ミグリトール(セイブル)は消化管ホルモンの分泌動態を変化させ、食欲を抑制する。

23/06/2010

ミグリトール(セイブル)は消化管ホルモンの分泌動態を変化させ、食欲を抑制する。

最近、α-グルコシダーゼ阻害薬のインクレチン関連作用が熱い。要約すれば以下のようなものである。

栄養素の摂取に伴い小腸上部のK細胞からGIPが、小腸下部のL細胞からはGLP-1が分泌される。α-GIを投与すると、小腸上部での糖質の消化・吸収を遅延させるため、小腸下部での糖質の吸収が増加する。その結果、同部位に存在するL細胞からのGLP-1分泌の増加が期待できる。さらに、α-GI投与により脂肪蓄積作用があるGIPの分泌は低下することから、体重増加が抑制される可能性がある。

今回ご紹介する記事によれば、α-GIであるミグリトール(セイブル)はGLP-1を分泌促進することで食欲を抑制するだけではなく、

  • ペプチドYY (食欲抑制作用あり)の分泌促進
  • グレリン (食欲増進作用あり)の分泌抑制

の3つの作用によって食欲抑制作用をもたらすそうだ。

GIP分泌低下作用(=体重減少に働く)と相俟って、糖尿病患者の体重増加に抑制的に働きそうだ。もっとも、別のα-GIであるアカルボース(グルコバイ)はもともとやせ薬として開発されたものの、体重減少作用はなく、食後高血糖抑制作用があったため糖尿病薬として発売されたのは有名な話である。やせなかった理由は、「アカルボースは小腸上部での糖質吸収を阻害するものの、吸収されなかった糖質は下部小腸で一部吸収され、残りは大腸の腸内細菌により発酵されて短鎖脂肪酸に分解された後、吸収される。よって吸収されるエネルギーに差はない。」とされてきた。第53会日本糖尿病学会の抄録には、ミグリトール150mg/日投与によって6ヶ月で0.8kgの体重減少を認めた(n=116)という報告もある(Ⅲ-P-118)。 体重減少作用はα-GIによって違いがあるようだ。