日本史上有名な糖尿病患者さん
藤原道長 (966-1028)
『小右記』:藤原実資著(道長と同時代の公卿で右大臣を務めた人物)には糖尿病を思わせる記載あり。道長が51歳とき、「外出中に気分が悪くなり帰途についたが、その折、しきりに水をほしがっていた」とある。道長はしばしば口の渇きを訴え、昼夜なく水を欲しがり、脱力感にも襲われていた。
「この世をば・・」と詠んだ絶頂期には、目の具合がかなり悪くなっていたことも記されている。自身の記した『御堂関白記』には「二、三尺相去る人の顔も見えず」とあり、すぐそばの人の識別さえできない状態になっていた。これも糖尿病性網膜症の症状と思われる。
夏目漱石 (1867-1916)
夏目漱石は明治の文豪として不動の地位を築いた人である。しかし、神経衰弱、胃潰瘍、糖尿病など多くの病に苦しんだ人でもあった。大の甘党で、饅頭、羊羹、ケーキ、ジャムなどが好物で、あまりに食べ過ぎるので医師から止められたこともあった。また、胃潰瘍で通院した際に尿糖を指摘されたこともあった。
晩年、糖尿病を患い、「痛みがあり座って居られない」、「痛みで眠れない」など、当時解明されていなかった「謎の痛み」に苦しんでいたことが知られている*。
*「漱石の思い出」(P372, P416)、「明治の文学第21巻 夏目漱石」(P451)