高齢者の積極的降圧療法に根拠、HYVET試験

02/01/2009

高齢者の積極的降圧療法に根拠、HYVET試験

今年の欧州高血圧学会/国際高血圧学会では、80歳以上の高齢者への積極的降圧治療が死亡リスクを低下させることなどを示した、大規模臨床試験「HYVET」が話題になった。

「HYVET」は80歳以上の高齢者を対象にしたランダム化比較試験。

利尿剤+ACE阻害剤による積極的治療(150/80 mmHgを目標に降圧剤を投与)を実施したグループに致死的・非致死的な脳卒中リスクの減少傾向がみられ、加えて脳卒中による死亡リスク、全死因死亡のリスクが有意に低下することも示した。

後期高齢者に対する降圧治療にはこれまでエビデンスがほとんどなく、「降圧目標をどうするか」「そもそも治療すべきなのか」などが議論になっていた。今後は、HYVETに匹敵するエビデンスが得られない限り、「80歳以上の高血圧患者にも積極的な薬物療法」が世界のスタンダードになりそうだ。

後期高齢者ではマイルドな降圧が求められるので、若い世代ほど下げないにしても、高齢者に対する降圧療法に積極的根拠を与えたHYVET試験の意義は大きい。

この試験はベースに利尿剤を、追加でACE阻害薬のペリンドプリルを上乗せする形で行われている。つまり、(若年者に比べて脱水になりやすい高齢者に対しても)利尿剤とACE阻害剤の併用療法が高齢者に対しても安全であることが証明されたのだ。降圧利尿剤はかつて降圧剤として広く用いられていたが、20年ほど前から使用されなくなってきた。その理由のひとつは糖代謝の悪化への懸念からである。しかし、近年の信頼できるエビデンスによれば、降圧利尿剤はその優れた降圧効果によって、糖代謝の悪化を補って余りある脳心血管合併症予防効果が示されている。最近のARB+利尿剤合剤ブームで降圧利尿剤見直しの機運が高まっているが、もっと評価されて良い薬剤である。