科では、糖尿病・高血圧・糖尿病性腎臓病(DKD)の方に向けた食事指導を行っています。減塩だけでなく、糖質管理・タンパク質制限など、一人ひとりの状態に合わせた包括的な食事アドバイスを提供しています。
- 個別の食事指導:生活スタイル・好みの味・家族構成に合わせた減塩プランの提案
- 調味料の見直し:ご家庭にある調味料を一緒に確認し、減塩版への切り替えをサポート
- 外食の工夫:よく行くレストラン・コンビニでの具体的な選び方をアドバイス
- 血圧・血糖値のモニタリング:減塩の効果をデータで確認
60代の女性患者さんが、そう愚痴をこぼしてきました。高血圧と糖尿病を合併していて、医師から「塩分を控えて」と言われたそうですが、「塩を減らすと料理がまずくて、続かないんです」と困っていました。
実は、塩分を減らすのは「味を我慢する」ことではありません。ちょっとした工夫で、塩分を減らしながらも美味しく食べることができます。当院では、患者さんに「続けられる減塩」を提案しています。
最終更新日:2026-06-18
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。