甲状腺癌と診断された方へ|治療方針と術後フォローのポイント

甲状腺癌と診断された方へ

甲状腺に「がん」があると言われたとき、多くの方が「命に関わるのでは」「すぐに手術が必要かも」と不安に感じるかもしれません。

しかし、甲状腺癌はその多くが進行がゆるやかで予後が良好なタイプであり、適切な診断と治療、そして定期的なフォローアップによって安定した経過をたどることができます。

このページでは、甲状腺癌の基本的な種類や治療、術後管理について、専門医の立場からわかりやすく解説します。

不安なまま一人で悩まず、まずは正しい知識を持ちましょう。
船橋市のしもやま内科では、甲状腺専門医が一人ひとりに合った方針をご提案しています。
甲状腺癌の治療|乳頭癌・濾胞癌・髄様癌|船橋市のしもやま内科 下山医師による解説

甲状腺癌の種類と特徴

甲状腺癌にはいくつかの種類があり、それぞれに性質や治療方針が異なります。最も多いのは乳頭癌で、進行がゆるやかで予後も良好とされています。

癌の種類 特徴 予後
乳頭癌(Papillary carcinoma) 最も頻度が高く、進行がゆるやか。リンパ節転移が多いが管理しやすい。 非常に良好
濾胞癌(Follicular carcinoma) 血行性に骨や肺へ転移することがある。診断には病理評価が重要。 良好~中等度
髄様癌(Medullary carcinoma) カルシトニンを分泌。遺伝性(MEN2)に関連することも。 中等度(早期発見が鍵)
未分化癌(Anaplastic carcinoma) 極めて進行が速く、非常にまれ。高齢者に多く予後不良。 不良

頻度としては、乳頭癌と濾胞癌で全体の90%以上を占めます。これらを合わせて分化癌(Differentiated thyroid carcinoma)と呼び、手術や放射性ヨウ素治療で治療可能なことが多いです[1][2]


[1] 日本甲状腺学会 甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2022年版
[2] NCCN Guidelines® Thyroid Carcinoma. Version 2.2024

甲状腺癌の治療方針

甲状腺癌の治療は、がんの種類・大きさ・進行度・年齢・合併症の有無などを考慮して個別に決定されます。最も基本となる治療は外科手術ですが、補助的な治療も重要な役割を果たします。

1. 手術療法(甲状腺全摘/葉切除)

  • 乳頭癌・濾胞癌では、腫瘍径や浸潤の有無によって「甲状腺葉切除」または「甲状腺全摘術」が選択されます。
  • リンパ節転移のある場合は、頸部リンパ節郭清も追加されます。

2. 放射性ヨウ素(RAI)治療

  • 甲状腺全摘術後、分化癌に対して再発リスクが高い症例に実施されます。
  • RAI治療は、甲状腺の残存組織や微小転移を消失させる目的で使用されます。

3. ホルモン補充療法とTSH抑制

  • 術後は、甲状腺ホルモン(レボチロキシン)補充が必要です。
  • 再発予防のために、TSH抑制療法を併用することがあります。

4. 経過観察(Active Surveillance)

  • 最近では、5mm~1cm以下の微小乳頭癌(PTMC)に対し、手術を行わず定期的に経過観察する方法が注目されています。
  • 高齢者や合併症のある方でも選択される場合があります。

5. その他の補助療法

  • 髄様癌では、血中カルシトニンやCEAのモニタリングが重要です。
  • 未分化癌や進行例では、放射線療法・分子標的薬治療が選択されることもあります。

しもやま内科では、甲状腺専門医による丁寧な診断と説明を行い、必要に応じて高次医療機関と連携しながら、最適な治療方針をご提案いたします。


[1] 日本甲状腺学会 甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2022年版
[2] Ito Y et al. "An observational trial for papillary thyroid microcarcinoma in Japanese patients." World J Surg. 2010;34(1):28–35.
[3] NCCN Guidelines® Thyroid Carcinoma. Version 2.2024

術後フォローアップと再発予防のポイント

甲状腺癌は予後良好ながんですが、術後の再発予防と定期的なチェックは重要です。特に乳頭癌や濾胞癌では、再発のリスクがゼロではないため、以下のような術後管理が推奨されます。

1. 定期的な超音波検査(頸部エコー)

