原発性肝癌の治療
我が国での原発性肝癌の最大の原因は慢性C型肝炎であり、原因の約75%を占めている。次点がB型肝炎であり10-15%を占めている。C型肝炎ウイルスによって肝細胞癌に至る場合には、非癌部は約90%の例で肝硬変にまだ進展しており、肝癌が出現しやすい状態になっている。肝細胞癌を手術で根治的に治療しようとしても、再発率は5年で7-8割にのぼる。肝癌治療による肝機能低下、肝癌再発などにより死亡する症例も少なくない。累積生存率は5-6割にとどまる。
肝細胞癌の治療は主として肝障害度、腫瘍数及び腫瘍径を考慮して決定される。
- Child AないしBで腫瘍が単発ないし腫瘍数が2-3個でも最大径が3cm以下であれば肝切除ないし経皮的ラジオ波熱凝固療法、アルコール局所注入療法等を行う。
- Child AないしBで腫瘍数が2-3個でも最大径が3cmを超えれば、肝切除ないし肝動脈化学塞栓療法を行う。
- Child AないしBで腫瘍数が4個以上であれば肝動脈化学塞栓療法を行う。
- Child Cで腫瘍が単発5cm以下ないし3個以内で最大径3cm以下を示し年齢が65歳以下なら肝移植を考慮する。
一般的にはChild AとBが肝切除術の適応であり、Child Cでは肝予備能悪化のため、原則として肝切除術は施行されない、また、経皮的局所療法としてはラジオ波による凝固療法が最も多く行われる。
*鄭浩柄ほか: 肝癌,総合臨床,永井書店, 54,387-393,2007.
*日本肝臓病編:科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2009年版: 金原出版株式会社,13.2009