周期性四肢麻痺

thyrotoxic periodic paralysis
周期性四肢麻痺とは、血清カリウム(K)値の異常を伴う急性全身性の筋力低下を特徴とする疾患群で、家族性(Na、K、またはCaチャネルの遺伝子異常)と続発性(K値の異常をきたす他の疾患に伴うもの)に分類されます。
甲状腺中毒性周期性四肢麻痺とは、甲状腺中毒症に伴う筋力低下発作のことです。わが国では周期性四肢麻痺の約半数が甲状腺中毒性です。麻痺発作は数時間~数日間持続し、自然に軽快します。
どんな時に起きる?
特に男性に多く、アジア系の人々により一般的に見られます。甲状腺ホルモン過剰状態での高炭水化物食摂取後や飲酒後、激しい運動後の安静時(翌朝)によく起こります。炭水化物の負荷、インスリンの投与、寒冷暴露、ストレス、激しい運動が誘因となります。
甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
基礎疾患である甲状腺腫を認めます。甲状腺中毒症の原因はBasedow病とは限りません。無痛性甲状腺炎やプランマー病などで報告があります。甲状腺機能は軽度の中毒症でも起こりえます。
発作時はアルカローシスを伴わない低K血症を呈し、尿中K排泄は低下しています。また、回復期には逆に高K血症を呈することがあります。筋電図では低複合活動電位を示します。非発作時の血中K値は正常です。
治療
発作時の治療はK製剤の経口投与(嘔吐や嚥下障害がある場合のみ静脈内点滴投与します、K添加生理食塩水をK20mEq/L時間以下で)により、数時間で症状は軽快します。ブドウ糖の点滴は低K血症を増強するので避けます。心電図モニターなどにより、回復時の高K血症に注意します。非発作時のK投与は無効です、プロプラノロールに頻度や程度の軽減効果があるといわれています。
予後
治療開始後、2~4時間で症状は改善し、24~36時間後には完全に消失します。甲状腺機能が正常化するまでの間は、高炭水化物食、飲酒、激しい運動、長時間の寒冷暴露を避けてもらいます。甲状腺機能が正常化すれば発作は起こらなくなります。