放射性ヨウ素(RAI)治療ガイド|適応・準備(低ヨウ素食)・入院中の流れ・退院後の注意・授乳/妊娠|しもやま内科(船橋市)

🔊 要点

放射性ヨウ素(RAI)治療は、甲状腺がんの術後アブレーション/再発抑制や、バセドウ病(Graves病)の根治治療の選択肢です。
実施前は低ヨウ素食と内服調整が重要。入院中は決められた安全基準に従い、退院後も一定期間の生活上の配慮が必要です。授乳は中止、妊娠は一定期間避けます。

放射性ヨウ素(RAI)治療イメージ:中央の甲状腺からカプセル、放射能マーク、病院、カレンダーへつながる線で『治療薬・安全管理・入院・準備期間』を示す図(しもやま内科)
放射性ヨウ素(RAI)治療ガイド:適応・準備・入院中の流れ・退院後の注意・授乳/妊娠のポイント

放射性ヨウ素(RAI:Radioactive Iodine、ヨード内用療法)は、甲状腺がんの術後アブレーション/残存抑制再発病変の治療、およびバセドウ病(Graves病)の根治治療に用いられます。ヨウ素は甲状腺に取り込まれる性質があり、放射性ヨウ素(I-131)を内服すると、標的となる甲状腺組織を選択的に治療できます。
当院では適応の判定・事前準備・関連診療科との連携を行い、連携病院でのRAI実施をスムーズにサポートします。


1. 適応

  • 甲状腺がん関連:分化型甲状腺がん(乳頭癌・濾胞癌)の術後アブレーション、持続/再発病変の治療、遠隔転移のコントロールなど。適応は腫瘍リスク分類・病理・術後サイログロブリン(Tg)・画像所見で総合判断します。
    参考:甲状腺がんの種類甲状腺がん術後フォローアップ
  • バセドウ病(Graves病):抗甲状腺薬で副作用/コントロール不良・再燃を繰り返す場合、妊娠計画や生活背景を考慮して選択。眼症の程度や甲状腺腫の大きさも検討材料です。
    関連:バセドウ病(Graves病)

2. 準備(低ヨウ素食・内服調整・検査)

低ヨウ素食(目安 1〜2週間)

体内のヨウ素を減らし、放射性ヨウ素の取り込みを高めるために低ヨウ素食を行います。
控える:海藻(昆布・わかめ・ひじき・海苔)、海藻由来加工品(だし、佃煮)、ヨウ素含有サプリ、ヨードうがい薬、ヨード造影剤既往は事前申告。
使える:米・小麦・いも類、肉・卵、野菜・果物、乳製品は病院指示に従い少量可否が異なります。加工食品は成分表示を確認。

内服薬の調整

  • バセドウ病の抗甲状腺薬:治療前に一時中止が必要となる場合があります(薬剤・病状により中止期間が異なるため、必ず指示に従ってください)。
  • レボチロキシン(術後の甲状腺ホルモン):がんのアブレーションでは、ホルモン休薬またはrhTSH(チロトロピンアルファ)補充のいずれかでTSHを上げてから実施します。
  • ヨウ素を含む薬/うがい薬/サプリ:事前に申告し、指示に従って中止/代替。

実施前の検査・調整

  • 採血(TSH, FT4/FT3, Tg/抗Tg抗体 ほか)、必要に応じて妊娠反応、腎機能
  • 画像(頸部エコー、必要時シンチ、CT等)
  • がん術後例では、病期/リスク評価・TSH目標の共有

3. 入院中の流れ

  1. 入院・説明:治療目的・手順・安全対策の最終確認。
  2. 放射性ヨウ素内服(I-131):通常はカプセルで内服。以降は所定の病室で過ごします。
  3. 安全管理:医療スタッフの指示に従い、病室内での行動・排泄物の取り扱い・洗面/入浴などのルールを遵守します。
  4. 放射線量の確認:退院の目安は病院の基準に基づき、測定値で判断されます。

4. 退院後の注意(一定期間の生活配慮)

退院後も、小児や妊婦への長時間の至近距離接触を控える寝室を分けるタオルや食器を分けて使用トイレ後の十分な洗浄など、病院で指示された期間は配慮を継続してください。公共交通機関や外出の目安、仕事復帰の可否も個別の投与量と施設基準で異なります。必ず退院時の説明書に従ってください。


5. 授乳・妊娠に関する留意点

  • 授乳RAI実施前に完全中止が必要です(再開不可)。乳汁うっ滞の対策を事前に相談します。
  • 妊娠一定期間の避妊が必要です(一般には数か月〜1年の範囲で個別指示)。バセドウ病治療後の妊娠計画は、甲状腺機能が安定してから主治医と調整します。
  • 家族計画:配偶者への影響を含め、適切な時期に再評価(採血・画像)を行います。

よくあるご質問

RAIは何回くらい必要ですか?
目的(がんのアブレーション/再発病変の治療/Graves病)や反応性により回数は異なります。初回後に採血・画像で効果判定を行い、必要時に追加を検討します。
低ヨウ素食はどの程度厳密に行うべきですか?
病院の指示に従ってください。海藻・ヨウ素含有サプリ・ヨードうがい薬は原則避けます。加工食品は成分表示の確認が有用です。
退院後、子どもと一緒に過ごしても大丈夫?
投与量と施設基準で異なります。一定期間は密接な接触を避けるなどの配慮を求められます。退院時に渡される文書の指示に従ってください。

ご相談・治療前評価のご予約
☎ 047-467-5500
受付時間:診療時間に準じます/千葉県船橋市(しもやま内科)

本ページは一般的な解説です。施設の実施基準・投与量・個別状況により指示は異なります。最終的な判断と具体的な行動は、連携病院の説明・書面に従ってください。

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長/日本甲状腺学会 甲状腺専門医 ほか