Resveratrol が2型糖尿病を改善
赤葡萄に含まれ、延命効果があると2006年のnatureで報告されたresveratrol。今度は糖尿病を改善する作用が報告された。
論文のabstractがEndoclinology電子版に掲載されているのでご参照願いたい。論文の概要は以下のようなものだ。
The University of Texas Southwestern Medical CenterのRoberto Copparii氏らは、high fat dietにより糖尿病を惹起したマウスの脳に resveratrol または placebo のいずれかを注入し、その結果 を観察した。5週間後、resveratrolを注入したマウスは、high fat diet を与えていたにもかかわらずインスリンレベルが正常レベルの半分にまで戻った。これはresveratrolがsirtuinと呼ばれる脳の蛋白を活性化したためではないかと研究グループは述べている。一方、プラセボを投与 したマウスには食餌が原因と思われるインスリンレベルの上昇がみられた。
The 3rd author の藤川氏がご自身のブログでこれに言及されている。興味深いのでリンク先をご参照願いたい(既に記事が削除されています)。記事によれば、肝臓で糖新生(→血糖上昇に働く)させるはずのresveratrolが、何故肥満糖尿モデルマウスの血糖を下げるかの謎がこれで解けたようだ。
この話が肝なのは、ResveratrolというかSirtの作用は各臓器で色々であり、例えば骨格筋では脂肪酸燃焼の促進、肝臓では糖新生の促進、脂肪 細胞では脂肪放出の促進など、一連の摂食制限時に見られる生理現象を司っているという点で非常にリーズナブルなのです。が、Resveratrolは肥満 糖尿モデルの血糖値を下げるのです。ここで肝臓に対する作用と全体での結果が矛盾するという形がでてくるわけです。で、Roberto先生は脳でのResveratrolが肝臓での糖新生などを抑制し、結果として生物全体としてはeuglycemia(正常血糖)になるのではないか?と予測をたて、まぁ、実際にそうなったわけです。
今回はresveratrolをマウスの脳に注入しているから、この方法をそのままヒトに適応するのは困難であるが、今後血液脳関門を通りやすくresveratrolに似た化合物を合成できれば、内服で同様の効果が得られるかもしれない。