内分泌内科

PCOSと甲状腺の関連|不妊治療前に確認したい検査を専門医が解説

PCOSと甲状腺の関連

🔊 このページの要点

PCOSと甲状腺機能は不妊や妊娠経過に影響することがあります。妊娠前にTSH・甲状腺抗体・FT4、必要に応じて甲状腺エコーを確認し、ガイドラインに沿って管理します。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は排卵障害を通じて不妊の一因になり得ますが、同時に甲状腺機能が妊娠率や流産リスクへ影響する可能性が指摘されています。明確な因果関係は確立していないものの、妊娠前(不妊治療前)に甲状腺の状態を評価しておくことは、全体の治療戦略を立てるうえで実践的です。本ページでは、専門医の視点で「妊娠前に確認したい検査」と解釈のコツ、対応方針を整理します。

PCOSと甲状腺の関係性

  • 関連を示す報告がある:PCOS患者では自己免疫性甲状腺疾患(橋本病など)の併存がやや多いとされる研究がある一方、因果関係は確定的ではありません。
  • 臨床での含意:甲状腺ホルモンは排卵・着床・妊娠維持に関与するため、妊娠前にTSHの目安を満たすか、自己抗体の有無を把握しておくと治療計画が立てやすくなります。

妊娠前に確認したい検査

1. TSH(甲状腺刺激ホルモン)

  • 目標の目安:不妊治療前はTSH 2.5未満が望ましいとされます(ガイドライン準拠)。
  • 高めのとき:無症状でも、状況に応じて少量レボチロキシンの検討対象になります。

2. FT4(遊離サイロキシン)

  • TSHと併せて評価し、実際の甲状腺ホルモン状態を把握します。TSH単独の異常時にもFT4で過不足を確認します。

3. 甲状腺抗体(TPOAb・TgAb)

  • 自己免疫の指標。陽性例では流産リスクがやや上昇する報告があるため、治療計画上の留意点になります。
  • ただしTSHが正常なら原則は経過観察。過剰治療は避け、計画的にモニターします。

4. 甲状腺エコー

  • 構造評価(腫大、びまん性変化、結節)に有用。自己免疫性変化の示唆や結節の存在を確認し、必要に応じてフォロー計画を立てます。

検査結果の読み方と対応

  • TSH高値:妊娠前は2.5未満を目安に。治療導入や増減は臨床所見・抗体・妊活スケジュールを総合して判断します。
  • 抗体陽性:TSHが正常なら定期フォローが基本。妊娠後はTSHの推移に注意します。
  • TSH低値:甲状腺中毒症の除外が必要。妊娠成立後はhCGによる一過性低下(妊娠時一過性甲状腺機能亢進症)も鑑別に入ります。

PCOS治療との並走

排卵誘発、体重・食事・運動介入、メトホルミンなどのPCOS治療と甲状腺管理を並走させます。妊娠判定後は、産婦人科を中心に内科(内分泌)が併走し、TSH目標の維持・血糖や血圧の管理を統合的に行います。

しもやま内科で可能なこと

  • 採血:TSH、FT4、TPOAb/TgAb など
  • 甲状腺エコー:当日評価可(必要に応じて)
  • 連携:生殖医療クリニック・産婦人科との情報共有と併診体制

不妊治療前の甲状腺チェックをご希望の方は、お電話でご相談ください


☎ 047-467-5500

診療時間内にお電話ください。状況に応じ、生殖医療クリニックや産科と連携します。

よくある質問(FAQ)

Q. PCOSと甲状腺は関係がありますか?

A. 明確な因果関係は確定していませんが、PCOSの方に自己免疫性甲状腺疾患がやや多いとする報告があります。臨床上は妊娠前に評価しておくと安心です。

Q. 妊娠前のTSHはどのくらいが望ましいですか?

A. 一般に2.5未満が目安です。値や抗体の有無、治療計画を総合して調整します。

Q. 抗体(TPOAb/TgAb)が陽性なら治療が必要ですか?

A. TSHが正常であれば経過観察が基本です。妊娠判定後はTSH推移に注意します。

Q. 甲状腺エコーは全員必要ですか?

A. 全例必須ではありませんが、TSH異常や抗体陽性、頸部所見がある場合に有用です。

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医

糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

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