GIP濃度を大幅に高めると、食欲抑制によって体重が低下する
金藤秀明, 三浦義孝
川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科, みうら内科クリニック
糖尿病プラクティス 38(6): 649-649 2021
インクレチン(GIP/GLP-1)のうち、GLP-1はさまざまな薬剤が開発され臨床応用されています。
一方のGIPには脂肪の蓄積作用があり、体重増加をもたらす可能性が高いため、糖尿病治療薬のターゲットとして顧みられずにきました。しかし、それはGIP濃度が生理学的なレベルでの話です。
糖尿病プラクティスの記事で示されたように「GIP受容体作動薬でGIP濃度を大幅に(薬理学的レベルまで)上げると、むしろ肥満やインスリン導入抵抗性の軽減をもたらす」ことが明らかになり、GIPをターゲットとした治療薬の開発が始まりました。
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名マンジャロ)は、2型糖尿病患者さんが保険診療で使用できる薬剤です。
日本人を対象に行われた、SURPASS-J-MONO試験においては、BMI 26平均程度の日本人型肥満の患者中心の試験が組まれました。一部悪心・食欲不振による治療中断がありましたが、比較的安全に52週間の試験が終了し、デュラグルチド(トルリシティ)を上回るHbA1c 低下効果、体重減少効果が認められました。インスリン・他の経口血糖降下薬の併用なしのチルゼパチド単独投与のみで、HbA1c 7.0%未満の治療目標を達成した割合がは94%%以上でした。
肥満の合併があり内臓脂肪の蓄積によるインスリン抵抗性が示唆される2型糖尿病患者さんで、他の薬剤でコントロールが難しい方には良い適応だと思います。
Diabetes Careの論文
Tirzepatide Reduces Appetite, Energy Intake, and Fat Mass in People With Type 2 Diabetes
Diabetes Care. 2023 Mar 1;dc221710. doi: 10.2337/dc22-1710. Online ahead of print.
チルセパチド15mg群とセマグルチド1mg群の体重減少効果の対比を示します。