下垂体の病気とホルモン異常|下垂体腺腫・ホルモンの出すぎ/不足の原因と検査|しもやま内科(船橋市)

🔊 このページの要点

下垂体は「ホルモンの司令塔」として、甲状腺や副腎、性ホルモン、成長ホルモンなど全身のホルモンバランスを調整しています。
MRIで下垂体腺腫と指摘された場合でも、多くは良性腫瘍で、ホルモン検査や画像検査の結果を整理しながら、手術・薬物治療・経過観察などの方針を判断していきます。
このページでは、下垂体の役割と代表的な病気、しもやま内科での検査・紹介の流れについてご説明します。

下垂体とホルモン異常について説明する日本人医師のイメージ(下垂体腺腫とホルモン精査)
下垂体の病気とホルモン異常について、TSH・GH・ACTH・PRLなどのホルモンと脳内の下垂体を示したイメージ図

「頭のMRIで下垂体に影があると言われた」「プロラクチンや成長ホルモンが高いと言われた」「ホルモンの精査を勧められた」――
下垂体の病気は耳慣れない名前も多く、どうしたら良いのか不安になりやすい分野です。

下垂体は、全身のホルモンバランスを調整する重要な臓器です。
一方で、下垂体にできる腫瘍(下垂体腺腫)の多くは良性であり、
適切な検査と治療計画を立てることで、生活や将来の見通しを大きく改善できるケースも少なくありません。
このページでは、下垂体の働きと代表的な病気、検査の流れ、当院での対応についてまとめました。


下垂体とは?どんな役割の臓器か

下垂体の場所と大きさ

下垂体は、脳の底部にある小さな豆粒ほどの内分泌腺で、骨に囲まれた「トルコ鞍」というくぼみの中にあります。
そのすぐ上には視神経が走っており、腫瘍が大きくなると視野障害を起こすことがあります。

前葉ホルモン・後葉ホルモンの種類

下垂体は大きく前葉後葉に分かれ、それぞれから次のようなホルモンが分泌されています。

  • 成長ホルモン(GH): 身長の伸びや筋肉・骨の代謝、血糖にも関与
  • プロラクチン(PRL): 乳汁分泌、性ホルモンバランス
  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH): 甲状腺ホルモンの量を調節
  • 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH): 副腎からコルチゾールを分泌させる
  • 性腺刺激ホルモン(LH・FSH): 女性の排卵・月経周期、男性の精子・テストステロン産生
  • 抗利尿ホルモン(ADH): 尿の量を調節し、水分バランスを保つ(主に視床下部で作られ、下垂体後葉から放出)

これらのホルモンが「出すぎる」「足りない」ことにより、さまざまな症状が出てきます。


下垂体の病気で起こりやすい症状

腫瘍そのものによる症状(圧迫症状)

下垂体腺腫が大きくなると、周囲の神経や脳を圧迫して次のような症状が出ることがあります。

  • 頭痛が続く・以前より増えた
  • 視野の端が見えにくい(両側の外側が欠けるなど)
  • 物が二重に見える・視力低下

ホルモンが「出すぎる」場合の症状

  • プロラクチン過剰: 月経不順・無月経、不妊、乳汁分泌、性欲低下 など
  • 成長ホルモン過剰(先端巨大症): 手足や顔が大きくなる、指輪や靴がきつくなる、関節痛、糖尿病・高血圧が悪化 など
  • ACTH過剰(クッシング病): 顔が丸くなる、中心性肥満、皮下出血しやすい、高血圧・糖尿病・骨粗鬆症 など

ホルモンが「足りない」場合の症状

  • 全身のだるさ、食欲低下、体重減少
  • 低血圧・低血糖
  • 月経不順・無月経、不妊、性欲低下
  • 体毛が減る、筋力低下、冷えやすい など

ホルモン不足が急激に進むと、命に関わる副腎不全低ナトリウム血症を起こすこともあります。


代表的な下垂体の病気

下垂体腺腫(良性腫瘍)

