更年期症状と甲状腺異常の鑑別:ほてり・動悸・不安感を見分ける最小セット
ほてり・動悸・不安感は更年期でも甲状腺異常でも起こります。まずTSH・FT4(±FT3)の最小採血で切り分け、必要に応じてHRTや甲状腺治療を安全に併用します。
🔎 要点まとめ
- 症状被り:ほてり・動悸・不安・睡眠障害・易疲労は更年期でも甲状腺機能異常でも出現。
- 最小採血:まずTSH・FT4(必要に応じてFT3、抗TPO)で切り分け。
- 治療開始目安:TSH逸脱+自覚症状があれば、HRT/向精神薬の前に甲状腺治療の先行・並行を検討。
- HRT併用:エストロゲンはTBGを増やしLT4必要量↑の可能性。開始・変更後はTSH再評価。
更年期にみられるほてり・動悸・不安感・睡眠障害・易疲労は、甲状腺機能異常でも同様に起こります。見逃しや二重投薬を避けるため、まず最小の採血セット(TSH・FT4)で切り分け、必要に応じてHRT(ホルモン補充療法)と甲状腺治療を安全に併用します。

更年期 × 甲状腺の「症状被り」
- 共通の自覚症状:ほてり、発汗増加、動悸、不安・イライラ、睡眠障害、集中力低下、易疲労、体重変動。
- 甲状腺中毒症状(TSH低値/FT4↑):頻脈、手指振戦、暑がり、体重減少、下痢傾向。
- 甲状腺低下症状(TSH高値/FT4↓):寒がり、便秘、むくみ、徐脈傾向、抑うつ、コレステロール↑。
- 診察でのヒント:甲状腺腫の触知、びまん性腫大/結節、皮膚の乾燥・浮腫、腱反射変化など。
採血項目の最小セット
- 必須:TSH・FT4(まずここから)。
- 状況に応じて:FT3(中毒症評価)、抗TPO抗体(自己免疫性の示唆)、脂質・HbA1c・肝機能など併存症評価。
- 画像:腫大/結節があれば頸部エコーで形態評価。被ばくなく安全。
治療開始の目安(実務)
- 中毒症:TSH抑制+症状あり→重症度でβ遮断薬、原因に応じ内科的治療を検討。
- 低下症:TSH高値+症状/脂質異常あり→レボチロキシン(LT4)導入を検討(目標TSHを設定し数週で再評価)。
- 更年期主症状優位:甲状腺が基準内なら婦人科でのHRT/向精神薬を検討。
婦人科HRT併用時の留意点
- エストロゲンはTBG↑:遊離ホルモン分画は通常保たれるが、経口HRTでTBG↑によりLT4必要量が増えることがあります。
- 再評価タイミング:HRT開始・用量変更後6–8週でTSH再チェック。
- 相互作用:MMI/PTUとHRTの直接相互作用は少ないが、臨床症状とTSHで微調整。
よくあるご質問(FAQ)
更年期症状と甲状腺異常、どう見分けますか?
まずTSH・FT4で機能異常を確認します。中毒症では頻脈・振戦、低下症では寒がり・むくみなどが手掛かり。採血が正常なら更年期主体と考え、婦人科的評価を進めます。
最小の採血セットは何ですか?
TSH・FT4が最小セットです。必要に応じてFT3(中毒症評価)や抗TPO抗体(自己免疫性の示唆)を追加します。
HRTと甲状腺治療は同時にできますか?
可能です。経口エストロゲンでTBG↑→LT4必要量↑の可能性があるため、HRT開始・変更後6–8週でTSH再評価を行い、LT4を微調整します。
しもやま内科(船橋市)
千葉県船橋市芝山4-33-5|駐車場7台・提携駐車場あり|京成バス「千葉セントラル」「大慶山」停より徒歩1分
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ご相談は:047-467-5500
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。