成長・学業の観点で評価します。だるさ・眠気・体重増・集中力低下・寒がりが続けば、小児基準でTSH/FT4と抗体(TPOAbなど)を確認。レボチロキシンは体重・年齢を踏まえて開始し、TSHを目標範囲に保つよう2〜6週おきに微調整します。
小児・思春期の橋本病(自己免疫性甲状腺炎)は、成長・発達・学校生活に影響し得ます。成人と同じ検査でも、年齢別基準で判断する点が重要です。当院ではTSH/FT4(±FT3)と抗体、甲状腺エコーを軸に、症状・成長曲線・学業への影響を総合してレボチロキシン(LT4)の用量を丁寧に調整します。
1. 症状の見分け方(家庭で気づきやすいサイン)
- 全身:だるさ、眠気、体重増、寒がり、便秘、皮膚の乾燥
- 学業・生活:集中力低下、学業や部活のパフォーマンス低下、朝起きにくい
- 頸部:首の腫れ(びまん性)、嚥下違和感、嗄声
- 月経:初経遅延・月経不順、過多月経
※ 強い倦怠や意識障害、著明な徐脈・低体温など重篤な低下症状が疑われる場合は早急に受診してください。
2. 検査のポイント(小児基準で判断)
- 採血:TSH高値・FT4低値(顕性低下)/TSH軽度高値・FT4正常(潜在性低下)。抗TPO抗体(±抗サイログロブリン抗体)。
- エコー:びまん性低エコー・粗造化、腫大の程度、結節の有無。
- 成長・発達:身長・体重曲線、思春期発来、学業や生活への影響を合わせて評価。
3. レボチロキシン(LT4)の開始と調整
- 開始の目安:顕性低下は原則開始。潜在性でも症状・TSHの高さ・甲状腺腫の程度・抗体価・成長や学業への影響を踏まえ個別判断。
- 初期用量:年齢・体重・病勢を踏まえて設定(例:低年齢ほど/体重あたり投与量は多めになりやすい)。
- 調整サイクル:用量変更後2〜6週でTSH/FT4を再評価し、目標範囲に入るよう微調整。
- 内服方法:朝食前の空腹時が基本。飲み忘れは自己調整せず相談を。
- 相互作用:鉄・カルシウム製剤、制酸薬、食物繊維の多いサプリ等は吸収低下(服用間隔を空ける)。
4. 学校・部活・受験期の配慮
- 体育・部活:倦怠・寒がり・筋力低下が強い時期は強度を調整。体調安定とともに段階的に再開。
- 睡眠:睡眠不足で症状が悪化しやすい。就寝・起床時間の固定化を。
- 受験期:採血と用量調整のタイミングを逆算し、試験に重ならない計画を。
5. フォローアップ
- 初期〜用量調整期:2〜6週ごとに診察・採血。症状とTSH/FT4の両面で評価。
- 安定期:3〜6か月ごと。成長・思春期の変化に合わせて用量を見直す。
- 注意点:飲み忘れが多い、サプリ追加後にコントロール悪化、急な体重変化は相談を。
6. 受診・連絡の目安
- 強い倦怠感、著明な眠気、急な体重増・浮腫
- 徐脈・冷感・低体温、気分の落ち込みが強い
- 学業・日常生活に支障が出ている
👨⚕️ 執筆・監修
下山 立志(しもやま たつし)
院長/
しもやま内科
資格:日本甲状腺学会 甲状腺専門医・日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・日本内科学会 総合内科専門医 ほか
院長/
しもやま内科
資格:日本甲状腺学会 甲状腺専門医・日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・日本内科学会 総合内科専門医 ほか
最終更新日:2025-10-19(JST)
本ページは一般的な解説です。用量・通院間隔は年齢や病勢で個別に決まります。最終判断は担当医の説明書に従ってください。