夏季の血圧低下と降圧剤
夏季には血圧が下がるため、対応に苦慮されている患者さんも多いと思います。夏場の降圧薬一時中止は悪いことではありません。当院の外来高血圧患者の7割程度は冬場に比べて夏場は1~1.5剤減量しています。降圧剤減量をするかどうかの目安は、外来血圧よりも家庭血圧を、血圧測定値よりも眩暈・ふらつき・立ちくらみ・倦怠感などの低血圧症状、特に脳虚血症状が出るかどうかです。これを重視しています。
家庭血圧を測定されることをお勧めいたします
家庭血圧のチェックポイントは2点です。ひとつめは早朝家庭血圧です。夏場に日中から就寝前まで血圧低値を示しても早朝高血圧だけは残る方もいらっしゃいますから、要注意です。ふたつめは、仕事(特に肉体労働、高温多湿環境への暴露)や外出から帰宅後の血圧、女性であれば長時間台所で立ち仕事をする夕方の血圧です。夏場の過剰血圧低下が起きやすい時間帯だからです。一方、収縮期血圧が100mmHg台だから、110mmHg台だからと慌てたり、気にしないようにも指導しています。上記のような自覚症状があれば、水分摂取不足など脱水の状況がないかを確認した上で、降圧薬を減量してみます。過降圧で腎機能が悪化していないか気になるので夏場には一回は腎機能、電解質などの確認もしています。
降圧剤中止は慎重に
実際に中止までできるケースは少ないです。中止の条件最重要なのは患者さんの理解と信頼関係です。中止することが必ずしも「完治した」という訳ではないことを十分承知していただいた上で、家庭血圧測定を継続していただき、外来にも定期的に受診いただくことが大切です。中止可能なのは原則、臓器合併症がないⅠ度高血圧に限られると考えられます。蛋白尿など、臓器保護のためにARB常用量が選択されている症例であれば、Ca拮抗薬や利尿薬など他の降圧薬が併用されていたらそちらを先に減量、中止します。それでも過降圧の場合やもともとARB単剤の場合にはARB半量に減量します。ARB半量でも過剰に血圧が下がる場合にはACE阻害薬に変更するなどして、降圧目的ではなく臓器保護目的に可能な限り投与したいものです。ちなみに、心不全合併例や大動脈疾患合併例では収縮期血圧90mmHg未満でもあえてACE阻害薬やβ遮断薬が投与されていることが多いため、注意が必要です。