糖尿病の基礎知識|症状・原因・治療法まとめ

糖尿病とは、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が慢性的に高くなる代謝疾患です。初期には自覚症状が乏しい一方、放置すると全身の血管が傷つき、神経障害・網膜症・腎症などの重篤な合併症を引き起こします。このページでは、糖尿病の種類・原因・症状・診断基準・治療法・予防法を、船橋市の糖尿病専門医「しもやま内科」がわかりやすく解説します。



糖尿病とは?——血糖値が高くなる仕組み

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが不足したり、効き目が悪くなることで、血液中のブドウ糖(血糖)が適切に細胞に取り込まれず、血糖値が慢性的に高くなる病気です。

健康な状態では、食事で摂取した炭水化物は消化されてブドウ糖になり、インスリンの働きで筋肉や脂肪などの細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。しかし糖尿病ではこの流れがうまくいかず、血糖が血液中に滞留します。

日本では糖尿病患者さんとその予備群を合わせると約2,000万人(国民の約6人に1人)と推定されており、年々増加傾向にあります(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。



糖尿病の種類|1型・2型・その他の違い

糖尿病は主に以下の種類に分類されます。

1型糖尿病

自己免疫機序により膵臓のインスリンを産生するβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなるタイプです。子どもや若年成人に多く見られますが、成人でも発症することがあります(緩徐進行1型糖尿病)。生涯にわたるインスリン治療が必要で、発症時にはケトアシドーシス(DKA)を伴うことがあります。詳細は1型糖尿病のページをご参照ください。

2型糖尿病

日本人の糖尿病患者さんの約95%を占める最も多いタイプです。インスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」と、膵臓のインスリン分泌能が低下することで発症します。遺伝的な因子に加えて、過食・運動不足・肥満などの生活習慣が大きく関与します。インスリン抵抗性の詳しい解説もご覧ください。

妊娠糖尿病(GDM)

妊娠中に初めて発見または発症する糖代謝異常です。適切に管理しないと母児に影響を及ぼす可能性がありますが、多くの場合、出産後に血糖値は正常化します。ただし、将来2型糖尿病を発症するリスクが高まるため、産後のフォローアップが重要です。詳しくは妊娠糖尿病のページをご参照ください。

その他の糖尿病

膵疾患(膵炎・膵癌)、薬剤性(ステロイド・免疫チェックポイント阻害薬など)、遺伝子異常など、特定の原因によって発症する糖尿病もあります。免疫チェックポイント阻害薬と糖尿病の関係についても解説しています。



糖尿病の症状——初期は気づきにくい

糖尿病の初期〜中等症では、自覚症状がほとんどないことが特徴です。そのため、健康診断や人間ドックで「血糖値が高い」「HbA1cが高い」と指摘されて初めて気づく方が大半です。

血糖値がさらに高くなると、以下のような症状が現れます。

  • 喉の渇き(口渇)——水を何杯ものむようになる
  • 多尿——夜中に何度もトイレに起きる
  • 体重減少——食事量は変わらないのに体重が減る
  • 倦怠感——全身のだるさが続く
  • 視力の変化——ぼやけて見える日がある
  • 手足のしびれ——神経障害の初期サイン

これらの症状に心当たりがある方は、糖尿病の初期症状チェックリストで詳しく確認できます。早期発見・早期治療が、合併症を防ぐうえで最も大切です。



糖尿病の原因とリスク因子

糖尿病の発症には、遺伝要因と環境要因(生活習慣)が複合的に関与します。

遺伝要因

  • 家族歴(両親・兄弟姉妹に糖尿病患者さんがいる)
  • 日本人を含むアジア人は、欧米人と比べてインスリン分泌能が低い傾向がある

生活習慣・環境要因

  • 肥満(特に内臓脂肪型肥満)——インスリン抵抗性の最大の原因
  • 運動不足——筋肉でのブドウ糖消費が減る
  • 過食・高カロリー食——血糖値を上げる負荷が持続する
  • 加齢——膵臓機能は加齢とともに低下する
  • ストレス・睡眠不足——血糖を上げるホルモンの分泌が増加する



