甲状腺結節の細胞診(FNA)ガイド|適応(TI-RADS)・手技と合併症・Bethesda分類・再検時期|しもやま内科(船橋市)

甲状腺結節の細胞診(FNA)ガイド

FNAは、超音波所見(TI-RADS)と結節サイズから適応を判断します。超音波ガイド下で細い針を用いる低侵襲検査で、痛みと合併症は通常軽微です。結果はBethesda分類(I–VI)で示され、不適正・不確定例は再穿刺、良性は超音波経過観察、悪性/疑いは専門的治療方針の検討へ進みます。

甲状腺結節の細胞診(FNA)ガイド:TI-RADS適応・手技と合併症・Bethesda分類・再検タイミング

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甲状腺結節が見つかったとき、どの結節にFNAが必要か検査の流れ・リスク結果(Bethesda)の読み方再検の目安を理解しておくと、過不足のない検査と安全なフォローにつながります。当ページでは臨床の現場で役立つ実践的ポイントを簡潔に整理しました。

適応(超音波TI-RADSの考え方)

FNAの実施は、超音波での悪性所見の強さ(TI-RADSスコア)結節径で判断します。一般的な目安は以下の通りです(施設方針・個別因子で調整)。

  • 高リスク所見(高TI-RADS):微小石灰化、辺縁不整、縦長(AP高)、低エコー、充実性などが多い結節は、1cm前後からFNA検討
  • 中等度リスク:1.5〜2.0cm以上でFNA検討。増大傾向やリンパ節所見があれば閾値を下げます。
  • 低リスク(のう胞優位・等/高エコー):基本は経過観察。3cm以上で圧迫症状や進行があればFNA/治療を検討。
  • 特別な状況:小児、既往歴(放射線曝露、家族内甲状腺がん)や、臨床的に悪性が強く疑われるときは、サイズにかかわらず個別判断。

※サイト運用上の総論は「甲状腺のしこり(総論)」をご参照ください。

手技と合併症

手技の流れ

  1. 超音波で標的結節を同定し、穿刺ルートを計画
  2. 皮膚消毒(必要に応じ局所麻酔)
  3. 超音波ガイド下に細針(通常23–27G)で穿刺し、陰圧または毛細管現象で採材
  4. 塗抹標本作製(必要に応じ迅速評価)
  5. 圧迫止血・短時間の安静

痛み・出血など

  • 疼痛:多くは軽度・一過性。
  • 出血・血腫:圧迫で自然軽快がほとんど。抗凝固薬内服時は事前評価・調整が必要。
  • 感染:稀。無菌操作の徹底。
  • 嗄声:極めて稀。違和感が持続すれば連絡を。
当日の注意:強い揉みほぐし・過度な頸部運動は当日控え、出血傾向・腫脹感が続く場合はご連絡ください。

結果の見方(Bethesda I–VI 早見表)

カテゴリ 診断の意味 一般的対応
I 不適正/非診断的 材料不足・評価困難 超音波所見を踏まえ再穿刺(通常4–12週目安)
II 良性 腺腫様結節/のう胞変性/慢性甲状腺炎など 超音波経過観察(増大や新規リスク出現で方針再検討)
III 意味不明な意義(AUS/FLUS) 良悪の境界的所見 臨床・超音波リスクに応じ再穿刺/分子診断考慮/経過
IV 濾胞性腫瘍/疑い 濾胞癌/腺腫の鑑別が必要 外科的評価(葉切除など)を検討
V 悪性疑い 乳頭癌ほかを強く示唆 外科的治療方針の検討(画像/リンパ節評価)
VI 悪性 乳頭癌・未分化・髄様など 確定診断として外科的治療方針

再検タイミング(目安)

  • Bethesda I:4–12週で再穿刺(出血や炎症が落ち着いてから)。
  • Bethesda II(良性):6–12か月後に超音波再評価。増大(例:20%以上の体積増)や新規高リスク所見でFNA再検討。
  • Bethesda III3–6か月で再穿刺や分子診断を個別検討。
  • IV–VI:外科的評価/治療方針へ(連携施設と協議)。

ご相談ください:結節の性状やサイズ、既往歴によって最適な方針は異なります。検査の必要性や時期に迷う場合は、当院にご相談ください。

よくある質問

FNAは痛いですか?麻酔はしますか?
痛みは軽度~中等度で、局所麻酔を併用すると多くの方が許容範囲です。処置は数分で終了します。
抗凝固薬・抗血小板薬を飲んでいます。検査できますか?
薬剤の種類・リスクに応じて個別判断します。事前申告をお願いします。中止可否は処方元とも連携して決めます。
のう胞(液体)が多い結節でもFNAは必要ですか?
低リスク例は経過観察が基本です。再発性の腫脹や不快感が強い場合は穿刺吸引・エタノール注入などを検討します。
Bethesda II(良性)でもがんの可能性はゼロではない?
ゼロではありませんが低いと考えられます。超音波フォローで増大や新規高リスク所見があれば方針を見直します。
Bethesda I(不適正)になった理由は?どうすれば防げる?
出血混入、のう胞液優位、材料量不足などが原因です。再穿刺時期の調整超音波ガイド下のターゲティングで改善します。
妊娠中にFNAはできますか?
多くは可能です。緊急性が低い場合は産後に延期する選択もあります。個別に主治医・産婦人科と相談します。
結果が出るまでの期間は?
施設により異なりますが、通常数日〜1〜2週間程度です。病理追加検査が必要な場合は延びることがあります。

地域の皆さまへ|船橋市
当院では超音波検査を当日実施可能です。必要に応じて連携施設での細胞診・外科的治療も速やかにご案内します。

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医

糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

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