副甲状腺とカルシウムの病気|高カルシウム血症・低カルシウム血症の原因と検査|しもやま内科(船橋市)

🔊 このページの要点

副甲状腺はカルシウムの量を調節する臓器です。カルシウムが高すぎたり低すぎたりすると、だるさ・のどの渇き・尿の回数が多い・骨がもろくなる・手足のしびれやけいれんなど様々な症状が出ることがあります。このページでは、高カルシウム血症・低カルシウム血症の原因と検査の流れ、しもやま内科での対応について専門医がわかりやすく解説します。

副甲状腺とカルシウムの関係を説明する日本人医師のイメージ(高カルシウム血症・低カルシウム血症の原因と検査)
副甲状腺とカルシウムの病気について、首のシルエットとCa2+・骨・腎臓のアイコンで
「カルシウムのバランス」を説明するイメージ図

「健診でカルシウムが高いと言われた」「副甲状腺ホルモン(PTH)が高いと言われた」「手足のしびれやこむら返りが多く、カルシウムが低いと言われた」…こうした結果は、副甲状腺とカルシウムのバランスの異常が隠れているサインかもしれません。

副甲状腺の病気は、症状があいまいで見過ごされやすい一方、骨粗鬆症や腎臓の負担、尿路結石などにつながることもあります。このページでは、内分泌・総合内科の立場から、カルシウム異常と副甲状腺の関係、検査の進め方、当院での対応についてご説明します。


副甲状腺とカルシウムの関係

副甲状腺は、甲状腺のうしろ側にある小さな臓器で、通常は4つあります。ここから分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)が、血液中のカルシウムの量を細かく調節しています。

副甲状腺ホルモン(PTH)の主な働き

  • 骨からカルシウムを血液中に動員する
  • 腎臓でカルシウムを再吸収し、尿に出ていく量を減らす
  • 活性型ビタミンDを増やし、腸からのカルシウム吸収を高める

この働きにより、血液中のカルシウム値が低くなるとPTHが増え、高くなるとPTHが抑えられるようになっています。つまり、カルシウムとPTHはシーソーのような関係にあります。

カルシウム・リン・ビタミンDのバランス

カルシウムの調節には、PTHだけでなくリンビタミンD、腎臓の働きも深く関わっています。慢性腎臓病(CKD)があるとリンがたまりやすく、ビタミンDが不足し、結果としてPTHが高くなることがあります。


よくみられる異常①:高カルシウム血症と副甲状腺機能亢進症

血液中のカルシウムが基準値より高い状態を高カルシウム血症といいます。原因はさまざまですが、代表的なもののひとつが副甲状腺機能亢進症です。

原発性副甲状腺機能亢進症(腺腫など)

副甲状腺自体に良性の腫瘍(副甲状腺腺腫など)ができると、PTHが必要以上に分泌され、カルシウムが高くなります。比較的若い方から高齢の方まで幅広い年齢でみられます。

二次性・三次性副甲状腺機能亢進症(慢性腎臓病など)

  • 二次性副甲状腺機能亢進症:慢性腎臓病(CKD)などが原因で、低カルシウム・高リンの状態が続き、その「二次的な反応」としてPTHが高くなるタイプ
  • 三次性副甲状腺機能亢進症:二次性の状態が長年続いた結果、副甲状腺が自律的に働くようになり、カルシウムが高くなってしまうタイプ

高カルシウム血症で出やすい症状

高カルシウム血症があると、次のような症状がみられることがあります。

  • だるさ、倦怠感
  • のどの渇きや尿の回数が多い(多飲・多尿)
  • 便秘・食欲低下・吐き気
  • 骨がもろくなり、骨粗鬆症や骨折のリスクが上がる
  • 尿路結石(腎結石・尿管結石)

ただし、かなりカルシウムが高くなるまで無症状のことも多く、健診で初めて指摘されるケースも少なくありません。


よくみられる異常②:低カルシウム血症と副甲状腺機能低下症

カルシウムが基準値より低い状態を低カルシウム血症といいます。副甲状腺ホルモンが十分に出ていない副甲状腺機能低下症のほか、ビタミンD不足やマグネシウム不足なども原因になります。

手足のしびれ・こむら返り・テタニー

代表的な症状は次のようなものです。

  • 手や口のまわりのピリピリしたしびれ
  • ふくらはぎのこむら返り
  • 手がこわばって開きにくい、筋肉のつっぱり感
  • 重症では全身のけいれん(テタニー)

甲状腺術後などの副甲状腺機能低下症

甲状腺の手術後に、副甲状腺が一時的または持続的に働きにくくなり、低カルシウム血症をきたすことがあります。この場合は、カルシウム製剤やビタミンD製剤による内服治療が必要になることがあります。

ビタミンD不足や低マグネシウム血症との関係

日光に当たる機会が少ない、食事に偏りがある、消化管の病気があるなどでビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収が悪くなり、PTHが高くなってもカルシウムがなかなか上がらないことがあります。また、マグネシウムが低いとPTHがうまく働かない場合もあります。


副甲状腺・カルシウムの検査:当院で行う評価

カルシウムやPTHの異常が疑われる場合、次のような検査を組み合わせて評価します。

血液検査

  • 血清カルシウム・補正カルシウム
  • リン
  • 副甲状腺ホルモン(PTH)
  • ビタミンD(25(OH)D など)
  • クレアチニン・eGFRなど腎機能
  • アルブミン、ALP など

