🔊 このページの要点
SGLT2阻害薬は、血糖を下げるだけでなく、体重や血圧を下げ、心不全や腎機能悪化のリスクを減らすことが期待される糖尿病治療薬です。一方で、尿路感染症や脱水、まれですがケトアシドーシスなど注意すべき副作用もあります。しもやま内科では、心不全や腎症などの合併症、体重、年齢などを総合的に評価し、適切な患者さんにSGLT2阻害薬を安全に使用できるようにしています。
SGLT2阻害薬は、「血糖コントロールに加えて、心臓や腎臓も守りたい」というニーズに応える新しいタイプの糖尿病治療薬です。血糖を尿と一緒に排泄させることで、HbA1cを下げるだけでなく、体重や血圧の低下、心不全や腎症の進行抑制といった効果が、大規模臨床試験で示されています。
一方で、脱水や尿路感染症、まれですがケトアシドーシスなどの副作用もあり、「誰にでも使えば良い薬」ではありません。このページでは、SGLT2阻害薬の仕組み・効果・注意点を、糖尿病専門医の立場から整理し、しもやま内科での位置づけも含めて解説します。

SGLT2阻害薬とは?
SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管に存在するSGLT2(ナトリウム・グルコース共輸送体2)というタンパク質を阻害し、ブドウ糖の再吸収を抑えることで血糖を下げる薬です。
- 1日に数十グラムの糖を尿中に排泄し、その分のカロリーも外に出す
- インスリンとは異なる経路で作用するため、インスリン分泌が低下した方でも一定の効果が期待できる
- 単独では重い低血糖は起こりにくい(ただし他剤との併用時は注意が必要)
日本では、エンパグリフロジン(ジャディアンス®)、ダパグリフロジン(フォシーガ®)、イプラグリフロジン(スーグラ®)、カナグリフロジン(カナグル®)など複数の薬剤が使用可能です。
期待できる効果|血糖・体重・血圧・心腎保護
SGLT2阻害薬には、血糖値の改善に加えて次のようなメリットが期待されます。
- 血糖コントロール:HbA1cをおおむね0.5〜1.0%程度低下
- 体重減少:余分な糖を尿中に捨てることで、数 kg 程度の体重減少が期待できる
- 血圧低下:利尿作用により、軽度の血圧低下がみられることが多い
- 心不全・腎症の抑制:大規模臨床試験で、心不全入院や腎機能悪化のリスク低下が示されている
特に心不全や糖尿病性腎症を合併した2型糖尿病の方では、SGLT2阻害薬が予後改善に寄与する可能性が高く、ガイドラインでも重要な選択肢として位置づけられています。
どんな患者さんに向いている薬?
しもやま内科では、次のような方にSGLT2阻害薬を検討することが多いです。
- 2型糖尿病で、肥満や内臓脂肪が多い方
- 高血圧や脂質異常症を合併している方
- 糖尿病性腎症や慢性腎臓病(CKD)、心不全を合併している方
- 既存治療(メトホルミン、DPP-4阻害薬など)だけでは HbA1c が目標に届かない方
一方で、やせ型の方や、脱水リスクが高い方、頻回の尿路感染症がある方などでは、慎重な検討が必要です。
主な副作用と注意点
1)尿路感染症・外陰部感染症
尿に糖が増えることで、膀胱炎や外陰部カンジダ症などの感染症が起こりやすくなります。
- 排尿時の痛みや違和感、頻尿、血尿
- 陰部のかゆみ・おりもの・悪臭
などの症状が出た場合は、早めの受診と治療が必要です。水分をこまめにとり、排尿を我慢しすぎないことも予防に役立ちます。
2)脱水・血圧低下
利尿作用により、体内の水分がやや減り、血圧が下がることがあります。もともと血圧が低い方や利尿薬を使用している方、高齢者では、ふらつき・立ちくらみ・倦怠感などに注意が必要です。
3)糖尿病性ケトアシドーシス(euglycemic DKA を含む)
非常にまれですが、血糖値がそれほど高くない状態で起こる糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が報告されています。
- 強い倦怠感
- 吐き気・嘔吐、腹痛
- 呼吸が速くなる、息苦しい
といった症状がある場合は、すぐに受診が必要です。感染症や手術、極端な炭水化物制限食などが引き金になることもあり、シックデイ時には一時休薬を検討します。
4)1型糖尿病では原則使用しない
過去には、1型糖尿病への適応が追加されたSGLT2阻害薬もありましたが、DKAリスクが問題となり、現在は1型糖尿病への使用は原則として推奨されていません。しもやま内科でも、1型糖尿病の方への新規導入は行っていません。
シックデイ(体調不良時)の注意点
発熱・嘔吐・下痢などで食事や水分が十分にとれないときは、脱水やケトアシドーシスのリスクが高まります。
- 食事がほとんどとれない、または水分も摂れない場合は、SGLT2阻害薬を一時中止する
- 可能であれば血糖と尿ケトン体を確認し、異常があれば早めに受診する
- 他の糖尿病薬(インスリンやSU薬など)の調整も必要になることがある
シックデイルールは個々の治療内容によって異なるため、普段から主治医と確認しておくことが大切です。
しもやま内科でのSGLT2阻害薬の位置づけ
しもやま内科では、SGLT2阻害薬を次のように位置づけています。
- 心不全や糖尿病性腎症を合併した2型糖尿病の方では、予後改善の可能性を重視して積極的に検討
- 肥満や高血圧を伴う方では、体重・血圧への効果も含めてメリットを評価
- やせ型の方・高齢で脱水リスクが高い方では、他の薬剤(DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬など)との比較検討を行う
- シックデイ時や手術前後には、休薬タイミングをあらかじめ説明し、リスクを減らす
薬を増やすことよりも、「その方にとって本当に必要な薬を、できるだけ少ない数で、安全に」使うことを重視しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. SGLT2阻害薬はどのくらいで効果が出ますか?
