潜在性甲状腺機能低下症・亢進症(サブクリニカル)|治療が必要かの判断と再検間隔

潜在性甲状腺機能異常(サブクリニカル)

潜在性の低下症・亢進症は、TSHの異常に対してFT4/FT3が基準範囲内の状態です。
治療適応は年齢、TSHの幅、症状、妊娠希望、心血管リスクなどを総合で判断します。
再検は通常6〜12週間後にTSH/FT4(必要に応じFT3)を確認し、安定後は3〜6か月間隔→年1回へ。

健診や採血で「TSHだけ異常」「FT4は正常」と言われると、不安になりますよね。
潜在性甲状腺機能異常(サブクリニカル)は、TSHのみが異常で、FT4(必要に応じFT3)が基準範囲内にある状態を指します。
低下側(TSH高値)と亢進側(TSH低値)でリスクや対応が異なるため、TSHの幅・年齢・症状・妊娠関連・心血管リスクを組み合わせて、治療介入か経過観察かを決めます。

実際の外来診療では、「数値の持続(再検で本当に続くか)」と「心臓・妊娠関連のリスク」が分かれ目になりやすいです。

TSHだけ異常(FT4正常)とは?

「TSHだけ高い/低いのに、FT4は正常」という状態が、いわゆる潜在性(サブクリニカル)甲状腺機能異常です。
まずは一時的な変動(体調不良、薬剤、採血条件など)でないかを確認するため、6〜12週間後の再検が基本になります。

TSH上昇・FT4正常(潜在性甲状腺機能低下症)

  • TSH ≥ 10:治療(レボチロキシン)を検討することが多い
  • TSH 4.5–9.9:症状、抗体、妊娠希望、脂質/心血管リスクなどで個別判断

TSHのみ低下・FT4正常(潜在性甲状腺機能亢進症)

  • TSH < 0.1:心房細動・骨への影響を踏まえ、治療を検討しやすい
  • TSH 0.1–0.39:高齢(特に65歳以上)や心臓/骨リスクがあれば治療を検討し得る

潜在性甲状腺機能低下症・亢進症は「治る」?(自然に戻る?)

原因によって異なります。炎症の経過(無痛性甲状腺炎など)では自然に戻ることもありますが、
橋本病の進行や自律性結節などでは持続・進行することがあります。まずは再検で持続性を確認し、
リスクが高い場合は早めに方針決定します。

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治療適応(年齢・TSH域・症状・妊娠希望・心血管リスク)

1) 潜在性甲状腺機能低下症(TSH高値・FT4正常)

  • TSH ≥ 10 mIU/L:原則、治療(レボチロキシン)を検討。
  • TSH 4.5–9.9:次を満たせば治療を前向きに検討
    • 症状が明らか(倦怠感、浮腫、寒がり、皮膚乾燥など)
    • 甲状腺自己抗体陽性(TPOAbなど)や甲状腺腫大
    • 妊娠希望・妊娠中(目標TSHは通常 <2.5 程度)
    • 心不全・冠動脈疾患・脂質異常など心血管リスクが高い
    • 小児・青年(成長や学習への影響を考慮)
  • 高齢者:過量投与で心血管イベントや骨量低下を招き得るため、開始量は少量・慎重に。目標TSHもやや緩めの範囲で個別化。

2) 潜在性甲状腺機能亢進症(TSH低値・FT4/FT3正常)

  • TSH < 0.1 mIU/L:以下では治療を積極的に検討
    • 65歳以上、心房細動・心不全・虚血性心疾患の既往やリスク
    • 骨粗しょう症、閉経後で骨折リスク高い(特にエストロゲン/ビスホス未使用)
    • 症状が明らか(動悸、手指振戦、体重減少、筋力低下など)
    • 毒性結節性甲状腺腫や多結節性甲状腺腫が疑われる
  • TSH 0.1–0.39:心血管・骨リスクが高い場合、治療を含めて個別に判断。リスク低い場合は慎重フォロー。
  • 原因検索(甲状腺機能亢進症(総論)参照)と心電図・骨評価を適宜。
治療検討の“早見表”
状況 低下側(TSH高値) 亢進側(TSH低値)
TSHの幅 TSH ≥10:治療前向き
4.5–9.9:条件つき
<0.1:治療前向き
0.1–0.39:条件つき
年齢 高齢者は少量開始・個別化 65歳以上で治療寄り
妊娠関連 妊娠希望/妊娠中:治療寄り 胎児・母体リスクを考慮し専門判断
心血管・骨リスク 冠動脈疾患・心不全なら治療寄り 心房細動/骨粗しょう症:治療寄り
症状 症状明瞭なら治療を検討 症状明瞭なら治療を検討

経過観察の間隔(実務)

  • 初回異常:非甲状腺疾患・薬剤・急性疾患の影響を除外したうえで、6–12週間後にTSHとFT4(必要に応じFT3)を再検。
  • 方針未確定〜用量調整中6–12週間ごとに再検。臨床変化があれば早めに。
  • 安定後(経過観察):最初は3–6か月間隔、その後は年1回を目安に。妊娠関連や高リスクでは短め。
  • 薬剤影響(アミオダロン、ヨウ素負荷、免疫チェックポイント阻害薬など)が疑われる場合は、原因薬の影響期間を考慮し短期フォロー。

よくある質問(FAQ)

潜在性甲状腺機能低下症とは?(TSH高い・FT4正常)

TSHが高い一方でFT4が正常の状態です。数値の程度・持続性・妊娠希望・抗体・症状などを踏まえて方針を決めます。

潜在性甲状腺機能亢進症とは?(TSHのみ低下・FT4正常)

TSHが低い一方でFT4が正常の状態です。TSHが0.1未満の場合は、心房細動や骨への影響を踏まえて評価・治療を検討します。

TSH上昇・FT4正常(tsh高い ft4正常)は放置していい?

一概には言えません。TSHが10を超える場合は治療を検討することが多く、10未満でも症状や妊娠希望、抗体、脂質/心血管リスクで判断が変わります。

TSHが10以上なら治療?(潜在性甲状腺機能低下症 治療適応)

一般にTSHが10を超える場合は治療を検討することが多いです。年齢や合併症により開始量や目標は個別調整します。

TSHのみ低下(tsh 0.1以下 / tsh 0.39 など)は危険?

TSHが0.1未満はリスクが上がる可能性があり、特に高齢・不整脈・骨粗鬆症がある場合は要注意です。TSHが0.1–0.39でも65歳以上では治療を検討し得ます。

潜在性甲状腺機能亢進症は治る?(自然に戻る?)

原因によって異なります。炎症の経過では改善することもありますが、自律性結節などでは持続することがあります。まずは再検で持続性確認が重要です。

潜在性甲状腺機能低下症の原因は?

代表は橋本病です。他に薬剤、ヨウ素、回復期などが関与することがあります。必要に応じて抗体検査やエコーで評価します。

潜在性甲状腺機能低下症の症状は?

だるさ、眠気、便秘、むくみなどが挙がりますが、他の原因でも起こるため「症状だけで決めない」のがポイントです。

妊娠希望・妊娠中は判断が変わる?

妊娠中・妊娠希望ではTSHの目標設定や治療方針が一般と異なることがあります。妊娠関連は早めに主治医へご相談ください。

「サブクリニカルクッシング症候群」と同じですか?

別の病気です。本ページは甲状腺の「潜在性(サブクリニカル)機能異常」について解説しています。

船橋市で甲状腺のご相談なら|しもやま内科
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👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

12/10/2025