  • 頸部リンパ節の再発や残存腫瘍の確認に有用です。
  • 術後6か月~1年ごとに行い、長期的に経過を追います。

2. 血液検査による腫瘍マーカー測定

  • 乳頭癌・濾胞癌では、サイログロブリン(Tg)が腫瘍マーカーとして使われます。
  • 髄様癌では、カルシトニン・CEAを定期測定します。

3. TSH抑制療法の継続

  • 再発予防のため、TSHを0.1未満に抑えるようホルモン補充療法を調整します。
  • ただし、高齢者や心疾患のある方では慎重な調整が必要です。

4. 放射性ヨウ素治療後の全身スキャン

  • RAI治療を受けた方では、アイソトープ全身シンチグラフィーにより遠隔転移の有無を確認します。

5. 妊娠・出産を希望する方への配慮

  • 妊娠前に十分な治療と評価が済んでいることが重要です。
  • 術後ホルモン補充を続けながら、妊娠が可能な例も多くあります

しもやま内科では、定期的なエコー・採血・必要に応じたホルモン調整を通じて、甲状腺癌術後の長期管理を行っています。ご不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。


[1] 日本甲状腺学会 甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2022年版
[2] 日本内分泌外科学会 甲状腺癌取扱い規約 第9版
[3] NCCN Guidelines® Thyroid Carcinoma. Version 2.2024

不安を抱える方へ|早期発見と専門医による診療の重要性

健診や他院で「甲状腺にしこりがある」「甲状腺癌かもしれない」と言われ、不安を感じている方も多いと思います。しかし、甲状腺癌の多くはゆっくり進行し、適切な診断と治療を行えば良好な予後が期待できます

まずは専門医の診断を受けることが大切です

  • 甲状腺の専門医は、エコー所見や細胞診、血液検査などを組み合わせて的確に評価を行います。
  • しもやま内科では、初期の不安を軽減する丁寧な説明を心がけています。

甲状腺癌は“早期発見・早期対応”が鍵

  • 超音波検査と穿刺吸引細胞診により、手術の必要性や経過観察の方針を判断できます。
  • 微小乳頭癌などは、すぐに手術をせずに経過観察する選択肢もあります。

安心して治療に臨むために

  • インターネットの情報に惑わされず、正しい知識とガイドラインに基づいた診療を受けましょう。
  • ご希望があれば、高次医療機関との連携やセカンドオピニオンのご案内も可能です。

しもやま内科では、日本甲状腺学会認定の専門医が在籍し、地域のかかりつけ医として皆様の不安に寄り添う診療を提供しています。
「まず相談してみたい」「検査だけでもしておきたい」という方も、どうぞお気軽にご来院ください。


[1] 日本甲状腺学会 甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2022年版
[2] NCCN Guidelines® Thyroid Carcinoma. Version 2.2024
[3] Ito Y, et al. World J Surg. 2010; 34(1):28-35.

📝 よくあるご質問(FAQ)

甲状腺癌は治りますか?

予後の良い「乳頭癌」「濾胞癌」が多く、早期に発見・治療すれば高い確率で治癒が期待できます。

手術は必ず必要ですか?

がんの種類・大きさ・進行度によって異なります。微小癌などは経過観察で済む場合もあります。

再発の可能性はありますか?

定期的な超音波検査や血液検査により再発の早期発見が可能です。多くは再発せず安定した経過をとります。

手術後にホルモン補充は必要ですか?

甲状腺を全摘した場合は、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンSなど)の補充が必要になります。

妊娠や出産に影響はありますか?

適切な治療とホルモン管理を行えば、妊娠・出産は可能です。妊娠を希望する場合は早めに医師に相談しましょう。

悪性度の高い甲状腺がんもあるのですか?

未分化癌や髄様癌など、まれに進行が速いタイプもありますが、早期発見と専門医の診療が鍵となります。

他の臓器に転移することはありますか?

乳頭癌・濾胞癌ではリンパ節や肺、骨への転移が見られることもありますが、適切な治療により制御可能です。

しこりがあってもすぐに手術になるのでしょうか?

すべての結節が手術対象になるわけではありません。エコーや細胞診の結果をもとに総合的に判断します。

術後はどれくらいの頻度で通院が必要ですか?

術後1年は3〜6ヶ月ごとの通院が一般的で、再発の兆候がなければ徐々に間隔を空けていきます。

不安が強いのですが、どうすればよいですか?

不安を抱えたままにせず、まずは専門医にご相談ください。丁寧にご説明いたします。

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☎ 047-467-5500(しもやま内科)

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。