バセドウ病の治療法比較
バセドウ病には、抗甲状腺薬、131I内用療法、手術療法といった治療法があります。それぞれの特徴を理解し、患者さんに最適な治療を提案いたします。
重要:
2年以上抗甲状腺薬を使用しても寛解しない場合、次のステップ(131I内用療法や手術)を検討します。
第一選択は抗甲状腺薬
日本においては、バセドウ病の治療は抗甲状腺薬から開始するのが一般的です。通常、メルカゾール(チアマゾール/MMI)を用います。
抗甲状腺薬の種類と使用方法
- 妊娠初期(4〜7週)以外はMMIが第一選択。
- 妊娠初期はPTU(プロパジール)を推奨。
- 2年以上寛解しない場合は次の治療法へ移行検討。
抗甲状腺薬のメリット
- 外来通院で治療できる
- ほとんどの患者に適応
- 機能低下症のリスクが低い
抗甲状腺薬のデメリット
- 寛解率が低い
- 治療期間が長くかかる
- 副作用のリスクがある
抗甲状腺薬の副作用
副作用は治療開始から3ヶ月以内に多く発生します。重大な副作用と軽度の副作用に分かれます。
重大な副作用
- 無顆粒球症:早期発見が重要
- 多発性関節炎:服薬中止で改善
- 重症肝障害:特にPTUで注意
- ANCA関連血管炎(PTUで高リスク)
軽度の副作用
- 皮疹(蕁麻疹):自然消失することも
- 軽度の肝機能障害:経過観察が基本
抗甲状腺薬の減量と中止の基準
- FT4が正常化したら薬を徐々に減量。
- TSHも正常範囲になればさらに減量。
- 6ヶ月以上正常値が維持できれば中止検討。
- TRAbの陰性化を確認できればより安心。
無機ヨード療法
無機ヨードは短期間で甲状腺機能を抑える治療法です。
適応例
- 甲状腺クリーゼの治療
- 抗甲状腺薬が使用できない場合
- 手術や131I内用療法への橋渡し
注意点
無機ヨード療法は漫然と続けず、次の治療へのつなぎと考えます。
131I内用療法
放射性ヨウ素を用いる安全な治療法で、バセドウ病を確実に治すことができます。
適応
- 抗甲状腺薬による重大副作用時
- 手術や薬物療法が不適切な場合
- バセドウ病の再発や腫瘍縮小希望
禁忌
- 妊娠中・授乳中の女性
- 妊娠の可能性がある女性
手術療法
手術は、甲状腺悪性腫瘍を伴う場合や、薬物療法でコントロールできない場合に選択されます。
ポイント
- 熟練した甲状腺外科専門医が担当
- 約60〜70%の患者で治療完了が期待できる
- 術後ホルモン補充が必要な場合もある