🔎 要点まとめ
亜急性甲状腺炎は、首の痛み、発熱、甲状腺ホルモン異常を伴う一過性の破壊性甲状腺炎です。ウイルス感染が原因とされ、治療は消炎鎮痛薬や短期のステロイドが中心となります。無痛性甲状腺炎やバセドウ病との鑑別が重要で、甲状腺専門医による正確な診断が必要です。
亜急性甲状腺炎(Subacute Thyroiditis)は、代表的な甲状腺炎のひとつで、突然の「首の痛み」が特徴です。ウイルス感染後に発症し、特徴的な症状に「甲状腺肥大」「発熱」「動悸」「ホルモン異常」を伴います。数週間で軽快する例が多いですが、早期診断と経過管理が大切です。

最新の診断基準(日本甲状腺学会 2024年改訂)
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 有痛性の破壊性甲状腺炎による甲状腺中毒症 |
臨床所見 | 有痛性甲状腺腫、圧痛 |
検査所見 | 赤沈・CRP高値、FT4高値、TSH低値 |
エコー所見 | 内部低エコー域 |
(出典:日本甲状腺学会『甲状腺疾患診療ガイドライン2024』)
症状の特徴
(出典:日本甲状腺学会『甲状腺疾患診療ガイドライン2024』)
- 首の痛み(飲み込み時・首を動かした時)
- 発熱、倦怠感、筋肉痛
- 甲状腺腫大による圧迫感
- ホルモン異常による動悸・発汗・体重減少
- 後期は一時的に甲状腺機能低下へ移行する場合も
無痛性甲状腺炎との違い
(出典:日本甲状腺学会『甲状腺疾患診療ガイドライン2024』・岐阜赤十字病院甲状腺外来資料)
項目 | 亜急性甲状腺炎 | 無痛性甲状腺炎 |
---|---|---|
痛み | 強い | なし |
発熱 | あり | ほぼなし |
炎症反応(CRP) | 高値 | 正常〜軽度上昇 |
自己抗体 | 通常陰性 | 抗TPO抗体陽性例あり |
治療方針 | 消炎鎮痛・ステロイド | 多くは経過観察 |
治療法
(出典:日本甲状腺学会『甲状腺疾患診療ガイドライン2024』)
- 軽症例:消炎鎮痛薬(ロキソプロフェン等)
- 中等症〜重症例:ステロイド(プレドニゾロン)短期使用
- β遮断薬(プロプラノロール)で動悸・不安感緩和
当院の診療体制
しもやま内科では甲状腺専門医が在籍し、採血・エコー検査を当日実施可能です。最新ガイドラインに沿った正確な診断と適切な経過管理を行っています。
📄 よくあるご質問(FAQ)
亜急性甲状腺炎は命に関わる病気ですか?
基本的には命に関わる病気ではありません。適切な治療で多くは自然に軽快しますが、まれに重症化やホルモン低下が長引く例もあるため早期診断が大切です。
治療しないとどうなりますか?
軽症で自然軽快する例もありますが、放置すると痛みや炎症が長引いたり、ホルモン異常が悪化する場合があります。医師の管理下で経過をみることが重要です。
原因となるウイルスは何ですか?
多くは風邪・上気道炎などのウイルス感染がきっかけになります。具体的なウイルスは特定されない場合が多いです。
バセドウ病や橋本病とは違いますか?
異なります。バセドウ病や橋本病は慢性的な自己免疫疾患ですが、亜急性甲状腺炎はウイルス感染後に一過性に起こる炎症です。
感染が他人にうつることはありますか?
亜急性甲状腺炎自体は感染しません。ただし発症の引き金となった風邪などのウイルスがうつる可能性はあります。
再発することはありますか?
多くは一度の発症で収まりますが、まれに再発する例もあります。体調管理や早期受診が大切です。
痛みが強くて不安です。どれくらい続きますか?
個人差はありますが、数週間で軽減することが多いです。消炎鎮痛薬やステロイドで速やかに痛みを和らげることが可能です。
妊娠中でも治療は受けられますか?
妊娠中は治療薬の選択に注意が必要です。妊娠可能性のある方は早めに甲状腺専門医へご相談ください。
ステロイド治療は副作用が心配です。
短期間の使用であれば副作用は少ないことが多いです。必要最小限の量で管理し、医師が慎重に経過を見ます。
治療費が高額になりませんか?
通常の保険診療内で対応できます。高額になる治療はほとんどありませんのでご安心ください。
甲状腺の腫れが残るのが心配です。
炎症が落ち着くと多くは縮小します。長期間腫大が残る場合は、他の甲状腺疾患の除外も含め専門的評価が必要です。
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👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。