糖尿病内科

SGLT2阻害薬とケトン体

18/06/2016

SGLT2阻害薬とケトン体

ケトン体の恩恵という逆説。

ケトン体といえば、我々の業界では負のイメージしか無いのが実情であるが、その認識を改める必要があるかも知れない。エンパグリフロジンの画期的エビデンスである、EMPA-REG Outcomeのサブ解析で、臓器保護におけるケトン体の恩恵が取り沙汰されている。

Diabetes Careに掲載されているSGLT2関連のレビューをお示しする。

  • 血中ケトン体は、エネルギー効率が良い。SGLT2阻害薬により増加したケトン体が心臓や腎臓でエネルギー源として利用されるため、EMPA-REG で、心血管、腎臓保護が示された可能性がある。
  • SGLT2阻害薬は、糸球体の hyperfiltration を改善させ、腎臓の酸素消費量を低下させることにより、腎臓を低酸素状態から保護している。

要するに、消費酸素原子あたりのATP産生量 (P/O ratio) は、グルコースより脂肪酸の方が低い。脂肪酸のエネルギー利用では、グルコースよりも酸素を消費する。糖尿病の心臓では、インスリン作用が低下し脂肪酸酸化が起こりやすく、グルコースに対する脂肪酸エネルギー利用が増加している。ケトン体は血中濃度が増加した時にエネルギーとして利用されている。3-βhydroxybutyrate (BHOA) とピルビン酸の比較で、消費酸素原子あたりのATP産生量は同等だが、2炭素原子あたりのエネルギー産生量はBHOAの方が多い (243.6 vs. 185.7 kcal)。心筋、腎臓によるケトン体利用は、エネルギー効率が良い。腎臓での組織当たり酸素消費量は心臓に次いで多い。糖尿病では、糸球体のHyperfiltration のため、腎酸素消費量が上昇している。SGLT2阻害薬は、糸球体のhyperfiltration を低下させ、酸素消費量を減少させる。SGLT2阻害薬による腎臓での低酸素状態の改善は、CKDへの移行予防効果があると考えられる。

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