内分泌内科

橋本病と妊娠中のチラーヂン調整|薬の量は増えるの?専門医がわかりやすく解説

17/09/2025


妊娠中に「チラーヂン(一般名:レボチロキシン)の量は増えるのですか?」と心配される方は少なくありません。
妊娠すると血液量が増え、赤ちゃんの発育にも母体の甲状腺ホルモンが必要になるため、薬の量を調整するケースがよくあります。
ただし、増えるかどうか・どのくらい増えるかは人によって異なります。大切なのは、自己判断で量を変えず、定期的な採血で医師と一緒に確認することです。
このページでは、妊娠中のチラーヂン調整について、患者さんの不安に寄り添いながら、専門医がわかりやすく解説します。

妊娠中のチラーヂンは量が増えることがあります。自己判断せず、医師と定期的に採血で確認して調整することが大切です。

要点まとめ

  • 妊娠中は血液量増加や胎児の発育によりチラーヂンが増量されることがある
  • 増量の有無・幅は人によって異なる
  • 採血でホルモン値を確認し、医師が調整することが重要
  • 自己判断で増減するとリスクがあるため避ける

橋本病と妊娠中のチラーヂン調整|薬の量は増やすの?専門医が解説

なぜ妊娠中に薬の必要量が変わるのか

  • 妊娠中は血液量が増え、薬の血中濃度が変化します。
  • 胎児の発育に母体の甲状腺ホルモンが必要です。
  • hCGの作用などホルモン環境が変化するため、TSHや甲状腺ホルモンのバランスが変わることがあります。

どのくらい増えることが多いのか

一般に、妊娠初期にはチラーヂンの必要量が25〜30%増えることが多いといわれています。ただし、すべての方に当てはまるわけではなく、人によって必要量は異なります。

調整は必ず医師が行う理由

  • TSHやFT4の採血で、ホルモンの状態を4〜6週ごとに確認します。
  • 自己判断で薬を増減すると、甲状腺機能異常を招く危険があります。
  • 妊娠中は少しの変動が母体・胎児に影響するため、医師の指示が不可欠です。

よくある質問(FAQ)

薬は増えるのが普通ですか?

妊娠初期に増える方は多いですが、全員ではありません。血液検査の結果を見て判断します。

薬を減らすこともありますか?

妊娠後期や出産後は必要量が減るケースもあります。定期的な検査で確認します。

増量した薬は出産後はどうなるのですか?

出産後は多くの方が妊娠前の量に戻ります。ただし産後甲状腺炎に注意が必要です。

飲み忘れたらどうすればいいですか?

気づいたときに1回分を服用してください。2回分をまとめて飲むのは避けてください。

まとめ:安心して妊娠・出産を迎えるために

妊娠中のチラーヂン調整は、多くの方にとって必要なプロセスです。
採血でホルモン状態を確認しながら適切に量を調整すれば、安心して妊娠・出産を迎えることができます。
不安を感じたときは自己判断せず、必ず主治医に相談してください。

👉 妊娠前から産後までの全体像については、橋本病と妊娠・出産のページもご覧ください。

👨‍⚕️ この記事の監修医師


下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。
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  • 電話予約が混み合うことがあります。つながらない場合は時間をおいておかけ直しください。
  • 妊娠中の方は、受診時に母子健康手帳をご持参ください。


📚 参考文献・ガイドライン

  1. 日本甲状腺学会.甲状腺疾患診療ガイドライン 2024(妊娠・授乳に関する章).2024.
  2. Alexander EK, Pearce EN, Brent GA, et al. 2017 Guidelines of the American Thyroid Association for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease During Pregnancy and the Postpartum. Thyroid. 2017;27(3):315–389.
  3. De Groot L, Abalovich M, Alexander EK, et al. Management of Thyroid Dysfunction during Pregnancy and Postpartum: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2012;97(8):2543–2565.
  4. Korevaar TIM, Medici M, Visser TJ, Peeters RP. Thyroid disease in pregnancy: new insights in diagnosis and clinical management. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017;5(8):660–672.
  5. PMDA(医薬品医療機器総合機構).チラーヂンS(レボチロキシン)添付文書.最新版を参照.

本文の記載は上記ガイドライン・レビューに準拠し、患者さん向けにわかりやすく再構成しています。個別の用量調整は検査結果や臨床状況により異なるため、自己判断は行わず主治医の指示に従ってください。

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