下垂体腺腫は、多くが良性の腫瘍で、ホルモンを過剰に出すタイプ
ホルモンを出さない(非機能性)タイプに分けられます。

  • プロラクチノーマ: プロラクチンが高くなる腺腫。月経不順・無月経・不妊・乳汁分泌などで見つかることが多い
  • 成長ホルモン産生腺腫(先端巨大症): 手足や顔貌の変化、関節痛、糖尿病・高血圧・睡眠時無呼吸などを伴う
  • ACTH産生腺腫(クッシング病): 顔が丸くなる、皮膚が薄くなる、打ち身であざができやすい、血圧・血糖上昇など
  • 非機能性腺腫: ホルモンは過剰に出さず、腫瘍の大きさによる頭痛や視野障害で見つかることが多い

下垂体機能低下症

腫瘍の圧迫や、脳外傷・放射線治療・炎症などが原因で、複数の下垂体ホルモンが不足する状態です。
放置すると、強い倦怠感・低血圧・低血糖・低ナトリウム血症などを引き起こします。

下垂体卒中(下垂体アポプレキシー)

大きな下垂体腺腫の中で急に出血や梗塞が起こり、突然の激しい頭痛・嘔気・視力低下などが出る病態です。
救急対応が必要になることもあり、こうした症状が急に出た場合は、速やかな受診が必要です。

下垂体偶発腫(インシデンタローマ)

他の理由で撮影したMRIで、たまたま小さな下垂体腫瘍が見つかることがあります。
すぐに治療が必要なことは多くありませんが、ホルモン検査や視野検査を行い、
「本当に何もしなくてよいのか」「どのくらいの間隔で経過をみるか」を判断していきます。


検査の進め方:当院で行う評価

血液・尿によるホルモン検査

疑われる病気に応じて、次のような検査を組み合わせます。

  • プロラクチン、成長ホルモン、IGF-1
  • ACTH、コルチゾール
  • TSH、FT3・FT4
  • LH・FSH、エストロゲン/テストステロン
  • ナトリウム、浸透圧、尿量など(尿崩症が疑われる場合)

必要に応じて、負荷試験(ホルモンを刺激・抑制する検査)を行うこともありますが、その多くは
大学病院・基幹病院と連携して実施します。

画像検査(MRIなど)はどこで行うか

下垂体腫瘍の評価には脳MRIが基本となります。
すでにMRI結果をお持ちの方は、画像データやレポートを一緒にお持ちください。
まだ撮影されていない場合は、連携している医療機関へ紹介し、撮影を依頼します。

どのような場合に専門病院へ紹介になるか

次のような場合には、脳神経外科・内分泌内科などを有する基幹病院をご紹介します。

  • 視野障害や視力低下がある
  • 腫瘍が大きく、視神経への圧迫が疑われる
  • 成長ホルモンやACTHなどのホルモン過剰が明らかで、手術が第一選択と考えられる場合
  • 下垂体卒中が疑われる、重いホルモン不足(副腎不全など)がある

しもやま内科で対応できること・地域の基幹病院との連携

しもやま内科では、次のような形で下垂体の病気に関わる診療を行っています。

  • 健診異常や他科からの紹介で見つかった下垂体腫瘍の初期評価
  • ホルモン検査を中心としたスクリーニングと、治療方針の整理
  • 手術や特殊な負荷試験が必要なケースの、近隣基幹病院(脳神経外科・内分泌内科)への紹介
  • 手術や専門治療が一段落した後の、糖尿病・脂質異常症・骨粗鬆症などの全身管理

「MRIで影と言われたが、どこまで精査すべきか」「いきなり大学病院に行くべきか迷う」といった場合も、
まずは総合内科・内分泌の視点から状況を整理し、必要な検査・紹介先を一緒に検討します。


「こんなときは受診をおすすめします」

  • 頭部MRIで「下垂体腺腫」「下垂体に小さな影」と言われた
  • プロラクチンや成長ホルモン、ACTHなどの異常を指摘された
  • 月経不順・不妊・乳汁分泌などがあり、ホルモン異常が心配
  • 手足や顔つきが変わってきたと言われる、高血圧や糖尿病が悪化している
  • 視野の端が見えにくい、頭痛が続くなどの症状がある

症状がはっきりしない段階でも構いません。
「下垂体の病気かどうかをまず整理したい」という段階でのご相談もお受けしています。


よくある質問(FAQ)

Q1. MRIで小さな下垂体腺腫と言われました。すぐに手術が必要ですか?

