甲状腺内科

甲状腺ホルモン不応症

甲状腺ホルモン不応症

甲状腺ホルモン不応症(RTH)は、甲状腺ホルモンに対する標的臓器の反応性が減弱している家族性症候群と定義されます。甲状腺ホルモンの甲状腺ホルモン受容体(TR)を介した作用の低下による先天性疾患です。

TRをコードする遺伝子にはα型(TRα)とβ型(TRβ)の2つがありますが、不適切TSH分泌症候群(SITSH)を呈するRTH家系の約85%にTRβ遺伝子変異が認められることからTRβ異常症(RTHβ)とよばれます。

TRβ遺伝子変異は187種類、2割は孤発例です。推定頻度は4万人に1人であり、男女差はありません。

変異TRβによるドミナントネガティブ機構により常染色体優性遺伝を示します。標的臓器では甲状腺ホルモンの効果が発揮されずに甲状腺機能低下症の状態となりますが、下垂体での不応性をのためTSHは過剰分泌され、血中甲状腺ホルモンは高値となって代償されています。

残りの約15%の家系における原因遺伝子は明らかでないが、TRβ遺伝子変異を伴う家系と変異が認められない家系の臨床症状は区別がつかないことから、何らかの原因でTRβの機能が障害され発症するものと考えられています。

TRα異常症

SITSHを呈しないこれまで末梢型といわれていたRTHの原因遺伝子として、最近になってTRα遺伝子変異が発見されました。TRα異常症(RTHα)とよばれます。

RTHの臨床像

甲状腺ホルモン不応症は全身型,下垂体型,末梢型の3種類にに区別されます。

末梢組織の不応性の方が下垂体の不応性より強ければ全身状態としては機能低下症となり低身長や知能低下、骨発育不全を認めることがあります(全身型)。
逆に、下垂体の不応症の方が末梢組織より強ければ機能亢進症となります。小児ではADHDを呈することがあります(下垂体型)。

しかし、全身の多くの臓器にはTRαも発現しており、TRαとTRβの発現する割合は臓器により異なるため、実際には全身の不応性は不均一となります。たとえば、心臓ではTRαの発現が優位であるため、過剰の甲状腺ホルモンに反応して頻脈となります。罹患妊婦では流産率が高く、子のTRβが正常であれば低体重となりやすいといわれています。

TRβ遺伝子の異常が発見される以前は、甲状腺ホルモン不応症は臨床的に低下症状が強い全身型と、亢進症状が強い下垂体型に区別されていました。但し、実際には、同一家系内でも症状に差があり、事実その遺伝子異常は同一のものであることが判明し、全身型と分類されていた者でも頻脈があるなど、むしろ症状の差は、臓器レベル、個体レベル、あるいは、その時の甲状腺ホルモンレベルで変わるものと考えられます。

最近TRα異常症が発見され,これは末梢型甲状腺ホルモン不応症と考えられます。

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