小児の無痛性・亜急性甲状腺炎は一過性の亢進期→低下期をたどることが多い病態です。発熱や頸部痛の有無に関わらず、TSH/FT4(±FT3)とエコーで評価し、病期に応じて運動強度を調整します。
小児・思春期では、甲状腺の炎症性変化により一時的にホルモンが変動し、最初は亢進様の症状(動悸・多汗・落ち着かない・体重減少)から、のちに低下様(だるさ・寒がり・体重増)へ移ることがあります。無痛性(痛みなし)と亜急性(痛みあり/発熱あり)があり、どちらも数週間〜数か月で自然軽快することが多い一方、学校生活・運動の調整が重要です。
1. 症状の特徴
- 亢進期:動悸、暑がり、多汗、落ち着かない、手のふるえ、体重減少、寝つきの悪さ
- 低下期:だるさ、眠気、寒がり、体重増、便秘、むくみ感
- 頸部症状:無痛性は痛みなしが多く、亜急性は片側からの痛み・圧痛や発熱を伴うことがあります
2. 検査のポイント(小児基準で評価)
- 採血:TSH/FT4(±FT3)。亢進期はTSH低値・FT4高値、低下期はTSH高値・FT4低値へ移行。炎症マーカー(亜急性はCRP/血沈高値ことあり)。抗体(TPOAbなど)は無痛性で陽性のことも。
- エコー:びまん性の輝度低下や粗造化、血流変化、圧痛部の描出。
- 鑑別:バセドウ病(TRAb/TSI)、感染性疾患、薬剤性などを必要に応じ検討。
3. 治療の考え方(病期別)
- 亢進期:動悸・ふるえ・不眠にβ遮断薬を検討(基礎疾患は要確認)。抗甲状腺薬は通常不要(産生過剰ではなく放出によるため)。
- 亜急性の痛み:アセトアミノフェンを基本に、必要時は短期のNSAIDs。重症例は医師判断で短期のステロイド。
- 低下期:症状が強い・学校生活に支障・TSH高値持続などでは一時的にレボチロキシンを検討。経過で中止可能なことが多い。
4. 運動可否(学校・部活)
- 亢進期(頻脈・体温上昇・暑熱に弱い時期):持久走・炎天下の練習・高強度は原則控える。屋内の軽いストレッチや散歩など低〜中等度から。
- 痛みがある亜急性:頸部痛や発熱がある間は無理をしない。痛みが引いてから段階的に再開。
- 低下期:倦怠感が強い時は強度を下げ、睡眠・体調回復を優先。復帰は症状と脈拍が安定してから。
- 再評価の目安:運動再開前や強度アップ前に、TSH/FT4(±FT3)と診察で確認。
5. フォローアップと自然経過
- 通院間隔:初期は2〜4週ごとに採血・症状確認、落ち着けば6〜8週へ。
- 自然経過:多くは数週間〜数か月で軽快。少数で低下症が長引くことがあり、その場合はLT4継続を検討。
- 再発:まれに再燃あり。発熱・頸部痛・動悸などが再度出現したら早めに受診。
6. 受診・連絡の目安
- 強い動悸・息切れ、めまい、脱水
- 高熱・頸部の強い痛みが続く
- 登校や日常生活に支障が出る倦怠感
👨⚕️ 執筆・監修
    下山 立志(しもやま たつし) 
院長/
しもやま内科
資格:日本甲状腺学会 甲状腺専門医・日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・日本内科学会 総合内科専門医 ほか
    
    
  
院長/
しもやま内科
資格:日本甲状腺学会 甲状腺専門医・日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・日本内科学会 総合内科専門医 ほか
最終更新日:2025-10-19(JST)
本ページは一般的な解説です。運動可否・投薬の有無は個別の症状・検査結果で判断します。最終判断は担当医の指示に従ってください。
