まずは禁煙と眼表面ケアを徹底。活動期はステロイド(静注/内服)や放射線を検討し、安定期は手術の順序(眼窩減圧→斜視→眼瞼)を意識。視力低下・色覚低下・視野異常は視神経症の赤旗で至急対応。

甲状腺眼症(Thyroid Eye Disease, TED)の治療は、活動期と安定期で戦略が異なります。まず禁煙と生活ケアを土台とし、活動性・重症度・合併症・妊娠計画を踏まえ、薬物・放射線・手術を組み合わせます。ここでは実践上の順序と注意点に絞って整理します。
1. 生活介入:禁煙・セレン・眼表面ケア
- 禁煙(最優先):喫煙は眼症の発症・増悪と治療反応不良に関連。禁煙外来の併用を推奨。受動喫煙も回避。
- セレン補充:軽症・活動期で適応を検討(用量・期間は個別指示)。サプリ併用時は過量に注意。
- 眼表面ケア:ヒアルロン酸点眼・夜間眼軟膏・就寝時のテーピング/保護眼鏡。就寝時は枕を高めに。
- 全身コントロール:甲状腺機能の安定化、睡眠・ストレス管理、ドライアイ素因の同時対応。
2. ステロイド療法:静注/内服の使い分け
活動期の中等症~重症に検討。静注メチルプレドニゾロン(週次投与など)や内服プレドニゾロンを選択。肝機能・血糖・血圧・感染をモニタリングし、禁忌・相互作用に注意。眼症の炎症所見(疼痛・充血・浮腫・眼瞼後退の進行など)と機能(複視・視力)で反応性を評価し、必要に応じ放射線併用も検討します。
3. 放射線・手術:適応と順序
- 眼窩放射線療法:活動期の炎症・浮腫、複視に対し有効性が期待される場合に検討(妊娠は不可)。単独よりステロイド併用で効果を高める戦略あり。
- 手術の基本順序(安定期):
- 眼窩減圧術(突出/圧迫の改善)
- 斜視手術(複視の是正)
- 眼瞼手術(眼瞼後退・露出の是正)
病勢が安定してから段階的に。美容と機能の両面を説明。
4. 視神経症の赤旗(至急対応)
- 視力低下・色覚低下(赤の見え方が鈍い)
- 視野異常、相対的瞳孔求心路障害(RAPD)
- 眼痛を伴う急な増悪、著明な眼窩硬結
疑う場合は至急対応(同日評価)。高用量静注ステロイドの適応や、改善不十分なら緊急眼窩減圧を検討。多職種で迅速に判断します。
5. 妊娠・授乳に関する注意
- 放射線療法は妊娠中不可。ステロイドは必要最小限・短期を基本に個別検討。
- 甲状腺機能の安定化を優先。胎児・母体双方の安全性を最重視し、産科・眼科・内分泌で連携。
6. 日常生活の工夫
- 乾燥対策:加湿・点眼・夜間保護。
- 複視対策:臨時のプリズム眼鏡やアイパッチを検討(医師と相談)。
- PC/読書:休憩・文字サイズ拡大・照明環境の調整。
👨⚕️ 執筆・監修
下山 立志(しもやま たつし)
院長/
しもやま内科
資格:日本甲状腺学会 甲状腺専門医・日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・日本内科学会 総合内科専門医 ほか
院長/
しもやま内科
資格:日本甲状腺学会 甲状腺専門医・日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・日本内科学会 総合内科専門医 ほか
最終更新日:2025-10-19(JST)
本ページは一般的な解説です。活動性・重症度・妊娠計画などにより方針は異なります。最終判断は担当医の説明・書面に従ってください。