薬剤性甲状腺機能異常
代表はアミオダロン、ヨウ素負荷(造影剤・うがい薬)、免疫チェックポイント阻害薬です。甲状腺機能亢進・低下はいずれも起こり得るため、服薬歴と経時的なTSH/FT3/FT4で評価し、原因に応じてβ遮断薬・抗甲状腺薬・ステロイド・レボチロキシンを適切に選択します。

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循環器(アミオダロン関連)
アミオダロン誘発甲状腺症(AIT)
なぜ起こる? ヨウ素含有量が多く、甲状腺に影響。Type 1(基礎に多結節性甲状腺腫や潜在バセドウがあり、ヨウ素過剰で産生過剰)と、Type 2(破壊性甲状腺炎で放出亢進)に大別。
- 鑑別の目安:甲状腺血流(ドプラ)、抗体(TRAb)、Tg・TPOAb、IL-6、時にシンチ所見/混合型もあり。
- 治療:
- Type 1:抗甲状腺薬(メチマゾール等)±無機ヨウ素回避、難治例はKClO4や手術検討。
- Type 2:プレドニゾロンなどステロイド(漸減)。
- 共通:症状にβ遮断薬。アミオダロン継続の可否は循環器と協議。
- 低下症:TSH高値・FT4低値ではレボチロキシン補充。アミオダロン継続でも補充可能。
ヨウ素負荷(造影剤・うがい薬)
- 背景:CT造影、PCI前後、ポビドンヨード系うがい薬などで一過性のヨウ素過剰。
- 起こり方:基礎に結節性甲状腺腫や潜在バセドウがあるとJod-Basedowで亢進症を来しやすい。逆に一過性低下症も。
- 対応:予定造影前は既往とTSHを確認。発症時はβ遮断薬、必要に応じ抗甲状腺薬。ヨウ素含有製品は一時中止や減量を検討。
- 注意:RAI治療予定者は造影ヨウ素で治療が遅れるため、事前調整が必要。
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)
- 機序:免疫関連有害事象(irAE)として破壊性甲状腺炎→低下症の経過を辿ることが多い。
- 評価:治療開始後は定期的にTSH/FT4(必要に応じFT3)をモニター。
- 対応:甲状腺中毒症期はβ遮断薬で対症。重症や持続例でステロイドを検討。低下症へ移行したらレボチロキシン補充(体調・心機能に応じ段階的に)。
- ICI継続:生命危機的でなければ多くは継続可能。中断・再開は腫瘍内科と協議。
実践のコツ
- まず服薬・処置歴(開始時期・量・中止可否)を確認。
- 亢進か低下かをTSH/FT4(±FT3)で同定し、症状強度で初期対応(β遮断薬/補充)を先行。
- アミオダロン中の不整脈リスクは循環器科と即連携。ICI中は腫瘍内科と方針共有。
ご相談ください:原因薬や背景疾患により方針は変わります。必要に応じて循環器・腫瘍内科と連携し、過不足のない治療を提案します。
よくある質問
アミオダロンはすぐ中止すべき?
不整脈リスクを伴うため循環器科と協議が必須です。Type 1/2や重症度で中止可否・代替を検討します。
造影検査は受けても大丈夫?
基礎疾患とリスクにより対応が異なります。必要時は受けられますが、事前の評価と事後のモニターが重要です。
ICIは中止になりますか?
多くは継続可能です。重症例では一時中断を検討し、腫瘍内科と連携して再開可否を判断します。
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長/日本甲状腺学会 甲状腺専門医 ほか
しもやま内科 院長/日本甲状腺学会 甲状腺専門医 ほか
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