🔎 要点まとめ
- 潜在性甲状腺機能低下症は妊娠希望時に早期診断が重要
- 妊娠前・妊娠中ともにTSH目標値が定められている
- 抗TPO抗体陽性例では流産・早産リスク上昇の報告も
- 適切なチラーヂン補充で妊娠率向上が期待できる
- しもやま内科では甲状腺専門医が産婦人科と連携して管理します
妊娠希望の方、妊活中の方は甲状腺ホルモンのバランスを整えることが大切です。潜在性甲状腺機能低下症は自覚症状が乏しくても流産や妊娠率低下に関連する可能性があるため、専門医による事前評価が重要です。

潜在性甲状腺機能低下症とは?
TSHが正常上限をわずかに超えた状態(通常 2.5〜4.0程度)で、FT4は正常範囲内に保たれている状態を指します。明確な症状はなく「隠れた甲状腺機能低下症」と呼ばれます。
橋本病(慢性甲状腺炎)が背景にある例が多く、抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体が陽性となることが多いです。
なぜ妊娠に影響するの?
- 妊娠初期は胎児の甲状腺が未発達 ➔ 母体の甲状腺ホルモンが胎児の脳神経発達を支える
- 潜在性低下症ではホルモン供給が不足しやすい
- 流産・早産・胎児発育不全・妊娠高血圧のリスク上昇が報告されている
- 不妊治療(体外受精・人工授精)でも成功率低下に関係するとされる
(出典:日本甲状腺学会 妊娠甲状腺ガイドライン2023、伊藤病院、隈病院 妊娠と甲状腺疾患解説より)
妊娠希望時および妊娠中のTSH目標値
日本甲状腺学会 妊娠甲状腺ガイドライン2023では以下の通り目標値が示されています:
- 妊娠前〜妊娠初期(妊娠12週未満):TSH 2.5μIU/mL以下
- 妊娠中期・後期(妊娠12週以降):TSH 3.0μIU/mL以下
- 抗TPO抗体陽性例ではより慎重な管理が推奨されています
必要な検査
- TSH(甲状腺刺激ホルモン)
- FT4(遊離サイロキシン)
- 抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体
- 甲状腺エコー検査
治療方針
- レボチロキシン(チラーヂン)補充療法を行う
- TSH値に応じて少量から開始、段階的に調整
- 治療開始後は4週間おきに採血フォロー
- 妊娠成立後はホルモン需要が増すため追加増量する例が多い
妊娠中のフォローアップ
- 妊娠初期は特に厳格なモニターが必要
- 妊娠中はTSH・FT4を4週ごとにチェック
- 自己判断の中断・減量は厳禁
- 出産後は甲状腺機能が大きく変動するため産後フォローも重要
産婦人科との連携体制
しもやま内科では、くらもちレディースクリニック・船橋市立医療センター産婦人科と緊密に連携し、妊娠前から妊娠中・出産後まで甲状腺管理を総合的にサポートしています。
📄 よくある質問(FAQ)
TSHが正常でも抗体陽性なら治療が必要ですか?
抗体陽性のみではすぐに治療開始とは限りませんが、妊娠希望時は慎重に経過をみます。
チラーヂンを飲み始めたら妊娠しやすくなりますか?
潜在性甲状腺機能低下が補正されると妊娠率が向上する可能性があります。
自己判断で薬を減らしても大丈夫ですか?
危険です。自己判断の休薬・減量は流産・発育不全リスクとなります。
妊娠初期に急にTSHが上がりました
妊娠による甲状腺負荷が増すため早急な用量調整が必要です。すぐ専門医に相談を。
産後はどう管理しますか?
産後甲状腺炎の可能性もあるため、産後も定期的な甲状腺機能チェックが必要です。
妊活・不妊治療中の方はこちらも参考に ▶
甲状腺と不妊治療|妊活・不妊治療で気を付けたいTSH管理
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👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。