糖尿病の診断基準と検査方法

糖尿病の診断には、以下の検査値を用います。

診断項目 正常 糖尿病の疑い(境界型) 糖尿病型
空腹時血糖 〜109mg/dL 110〜125mg/dL 126mg/dL以上
HbA1c(NGSP) 〜5.5% 5.6〜6.4% 6.5%以上
75gOGTT 2時間値 〜139mg/dL 140〜199mg/dL 200mg/dL以上

診断は、上記のいずれかが「糖尿病型」であることを確認し、別の日に再検査して確定します。ただし、典型的な糖尿病の症状(口渇・多尿・体重減少)がある場合や、HbA1cが6.5%以上かつ血糖値が200mg/dL以上の場合は、1回の検査で診断されることもあります。検査については糖尿病検査ガイド、HbA1cの詳しい解説はHbA1cとは?をご参照ください。



糖尿病の治療法|食事・運動・薬物の3本柱

糖尿病治療の目標は、血糖値を健常者に近い範囲に保ち、合併症の発症・進展を防ぐことです。治療は大きく分けて3つの柱があります。

① 食事療法

適切なエネルギー量と栄養バランスを守ることが基本です。極端な糖質制限ではなく、主食・主菜・副菜のバランスが取れた食事を1日3食、規則正しく摂ることが大切です。詳しくは糖尿病の食事療法実践編(献立例・外食対策)をご覧ください。糖質制限については糖質制限のやり方とリスクで解説しています。

② 運動療法

有酸素運動(ウォーキング・軽いジョギング・水泳など)を中心に、週に合計150分程度の運動が推奨されています。運動は筋肉でのブドウ糖の取り込みを促進し、インスリン抵抗性を改善します。糖尿病に適した運動については糖尿病のライフスタイルとセルフケアで詳しく解説しています。

③ 薬物療法

食事療法や運動療法だけでは十分な血糖コントロールが得られない場合、薬物療法を開始します。現在は多くの選択肢があり、患者さんの状態に合わせて治療薬を選びます。

  • 内服薬:メトホルミン・SU剤・グリニド薬・α-GI・ピオグリタゾン・DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬(内服)など。各薬剤の詳細は糖尿病治療薬の種類と選び方をご覧ください。
  • 注射薬:GLP-1受容体作動薬(注射)、インスリン製剤。インスリン製剤の種類と選び方も合わせてご参照ください。

治療法の選択は、年齢・糖尿病のタイプ・HbA1c値・体格・合併症の有無・腎機能などを総合的に考慮して決定します。



血糖値の目標と自己管理

治療中の血糖コントロール目標は、患者さんの年齢や合併症の状況により個別に設定されます。おおまかな目安として、日本糖尿病学会のガイドラインでは以下が推奨されています。

  • HbA1c:合併症予防の目標は7.0%未満(上限なしかつ下限あり)
  • 空腹時血糖:130mg/dL未満
  • 食後2時間血糖:180mg/dL未満

血糖自己測定(SMBG)や持続血糖モニター(CGM)を活用することで、日々の血糖変動を把握し、治療効果を評価できます。詳しくは血糖管理のやり方と目標値をご覧ください。また、定期的なHbA1c・腎機能・眼底検査などのスケジュールについては糖尿病の定期検査で解説しています。



糖尿病の合併症——怖さを知り、予防する

糖尿病で最も注意すべきは、長期の高血糖状態が引き起こす全身の血管障害(合併症)です。

三大合併症(細小血管症)

  • 糖尿病神経障害:手足のしびれ・痛み・感覚低下。最も発症が早い合併症で、放置すると足の壊疽(壊死)に至ることも。
  • 糖尿病網膜症:網膜の細い血管が傷つき、進行すると失明リスク。成人の失明原因の第1位。
  • 糖尿病腎症:腎臓のろ過機能が低下し、進行すると人工透析が必要に。新規透析導入の第1位原因。

これらについては糖尿病の三大合併症と予防で詳しく解説しています。腎症については糖尿病腎症のステージ別治療もご参照ください。

大血管症(動脈硬化)

