飲むインスリン ノボノルディスクが開発を断念
6月20日の日経産業新聞にて言及があった。
「インスリンは飲み薬にならないの?」
というのは永遠のテーマ、患者さんから必ず質問される事項である。インスリンはペプチド(アミノ酸が沢山つながった形をしており、タンパク質の仲間)なので、肉を食べると胃や腸で消化・分解されるように、インスリンも消化管で分解され効果が失われてしまう。現在のところインスリンの内服薬は存在しないが、ノボノルディスクが開発に挑んでいる。 insulin oral administration と検索すれば、それなりの数がヒットする。
2019/02/16 ノボノルディスクはi338経口インスリンの製品化を断念するとのことである。
また、吸入インスリンもある。Mannkind社は開発を続ける模様だ。
ノボノルディスクはセマグルチドの経口剤で経口システムのコストを下げ、その後経口インスリンに行くようだ。そのため、経口セマグルチド開発を優先し、経口インスリンは一時中断している。
ノボノルディスクが開発中断中の経口インスリン製剤「OI338」は、アイルランドのMerrion Pharmaceuticals社が開発している胃腸管吸収促進技術(GIPET)を応用して作られている。腸溶性コーティングされたカプセルにインスリンを封入し、腸管で吸収されるよう加工されている。吸収されたインスリンは、門脈を通じて肝臓に入り、より生理的なインスリン分泌作用を期待できる。
インスリン治療未経験の2型糖尿病患者50人(平均年齢 61歳)を対象とした臨床試験が行われている。インスリングラルギン投与群と経口インスリン製剤「OI338」群の2群に分けてRCTが行われた。経口インスリンのプラセボとインスリンのプラセボが用意され、すべての患者は1日1回の注射と1回の経口薬を服用して、二重盲検で8週間フォローした。
その結果、経口インスリンはインスリングラルギンと同等の治療成績であった。安全性もインスリングラルギンと同等であった。これを見る限り追加インスリンではなく基礎インスリンの代替になるもののようだ。2型糖尿病患者さんの中にはBOTの患者さんが少なくない。そんな患者さんのインスリン離脱には大きく役立つだろう。1型糖尿病患者さんのインスリン完全離脱
は難しいかもしれないが、4回が3回に減ればメリットは大きい。
自己注射から解放されることで、日常生活が楽になると皆さんおっしゃる。インスリンフリーになる患者さんが増えるといい。