🔊 このページの要点
高校~大学・就職に向けて、小児の甲状腺診療から成人診療へ移行する「トランジション」は計画的に進めます。
引き継ぎ書式の準備、服薬・採血スケジュールの自己管理、大学保健管理センターとの連携が重要です。
病状が不安定な時期は移行を急がず、安定期に合わせて段階的に行います。
小児科から成人内科へ「無理なく、切れ目なく」橋渡しするためのチェックリストと書式例をまとめました。

成人診療への移行(トランジション)|高校〜大学への引き継ぎ
小児〜思春期の甲状腺疾患(例:バセドウ病、橋本病による機能低下症、先天性甲状腺機能低下症など)では、
成人診療への移行(トランジション)が必要になります。移行時のトラブル(受診の空白、薬切れ、検査の遅れ)を避けるため、
安定期に準備し、担当の役割を明確化しましょう。
1. いつ・誰が・何をする?(ロードマップ)
- 病状不安定期の移行は避ける:TSH・FT4の変動が大きい、亢進症状が強い時期は延期も検討。
- 受診空白を作らない:小児→成人の初診が「連続する日程」になるよう予約。
2. 診療情報提供書(引き継ぎ)のポイント
- 必須記載:診断名・発症年、既往歴/合併症、治療歴(薬剤・量・中止/再開の経緯)、直近6–12か月の採血、エコー所見、副作用歴、生活上の配慮点。
- バセドウ病:甲状腺刺激抗体の推移、再燃歴、アドヒアランスの課題。
- 機能低下症:体重変動・内服時間(朝食前/就寝前)、吸収阻害因子(鉄・Ca・大豆)。
- 先天性低下症:新生児期所見、画像所見(無形成・異所性など)、離乳・成長時の用量変遷。
持参物リスト:お薬手帳/直近の検査結果コピー/紹介状(原本)/保険証・医療証/学生証(大学の保健管理センター連携時)
3. 本人が身につけたいセルフマネジメント
- 服薬管理:アラーム設定、ピルケース活用。試験前は予備薬を準備。
- 採血スケジュール:治療変更後は4–8週を目安に予定化。
- 症状・出来事メモ:動悸・倦怠・体重変化、病気・旅行・造影検査など。
- 生活上の注意:過度のヨウ素摂取(濃い昆布出汁・サプリ)回避、脱水予防、睡眠。
4. 大学・学校・職場との連携
- 大学の保健管理センター:定期受診や採血の時間調整、定期試験時の配慮(別室・休憩等)。
- 実習・部活動:炎天下の長時間活動は体調に応じて負荷調整(学校・部活への配慮参照)。
- 就職時:産業医面談で受診頻度・服薬・検査の必要性を説明。夜勤・交代制は体調を見て個別判断。
5. 性教育・妊娠計画(思春期~若年成人)
- 女性:妊娠希望時は事前に受診し、TSH・FT4を目標域に。抗甲状腺薬/L-T4の用量調整方針を確認。
- 男性:重度の亢進は体重減少・筋力低下を招くため、十分な休養と栄養。
- 薬剤の副作用教育:発熱・咽頭痛(無顆粒球症)や肝機能障害サインは即受診。
6. よくある質問(FAQ)
Q. いつ移行するのが良い?
病状が安定している時期に、次回予約が途切れないようスケジュールして移行します。受験や転居などのイベントに合わせて計画します。
Q. 紹介状に何を書いてもらえば良い?
診断・治療歴・直近の検査・副作用歴・生活配慮を必須で。再燃歴や服薬アドヒアランスの情報も有用です。
Q. 大学入学後、どこに相談すれば?
まずは大学保健管理センターへ。地域の成人内科の紹介・予約調整や、試験時の配慮相談が可能です。
Q. 仕事を始めて通院が難しい場合は?
職場の産業医や人事と調整し、受診・採血の時間確保を。オンライン診療の活用可否も相談します。
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トランジション相談を承ります
大学進学・就職に合わせた移行計画(紹介状作成・初診予約調整・配慮書)をサポートします。
お電話:047-467-5500
この記事の監修医師
しもやま内科 院長 下山 立志(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医)
しもやま内科 院長 下山 立志(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医)