  • 心筋梗塞・狭心症——糖尿病は冠動脈疾患のリスクを2〜4倍に高める
  • 脳卒中——脳梗塞のリスクが有意に上昇
  • 末梢動脈疾患(PAD)——足の血流障害による間欠性跛行や潰瘍

糖尿病と高血圧が合併するとリスクはさらに高まります。糖尿病性高血圧の管理目標もご確認ください。

また、糖尿病と歯周病飲酒の関係など、日常生活に密着したテーマについても詳しく解説しています。合併症の予防には、血糖コントロールに加えて、血圧管理・脂質管理・禁煙・定期的な検査が欠かせません。合併症予防の年間スケジュールもご活用ください。



糖尿病は改善できる?——寛解の可能性

「糖尿病は治らない」と言われることがありますが、2型糖尿病では、適切な治療により血糖コントロールが正常範囲まで改善し、薬を中止できる状態(寛解)を目指せるケースがあります。特に、発症から早期の段階で体重減少(10%以上の減量)と生活習慣の改善に成功した場合、寛解の可能性が高まることが複数の臨床研究で示されています。

ただし、寛解状態になっても膵臓の機能が完全に回復したわけではなく、食事や体重が元に戻れば再発する可能性があります。そのため、寛解後も定期的なフォローアップと健康的な生活習慣の継続が重要です。

長期的には、血糖値を良好にコントロールし続けることで、合併症の発症・進展を抑え、健康な生活を維持することが目標です。



糖尿病の予防——境界型(予備群)からの対策

健康診断で「血糖値が高め」「HbA1cが5.6〜6.4%(境界型)」と指摘された方は、糖尿病の予備群(前糖尿病状態)に該当します。この段階で生活習慣を見直すことで、糖尿病への進展を予防したり、遅らせたりできることが大規模な臨床試験で示されています。

予防のポイントは以下の通りです。

  • 適正体重の維持:BMI 22を目標に、体重増加を防ぐ
  • バランスの良い食事:野菜を先に食べる「ベジファースト」、間食の見直し、糖質のとりすぎに注意
  • 定期的な運動:1日30分以上の歩行を目安に、無理なく続ける
  • 定期的な健康診断:年に1回は血糖値・HbA1cをチェック

すでに糖尿病と診断されている方も、初期からの適切な治療と生活習慣の改善により、良好なコントロールを維持することが可能です。気になる症状がある方や健診で指摘を受けた方は、早期に医療機関にご相談ください。



こんな症状が出たら——緊急度の目安

糖尿病の治療中に以下の症状が現れた場合は、早めの対応が必要です。

🚑 119番(救急車)へのご連絡をおすすめします

  • 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応が弱い
  • 激しい嘔吐が続いて水分も取れない
  • 呼吸が速く・深くなっている
  • 呼気が甘い果実臭(アセトン臭)がする

⚠️ 速やかに医療機関への受診をおすすめします(当院 047-467-5500)

  • 血糖値が連日350mg/dL以上
  • 強い喉の渇きと多尿が続く
  • 吐き気や腹痛がある
  • 低血糖(冷や汗・動悸・意識が遠くなる)が頻繁に起きる

📋 通常診療時間内に当院へご相談ください(047-467-5500)

  • 治療のことで不安や疑問がある
  • シックデイ(体調不良時)の対応がわからない
  • インスリンや内服薬の調整について相談したい

糖尿病の緊急症について詳しく知りたい方は糖尿病緊急症(DKA・HHS)、シックデイ対応の詳細は糖尿病シックデイ対処法をご参照ください。また、反応性低血糖(食後低血糖)についても解説しています。



よくある質問(Q&A)

糖尿病はどんな病気ですか?

血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなる代謝疾患です。インスリンの働きが不足したり効き目が悪くなることが原因で、放置すると全身の血管が傷つき、さまざまな合併症を引き起こします。早期発見・早期治療が重要です。

糖尿病の初期症状は?

