食品交換表
全国どこの病院でも「食品交換表」を使って指導している。高血圧や脂質異常症などの栄養指導でも利用できる大変利用しやすい指導教材だ。必要な栄養成分を、主食、主菜(肉、魚、大豆食品)、副菜(野菜、きのこ、海藻など)をバランスよくとってもらうための教材である。しかし、欠点もある。外食時や結婚式、飲み会などの時には対処が困難である。料理の素材が大事なので料理を作る人には有効だが、食事を作らない男性は主食のご飯や食パンや果物は計算できてもおかずの調整は困難である。奥さんなど料理を作ってくださる方の協力が必要になる。患者さんには3日間の食事内容を記載して頂き、管理栄養士がカロリー量やバランスなどを計算して、悪い点があれば一緒にどうしたらいいのか考えることになる。食事記載が面倒な人には携帯電話などで食事を撮影してきて頂いて、それを見ての指導もする。大阪から携帯電話でお好み焼きを撮影してきて、
「カロリーなんぼあるんやろか。全部食べたら、インスリン量はどないしたらええですか?」
と聞いてきた患者さんもいらっしゃる。最近のコンビニ弁当などは、カロリーや栄養素成分の量が記載してあるから、それを見て上手に食べるコツを栄養士より教えていただく。さて、炭水化物、脂質、蛋白質がエネルギーを持つ三大栄養素だが、食後の血糖値を上げる栄養素は炭水化物だ。高エネルギー食が高血糖食と同じではない。蛋白質だけを食べても血糖値は上昇しないが、体重は増加して糖尿病を悪化させる。腎臓の悪い人は高蛋白食は腎機能を悪化させる。やはり、バランスが大事だ。これを利用したのが、カーボカウント法である。
カーボカウント法
カーボ(炭水化物)量を計算して、血糖をコントロールする方法である。
カーボ(炭水化物)カウント法には「基礎カーボカウント」と「応用カーボカウント」がある。
基礎カーボカウント
1日に摂取する炭水化物量を一定にして、各食事での摂取炭水化物を決め、血糖コントロールを行う方法である。
対象患者さんは、2型糖尿病患者(経口血糖降下剤使用患者)、妊娠糖尿病、インスリン2回注射法の1型糖尿病患者などである。
応用カーボカウント
食事中の炭水化物量に合わせてインスリン量を調整する方法である。
対象患者さんは、1日に3-4回インスリン注射を使用している1型糖尿病患者さん(2型糖尿病患者でも可)。インスリンポンプを使用している1型糖尿病患者である。
炭水化物の量だけに気を付けて蛋白質や脂質をたくさん食べては、糖尿病のコントロールは良くなったが心筋梗塞になったり、腎不全になったりして意味がない。医師や栄養士に相談されることをお勧めする。蛋白質と思っている食べ物にも炭水化物が入っているものだ。たとえば、餃子やハンバーグ、鳥の唐揚げを食べても血糖は上がる。餃子の具には炭水化物はほとんどないが、皮に炭水化物が含まれている。ハンバーグにもパン粉や牛乳などの炭水化物が含まれている。鶏の唐揚げには衣やタレに炭水化物が含まれる。ちなみに、焼き鳥には炭水化物は含まれていない。また、グライセミックインデックス(GI)も大切だ。
グライセミックインデックス(グリセミックインデックス、GI)
同じ炭水化物でも血糖の上がりやすい食物と上がりにくい食物がある。GI値が高い食物は血糖値が上昇しやすい。しかし、我々は単品で食べるわけではない。 脂質を多く含む食品を摂ると、血糖値の上昇に長時間要し、血糖上昇が遅延する。よって、ご飯と副食を一緒に食べると血糖値の上昇は少なくなる。ご飯の前に野菜を先に食べると、食物繊維のために血糖値は上昇しにくくなる。