A. 小さな腺腫(マイクロアデノーマ)の多くは、すぐに手術が必要になるわけではありません。
視野障害がないか、どのホルモンをどの程度出しているか、他のホルモンが不足していないかなどを確認し、
経過観察・薬物治療・手術のどれが適切かを判断していきます。

Q2. プロラクチンが高いと言われました。必ず脳腫瘍(プロラクチノーマ)なのでしょうか?

A. プロラクチン高値の原因は、下垂体腺腫だけではありません。
一部の精神科薬・胃薬、甲状腺機能低下症、慢性腎不全などでも高くなることがあります。
血液検査やお薬の確認、必要に応じてMRIを組み合わせて原因を評価していきます。

Q3. 先端巨大症(成長ホルモンの出すぎ)はどんな症状で気づきますか?

A. 手足が大きくなる、指輪や靴のサイズが合わなくなる、顔つきが変わる(あごや額が張る)といった変化のほか、
関節痛、いびき・睡眠時無呼吸、高血圧や糖尿病の悪化などで気づかれることがあります。
変化は少しずつ進むため、昔の写真と見比べて気づくこともあります。

Q4. 下垂体の病気は、妊娠や出産に影響しますか?

A. プロラクチンや性腺刺激ホルモンの異常は、排卵や精子の産生に影響し、不妊の原因になることがあります。
一方で、適切な治療により妊娠・出産が可能になるケースも多くあります。
妊娠希望がある場合は、その旨を含めてご相談ください。

Q5. 下垂体腺腫はがんですか?

A. 一般的な下垂体腺腫は良性腫瘍であり、いわゆる「がん」とは異なります。
ただし、視神経を圧迫したり、ホルモンを過剰・不足させたりすることで体に影響を及ぼすため、
放置せずに定期的なフォローが必要です。

Q6. どのくらいの間隔でMRIを撮り直す必要がありますか?

A. 腫瘍の大きさや性質、ホルモンの異常の有無によって異なります。
初回は半年~1年程度の間隔でMRIを再検し、変化が少なければその後の間隔を延ばしていくこともあります。
個々の状況に合わせて、フォローアップのスケジュールを相談して決めていきます。

Q7. 突然の激しい頭痛や視力低下があった場合、どうしたらよいですか?

A. 下垂体卒中(腫瘍内出血など)やくも膜下出血など、緊急性の高い病気の可能性があります。
そのような症状が出た場合は、救急要請や救急外来受診が必要です。
普段から下垂体腺腫を指摘されている場合でも、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。


船橋市周辺で下垂体の病気・ホルモン異常の相談先をお探しの方へ

しもやま内科は、千葉県船橋市にある内科クリニックです。
糖尿病や甲状腺疾患などの内分泌疾患に加え、下垂体腫瘍やホルモン異常の初期評価・フォローも行っています。

  • MRIで下垂体腺腫・インシデンタローマを指摘された方
  • ホルモン検査の異常を説明され、治療方針に悩んでいる方
  • 大学病院や基幹病院での治療後、かかりつけ医でのフォロー体制を検討している方

船橋市・習志野市・八千代市・鎌ケ谷市など近隣エリアからの受診も多くあります。
受診をご希望の場合は、代表電話 047-467-5500 までお問い合わせください(Web予約は行っておりません)。

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医

糖尿病、甲状腺、副腎・下垂体など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。