初期はほとんど自覚症状がありません。血糖値がさらに高くなると、喉の渇き・多尿・体重減少・倦怠感・手足のしびれなどが現れます。健康診断で「血糖値が高い」と指摘されたら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。初期症状チェックリストもご活用ください。

糖尿病の原因は?

遺伝要因と生活習慣要因が複合的に関与します。2型糖尿病の主な原因は、過食・運動不足・肥満によるインスリン抵抗性と、加齢に伴うインスリン分泌能の低下です。1型糖尿病は自己免疫が原因です。

1型糖尿病と2型糖尿病の違いは?

1型糖尿病は膵臓でインスリンがほとんど作られなくなるため、発症時からインスリン注射が必須です。2型糖尿病はインスリンの効き目が悪くなることが主因で、食事療法・運動療法・内服薬から治療を開始することが一般的です。日本人の糖尿病患者さんの約95%は2型糖尿病です。

糖尿病の診断基準は?

空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上、75gOGTT 2時間値200mg/dL以上のいずれかを満たし、別の日に再確認して確定します。HbA1c 5.6〜6.4%は「境界型(糖尿病予備群)」とされ、この段階での生活習慣改善が糖尿病発症予防に有効です。

糖尿病は改善できますか?

2型糖尿病では、早期に適切な治療と生活習慣の改善を行うことで、薬を使わずに血糖値が正常範囲に保たれる状態(寛解)を目指せるケースがあります。特に発症早期からの体重減少と生活習慣改善が有効とされています。ただし、寛解後も定期的なフォローアップが必要です。

糖尿病の治療法は?

食事療法・運動療法・薬物療法の3本柱です。まずは食事と運動の見直しから始め、必要な場合は内服薬や注射薬(GLP-1受容体作動薬・インスリン)を追加します。治療法は患者さんの状態に合わせて個別に選択されます。

糖尿病の食事で気をつけることは?

1日3食を規則正しく、野菜から先に食べる「ベジファースト」を実践しましょう。糖質を極端に制限するのではなく、主食・主菜・副菜のバランスが大切です。詳細は糖尿病の食事療法、実践的な献立例は食事療法・実践編をご覧ください。

糖尿病の合併症にはどんなものがある?

三大合併症は神経障害・網膜症・腎症です。これらは自覚症状がないまま進行するため、定期的な検査が欠かせません。また、動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳卒中のリスクも高まります。三大合併症の詳しい解説をご参照ください。

血糖値の正常範囲は?

空腹時血糖は109mg/dL以下、HbA1cは5.5%以下が正常範囲です。治療目標は一般的にHbA1c 7.0%未満ですが、年齢や合併症の状況により個別に設定されます。HbA1cの詳しい解説もご覧ください。

糖尿病でも妊娠・出産はできますか?

血糖コントロールが良好な状態であれば、妊娠・出産は可能です。ただし、妊娠前から血糖値をしっかりコントロールし、妊娠中も継続的な管理が必要です。また、妊娠中に初めて発見される妊娠糖尿病(GDM)についても適切な管理が重要です。詳しくは妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠をご参照ください。

糖尿病の予防方法は?

適正体重の維持、バランスの良い食事、定期的な運動、年に1回の健康診断が基本です。境界型(予備群)と診断された方は、この段階で生活習慣を見直すことで糖尿病への進展を予防できる可能性があります。



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しもやま内科へのアクセス

船橋市の糖尿病専門医「しもやま内科」では、糖尿病の診断・治療・継続的なフォローアップに対応しています。血糖値やHbA1cが気になる方、すでに治療中の方もお気軽にご相談ください。

  • 住所:〒273-0005 千葉県船橋市本町1-6-23 プライムメディカルビル3F
  • TEL:047-467-5500(予約は電話のみ)
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監修:しもやま内科 院長 下山立志(日本糖尿病学会 専門医・指導医、日本循環器学会 専門医、日本甲状腺学会 専門医)
参考文献:日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2025」「糖尿病診療ガイドライン2024」、厚生労働省「国民健康・栄養調査」
最終更新日:2026年8月27日

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

23/05/2016