🔊 このページの要点
- ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料。過剰でも不足でも甲状腺機能異常を招く。
- 海藻の“ドカ食い”や昆布サプリは要注意。妊娠中は特に慎重に。
- CTなどのヨウ素造影剤は一時的に検査値や機能へ影響する。治療前後のタイミング調整が必要。
- バセドウ病・橋本病・妊娠中/授乳中は、個別に摂取指導を行う。
ヨウ素(ヨード)は、甲状腺ホルモン(T4・T3)の必須原料です。日本では海藻の摂取が多く、過剰摂取が問題になることも少なくありません。一方で、不足でも甲状腺腫や機能低下症の原因になります。本ページでは、食事・サプリ・ヨウ素造影剤が甲状腺に与える影響と、受診前後の実務的な注意点を整理します。

1. ヨウ素の基礎知識と摂取目安
- 成人の推奨量は概ね150 μg/日(妊娠中は 220–250 μg、授乳中は 250–290 μg が目安)。
- 耐容上限量は国や指針で異なりますが、1,100 μg/日程度を上限目安とする基準が広く用いられます(日本の基準はやや高めに設定)。
- 日常の和食で適量の海藻を食べる分には問題ありませんが、乾燥昆布の大量摂取や昆布だしの濃い常飲、昆布・海藻系サプリは過剰摂取につながりやすく注意が必要です。
2. 食品・サプリで気をつけたいポイント
海藻(昆布・わかめ・ひじき 等)
- 昆布はヨウ素含量が非常に高く、乾物数グラムで上限を超えることがあります。
- “毎日たっぷり”の昆布茶・昆布だし・海藻サラダは、甲状腺機能低下症(Wolff–Chaikoff効果)や、素因のある方では機能亢進(Jod-Basedow)の誘発リスクにつながります。
サプリメント
- ヨウ素入りマルチビタミン/海藻エキス・昆布サプリは含有量が高いことが多く、甲状腺疾患のある方や妊娠中は基本的に避ける/医師へ相談を推奨します。
- セレン欠乏・過剰も甲状腺に影響します。自己判断のサプリ多剤併用は避け、必要性は診察時にご相談ください。
3. 病態別の実践アドバイス
橋本病(慢性甲状腺炎)・甲状腺機能低下症
- 過剰なヨウ素は炎症や機能低下を悪化させることがあります。海藻は“常識的な量”に節度を持ち、サプリは基本的に控える方針が安全です。
- レボチロキシン内服中は、内服方法と相互作用(鉄剤・カルシウム・PPIなど)も併せて確認しましょう。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
- 治療中はヨウ素過剰でコントロールが不安定になることがあります。海藻の大量摂取・昆布サプリは避けてください。
- 抗甲状腺薬治療や、治療計画のご相談時に、食習慣を確認します。
妊娠中・授乳中
- 胎児・乳児の発育にヨウ素は不可欠ですが、過剰摂取は新生児の機能異常の原因になり得ます。妊娠中・授乳中のヨウ素サプリは原則不要で、海藻も食べ過ぎに注意します。
- 妊娠関連は 「甲状腺と妊娠」総合ページ もご参照ください。
4. ヨウ素造影剤(CTなど)と甲状腺
- 一回の造影で大量のヨウ素負荷がかかります。多くは一過性ですが、甲状腺疾患の素因がある場合は機能異常が顕在化することがあります。
- 検査・治療の前後タイミング:
・放射性ヨウ素治療・シンチの予定がある場合、造影後は吸収抑制のため一定期間(通常数週間〜数か月)あける必要があります。
・TSH受容体抗体陽性や高齢の結節性甲状腺腫などでは、造影後に甲状腺機能の確認(通常4–8週後)を検討します。 - 造影検査が決まっている場合は、必ず甲状腺疾患の有無を撮影部門へ共有してください。
5. 低ヨウ素食(必要になる場面)
- 放射性ヨウ素治療・診断前に短期間(例:1–2週間)行うことがあります。長期の厳格制限は不要・不適切です。
- 実施の可否や期間は、治療計画・造影歴・腎機能などで変わります。個別にご案内します。
6. 受診の目安
- 海藻・サプリを多めに摂っていて、だるさ・むくみ・寒がり/動悸・体重減少・手指振戦などの症状がある。
- 近くCT造影の予定がある、または最近受けた。
- 妊娠中・授乳中で、ヨウ素摂取量に不安がある。
よくある質問
Q. 昆布だし・昆布茶は毎日飲んでも大丈夫?
濃いだしや昆布茶を毎日多量に摂ると、耐容上限を超えて甲状腺機能に影響する恐れがあります。常識的な量にとどめ、症状があれば採血で評価します。
Q. 海藻サラダが好きですが、どのくらいならOK?
“適量の海藻”は健康的ですが、乾物を大量に毎日という習慣は避けましょう。甲状腺疾患のある方・妊娠中は特に控えめに。
Q. CTの造影剤検査を受けます。何か伝えるべきことは?
甲状腺疾患の有無、過去の治療歴、今後予定されている放射性ヨウ素治療やシンチの予定を必ず共有してください。必要に応じて検査の時期を調整します。
Q. サプリのラベルに“ケルプ”“海藻エキス”とあります。飲んでもいい?
ヨウ素含有量が高い製品があり、甲状腺疾患や妊娠中は基本的に推奨しません。摂取中の場合は来院時に現物・写真をお持ちください。
船橋市で甲状腺の食事・サプリ相談は「しもやま内科」へ。
採血・甲状腺エコーは当日実施可(混雑状況による)。造影検査や放射性ヨウ素検査/治療が必要な場合は、連携医療機関と協力して進めます。
採血・甲状腺エコーは当日実施可(混雑状況による)。造影検査や放射性ヨウ素検査/治療が必要な場合は、連携医療機関と協力して進めます。
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長/日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
しもやま内科 院長/日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医