服用開始から1〜2週間ほどで尿糖が増え、体重や血圧の変化も少しずつ表れます。HbA1cとしての評価は1〜3か月程度で行います。体重減少は数か月単位でゆっくり進むことが多いです。
Q2. トイレが近くなりすぎませんか?
尿量がやや増えるため、日中の排尿回数が増えることがあります。ただし、多くの方では生活に支障がない範囲です。夜間の頻尿が極端に増える場合や、脱水が心配な場合は、用量調整や他剤への切り替えを検討します。
Q3. 心不全や腎臓病がなくても飲んだほうが良い薬ですか?
心不全や腎症がなくても、肥満や高血圧を伴う2型糖尿病の方ではメリットが期待できます。一方で、やせ型の方や脱水リスクが高い方では、別の薬のほうが適していることもあり、個別に判断が必要です。
Q4. SGLT2阻害薬でケトアシドーシスが起こるのが心配です。
ケトアシドーシスは非常にまれな副作用ですが、重い状態になることがあります。食事や水分がとれないとき、発熱や重い感染症、手術前後などは一時休薬を含めて慎重な対応が必要です。前もって「シックデイルール」を確認しておくと安心です。
Q5. 1型糖尿病でも使えますか?
過去には1型糖尿病に対して適応が追加された薬剤もありましたが、ケトアシドーシスのリスクが問題となり、現在は原則として1型糖尿病への使用は推奨されていません。しもやま内科でも、1型糖尿病の方にはSGLT2阻害薬を新たに開始していません。
Q6. 妊娠を希望している場合はどうなりますか?
妊娠中・授乳中の糖尿病治療ではインスリン療法が基本となり、SGLT2阻害薬を含む経口薬は原則として使用しません。妊娠を考えている方は、早めにご相談いただき、治療方針を一緒に調整していきます。
Q7. 他の糖尿病薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?
メトホルミンやDPP-4阻害薬、インスリンなど多くの薬と併用可能ですが、利尿薬との併用や、SU薬・インスリンとの併用時は低血糖や脱水に注意が必要です。定期的な血液検査と診察で、安全性を確認しながら調整します。
船橋市でSGLT2阻害薬を含む糖尿病治療をご検討の方へ
しもやま内科は、東葉高速線「飯山満駅」徒歩圏内にある内科・糖尿病内科・甲状腺内科のクリニックです。船橋市を中心に、習志野市・八千代市・鎌ケ谷市など近隣エリアから、多くの糖尿病患者さんが通院されています。
- 糖尿病専門医による2型糖尿病・1型糖尿病の診療
- フリースタイルリブレ・Dexcom G7 などのCGMを活用した血糖評価
- SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・インスリンなどを組み合わせた個別化治療
- 心不全・腎症を含む心血管リスクの総合的な管理
「SGLT2阻害薬を勧められたが不安がある」「今の治療が自分に合っているか相談したい」といったお悩みも、お気軽にご相談ください。
診療のご相談・ご予約はお電話で承ります
☎ 047-467-5500
※Web予約は行っておりません。お手数ですが診療時間内にお電話ください。
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会 専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺疾患、循環器疾患、老年期疾患などの診療に長年携わり、地域のかかりつけ医として多数の診療実績があります。