ACE阻害薬とARBの違い

09/11/2016

ACE阻害薬とARBの違い


ARB全盛のわが国であるが、世界的に見ればまだまだACE阻害薬が主流である。「ACE阻害薬は空咳の副作用があるからARBを」と考えてARBを出しがちであるが、本当にそれで良いのだろうか。

最近、この両者の使い分けについての話題が豊富になってきている。

ACE阻害薬はACEを阻害してブラジキニンの不活化を抑制する作用、ARBにはAT1受容体を直接阻害してAT2受容体を刺激する作用がある。この違いが両者の薬理作用の違いをもたらしている。

ブラジキニンは一酸化窒素(NO)、プロスタサイクリン、プラスミノーゲン・アクチベータ(tPA)の産生増加させるなどして血管新生促進作用を持つ。福岡大学の今泉らは冠動脈造影検査により、ACE阻害薬投与群で側副血行路が増えるのに対し、ARB投与群ではむしろ減少することを観察している。熊本大学の光山氏によれば、ACE阻害薬は組織親和性が高いほど臓器保護作用が優れており、組織親和性はACE阻害薬間で異なることに注目することが重要であるという。虚血の既往があり、血管新生作用に期待したい患者にはACE阻害薬のほうが望ましいのかも知れない。

では、どのACE阻害薬を選べば良いのだろうか?ACE阻害薬の中で組織親和性が最も高いのはペリンドプリル(コバシル)であり、組織ACE活性を確実に抑制することが臨床的にも観察されている (Zuho J .et al.Hypertension 39:634-638.2002)。また、ペリンドプリルのみが通常の用量で血管リモデリングの退行を示すことが知られている。光山氏によると、ペリンドプリルのほうがエナラプリル(レニベース)よりも血管でのACE活性抑制効果が有意に強く、降圧の持続時間が長いという。

組織移行性の高いACE阻害薬としてはコバシル以外にはイミダプリル(タナトリル)やラミプリル(国内未承認)がある。ちなみにタナトリルは咳の副作用を利用した誤嚥防止作用も期待できる