「カルシウムが高い/低い」といっても、アルブミンの値や腎機能を考慮して評価することが大切です。また、一度だけの異常か、継続しているかどうかを確認するために、再検査を行うこともあります。

画像検査

  • 頸部エコー:副甲状腺腺腫などの有無を確認
  • 骨密度検査:骨粗鬆症になっていないか評価(必要に応じて連携医療機関で実施)
  • 腎・尿路のエコー:尿路結石の有無を確認(必要に応じて)

どのようなときに専門病院での精査・手術を検討するか

次のような場合には、手術を含めた治療を検討するため、連携する専門医療機関にご紹介することがあります。

  • カルシウムが明らかに高い状態が続いている
  • 尿路結石や腎機能低下を繰り返している
  • 骨密度が低く、骨折リスクが高い
  • 画像検査で副甲状腺腺腫が疑われる

しもやま内科で対応できること・紹介の流れ

しもやま内科では、内分泌疾患を含む総合内科の視点から、カルシウム・PTH異常を総合的に評価します。

  • 健診でカルシウムやPTH異常を指摘された方の再検査・精査
  • 慢性腎臓病・糖尿病など、他の病気との関連も含めた評価
  • 必要に応じた骨粗鬆症の評価・治療
  • 手術や専門的治療が必要と判断されるケースの、近隣基幹病院への紹介

「手術が必要かどうか」「このまま様子を見て良いのか」など、不安な点があればご相談ください。状況に応じて、最適な検査や紹介先を一緒に考えていきます。


「こんなときはご相談ください」受診の目安

  • 健診でカルシウムが高い/低いと言われた
  • PTHが高いと言われたが、詳しい説明を受けられていない
  • 尿路結石を繰り返していると言われた
  • 骨粗鬆症があり、原因の精査を勧められている
  • 甲状腺の手術後から手足のしびれやこむら返りが増えた
  • 慢性腎臓病があり、カルシウムやリン、PTHの値が気になっている

受診のタイミングに迷う場合は、いきなり精密検査ではなく、まずは血液検査と診察で全体像を整理することから始めるのがおすすめです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 健診でカルシウムが少し高いと言われました。すぐに治療が必要ですか?

A. 一度だけの軽度の高値で、症状もない場合、すぐに治療が必要とは限りません。再検査で本当に高い状態が続いているか、アルブミンやPTH、腎機能、ビタミンDなどを合わせて評価することが大切です。しもやま内科では、異常の程度や背景の病気に応じて、必要な検査の範囲をご相談しながら決めていきます。

Q2. 副甲状腺機能亢進症は必ず手術になりますか?

A. すべての方が手術になるわけではありません。カルシウムの高さ、症状の有無、骨密度、腎機能、年齢などを総合して判断します。条件によっては、経過観察や内服治療で様子を見る場合もあります。手術が望ましいケースでは、連携する専門病院をご紹介します。

Q3. 骨粗鬆症と副甲状腺の病気には関係がありますか?

A. はい、関係があります。PTHが高い状態が続くと、骨からカルシウムが溶け出しやすくなり、骨粗鬆症の悪化につながると考えられています。骨粗鬆症の評価とあわせて、副甲状腺やカルシウムの検査を行うことで、より適切な治療方針が立てやすくなります。

Q4. カルシウムのサプリメントを飲んでいますが、そのまま続けていいでしょうか?

A. カルシウムのサプリメントは、骨粗鬆症治療の一環として役立つ場合もありますが、高カルシウム血症や尿路結石のリスクを高めることもあります。血液検査の結果や腎機能、尿路結石の既往などを確認したうえで、続けるかどうか判断することをおすすめします。

Q5. 慢性腎臓病とカルシウム・リンの異常にはどんな関係がありますか?

A. 慢性腎臓病になると、リンが体にたまりやすくなり、ビタミンDも作りにくくなります。その結果、カルシウムが下がり、PTHが高い状態(二次性副甲状腺機能亢進症)になりやすくなります。カルシウム・リン・PTHのバランスを整えることは、心血管病や骨病変の予防にも重要です。

Q6. 手足のしびれやこむら返りは、低カルシウムが原因のことがありますか?

A. はい、その可能性があります。低カルシウム血症では、手や口のまわりのしびれ、筋肉のつっぱり、こむら返り、けいれんなどがみられることがあります。ただし、神経や筋肉の病気、電解質異常など他の原因でも似た症状が出るため、血液検査で原因を確認することが大切です。

Q7. 他院で副甲状腺の手術を勧められました。セカンドオピニオンは可能ですか?

A. 可能です。これまでの検査結果や紹介状をお持ちいただければ、手術の適応やタイミング、他の選択肢について一緒に整理し、必要に応じて連携病院とも相談しながら方針を検討いたします。


船橋市周辺で副甲状腺・カルシウムの相談先をお探しの方へ

しもやま内科は、千葉県船橋市にある内科クリニックです。糖尿病や甲状腺疾患に加え、副甲状腺・カルシウム異常などの内分泌疾患についてもご相談をお受けしています。

  • 健診でカルシウムやPTH異常を指摘された方
  • 骨粗鬆症や尿路結石があり、原因を詳しく知りたい方
  • 慢性腎臓病のフォロー中で、カルシウム・リン・PTHが気になる方

船橋市・習志野市・八千代市・鎌ケ谷市など、近隣エリアからの受診も多くあります。受診をご希望の方は、代表電話 047-467-5500 までお問い合わせください(Web予約は行っておりません)。

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副甲状腺など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。