インスリン治療が必要な状態の患者さんのインスリン自己中断は危険
インスリン治療が必要な患者さんは、必要なインスリンを十分に体内でつくることができません。外部から足りないインスリンを補充してあげる必要があります。
例えるなら
膵臓からインスリンが十分に分泌できない患者さんに外部からインスリンを補ってあげる治療法がインスリン療法です。
インスリン注射が生命維持に不可欠な状態を、インスリン依存状態といいます。
インスリン依存状態の方がインスリンを中止してしまうと、
インスリン作用の欠乏→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用低下・脂肪分解亢進→高血糖・高遊離脂肪酸→ケトン体産生亢進→糖尿病性ケトアシドーシス
このように深刻な事態に発展してしまいます。
インスリン作用が極度に低下すると、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンが過剰になります。全身でブドウ糖利用が低下し、脂肪の異化が亢進するため、高血糖かつ高遊離脂肪酸血症になります。遊離脂肪酸はインスリン欠乏状態では肝臓で急速な酸化を受けケトン体に分解され、ケトン体産生が亢進します。血中ケトン体が高値となり、全身の高度の代謝障害のため緩衝作用がうまく働かなければ、アシドーシスや脱水となり、重症では昏睡に至ります。
インスリン依存状態の患者が体調不良で食事を取れない状態(シックデイ)になるとインスリンをやめてしまうことがありますが、完全にやめてしまうのは危険です。シックデイルールに則り、正しいインスリン投与を続けて下さい。